カメラの世界へ

ひとたびシャッターを切れば、芸術作品がひとつ誕生する。
作品が一瞬で完成する写真の世界は、幼い頃から音楽をやってきた私には魅力的に映った。
(それは後にとんでもない誤解だと知る。)

そんな世界に飛び込んでみたいという思いで、フォトグラフィー実習を受講。
カメラを持つという行為に魅了されるのに時間はかからなかった。

ところが提出した写真に対し先生や先輩方は渋い反応。
次の課題でも複数枚の写真を提出。
しかし、「これは上手く撮れた!こちらから言わずとも目に留まるはずだ」と思っていたとっておきの1枚がノーコメントで流れてしまった。何故だ。ツライ。

▲焦点距離:75mm、絞り:F2.8、シャッタースピード:1/4000、ISO感度:2500

GOOPASSと、私

そんな時、関西大学とGOOPASSコラボの話を先生から聞かされた。
大学生では手の届かないカメラに触れられるという。それも毎日。
嬉しい。
私は先生たちのアドバイスをもとに、SONYコンパクトフルサイズ&軽量
準ズームセットα7C+28-75mm F2.8 Di III RXDをお借りした。
カメラに詳しくなくても、一目で分かった。

…これは、多分すごいやつだ。

以前ふらっと入った家電量販店には、こんなカメラ売っていなかった。
きっとなんでもない日常の中にいては、お目にかかることもないものだろう。

そんなカメラに出会えるとは。
ハタチの一学生にすぎない自分が出会えるとは。

手にした瞬間の高揚感とともに、物語は始まる。
これは1ヶ月間ずっと首から提げていた期間限定の相棒と、ほんの少し変化を遂げた私の思考の記録である。

▲焦点距離:44mm、絞り:F4.5、シャッタースピード:1/250、ISO感度:1000

お嬢様の目は節穴でございますか。

既視感との戦いが続いていた。
シャッターを切る時、私の中の撮りたいイメージは、いつも漠然とした記憶に囚われていた。
「どこかで見たことある写真」を卒業したい。
考えても答えは見つからなかった。
被写体を見つけてシャッターを押すだけで作品が完成するなんて嘘だ。

このカメラ、ボディは軽量だがレンズは少し重みがある。
カメラの機能や性能よりも、何を写すかが重要だというメッセージだろうか。
悔しい。

▲焦点距離:75mm、絞り:F3.2、シャッタースピード:1/800 、ISO感度:400

カメラと、世界

出かける時は常にと言っていいほどカメラを持ち歩いた。
世界が広がる。
視覚に限った話ではない。
どこかで喧嘩しているネコの鳴き声。商店街の古いにおい。さっき飲んだカフェオレの風味。
ただ目の前の鍵盤と感情に入り込むのではない。
あらゆるところに私がいる。
いつもの私では気づかないようなものに気がつく。
五感全てが拡張されたようだった。

▲焦点距離:75mm、絞り:F2.8、シャッタースピード:1/125 、ISO感度:100

スポットライトを浴びるのは、誰だ。

カメラを持つ私はいつもの私ではなかった。
「ショートケーキの主役は本当にいちごなのだろうか。」
ふと考える。
それは次の段階に進むためのヒントだった。

いつもレンズを向ける時は主役を決めている。
…つもりだった。
だが私は「主役であるべきもの」にレンズを向けていたのだ。
かわいいもの。おしゃれなもの。華やかなもの。
「写真映えするだろう」という思い込みに囚われていたらしい。
既視感の原因はここにあった。

▲焦点距離:75mm、絞り:F4.5、シャッタースピード:1/800 、ISO感度:1250

ちょっと、変えてみる

「戦隊ものヒーローの主人公は大抵赤である。
青が主人公だったら、どんな物語になるだろう。」

太陽のように明るく、エネルギーを感じさせる赤。
冷たくて涼しい、気持ちを落ち着かせる青。

物語が変わるだけでなく、物語を見る人の視点も変わるのではないか。

「常識」をちょっと変えてみる。
ひとつ変えると、またひとつ何かが変わることに気づく。
それは感情だったり、身体だったり、自分だったり、他人だったりする。
繰り返すことで、「当たり前」や「見たことある」から脱出できるのかもしれない。
…かもしれない。

▲焦点距離:42mm、絞り:F3.2、シャッタースピード:1/80 、ISO感度:200

話す。離す。

毎日シャッターを切ったからこそ、考えるようになった。
作品が一瞬で完成するなんて、やっぱり嘘だ
カメラを持たなかったら、こんなこと思いもしなかった。

1ヶ月のGOOPASSのある生活を終えた今。
カメラを持たない自分も、以前とは少し変わった気がしている。
いま・ここにある私は、いつか・どこかにいる私と対話する。
そんな感覚を掴んだ。
ファインダー越しに、私は私を見ていた。

GOOPASS越しの私の世界。
キーワードは、「目の前の思い込みを疑え。」

まだ出会えていない、新たな世界へ。

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著者プロフィール:坂上愛菜(さかがみ・あいな)

永遠の厨二病。音楽や文章で自分を表現するのが好き。表現する自分探しも好き。某事務所の男性アイドルグループを追いかけ早11年目。私も彼らも大人になった。生きるべきか、死ぬべきか。否、彼らが存在していることが私のモチベーションであり、最大の生きる理由である。感謝。セクシーサンキュー。