遺影の依頼

「遺影を撮ってほしい」

事の発端は祖父母のこのセリフだった。

大学でカメラを始め、その沼にしっかりと浸かっていた私に電話越しの祖母はそう言った。

祖父母は神奈川県在住。私が住む滋賀県からは少し距離があり、気軽に会うことは出来ない。
新型コロナウイルスの影響もあり、私は5年以上祖父母と会うことが出来ていなかった。

コロナも落ち着いたこのタイミングで、久しぶりに祖父母と会いたい。
ちょうどGOOPASSでカメラを借りる機会を得たことだし。
そう思った私はカメラを携え、神奈川県横浜市へと向かった。

Leica Q2を携えて

▲焦点距離:28mm 絞り:F/1.7 シャッタースピード:1/250 ISO感度:400

カメラをしている人なら一度は憧れるであろうLeica。もちろん私もその一人だ。

カメラを決めた時には、祖父母宅を訪れる予定はなく、”憧れの機材”という理由だけでQ2を借りた。
Leicaは他のカメラメーカーと比較して高額な機材が多い。
お金に余裕がない大学生からすると、月額料金で高額機材が利用できるGOOPASSのサービスは本当にありがたい。

普段あまり使わない広角ぎみの28mmレンズをうまく扱うことが出来るかビクビクしながら、憧れの機材が手元に届くことを今か今かと待ち侘びた。

Q2は注文をした次の日に我が家にやって来た。

段ボールから出してみる。見た目良し。

首から下げてみる。軽さ良し。

そのまま外に持って出かけてみる。携帯性良し。

シャッターを切ってみる。写りバツグン。

最強のカメラであることは触ってみて1時間で明らかになった。

そんな最強カメラ、Leica Q2を携えた私は祖父母が待つ地、横浜に降り立った。

記憶の残す

久しぶりに会った祖父母はあまり変わっていないように見えた。

新しいもの好きの祖父は最近買ったスマホの話をし、祖母はその消費癖に文句を言う。
相変わらずのいつも通りのやりとりだ。

私とする会話の内容は少し変わった。大学のこと、就職のこと、将来のこと。

でも、私が覚えている5年前から変わらない姿がそこにはあった。
(少し物忘れが増えたようだけど)

肝心の写真だが、撮ってほしいと言っていたのに、いざカメラを向けると「恥ずかしい」と言ってまったく撮らせてくれない。

せっかくGOOPASSで素敵なカメラを借りているというのに。

でも、改めてカメラを向けられると恥ずかしくなる気持ちもよく分かる。
そこで二人の生活を隠し撮りすることにした。

▲焦点距離:28mm 絞り:F/1.7 シャッタースピード:1/125 ISO感度:400

家事は日常生活の一部で、大した意味はないのかもしれない。

でも、そんな日常も孫の私からすれば特別な瞬間だ。

Leica Q2は小さい部類のカメラだ。カメラを構えていてもそこまで相手を緊張させる威圧感がない。
祖母の気を会話で紛らわせながら、その日常に向けてシャッターを切った。

手を憶える

▲焦点距離:28mm 絞り:F/1.7 シャッタースピード:1/125 ISO感度:400

「手は撮らないで」

カメラを手に向けると、祖母は手を隠しながらそう言った。
「ゴツゴツしていて嫌いだから」らしい。

それでも私はカメラを手に向ける。

手はその人の人生を表す、私はそう思う。

「お父さんは力仕事をしないし、家事なんて全部私がやるんだから、手もゴツゴツになるのよ」

78歳の祖母の手は、言葉では言い表すことが出来ない、私を惹きつける何かを持っていた。

祖母はこの手で何に触れ、何を感じてきたのだろう。

この手に私の歴史は刻まれているだろうか。
この手に触れたこと。この手に触れられたこと。

祖母の手には人生が詰まっていた。

そんな手を写真に残したかった。憶えていたいと思った。

だから、嫌がられながらもカメラを向けた。

記録と記憶

カメラの働きは光を記録することにすぎない。

だが、その記録は記憶を呼び起こす。

ボンヤリとしか記憶に残っていないことも、忘れてしまっていたことも。

そんな力が写真にはあると私は思う。私は信じている。

でも、今日、この日のことを忘れたくなかった。ずっと憶えていたかった。

だから私はシャッターを切る。

記憶のために記録する。

今日の記憶を見失わないように。

結局、祖父母の顔がちゃんと写った写真は集合写真、1枚しか撮れなかった。

でもそれで良い。遺影になるような写真はまだない方が良い。

もっと長く生きて欲しい。

だから遺影はもう少し先。

▲焦点距離:28mm 絞り:F/2.8 シャッタースピード:1/200 ISO感度:1600

余談だが、このレビューをドヤ顔でもちこんだところ、読んだ先生には「まだまだだねぇ」と言われた。

どうやら、記憶と記録を巡る世界の入口に、私はまだ立っただけなのかもしれない。

カメラで残す記録と記憶。私はもう少し背伸びをしなければいけないみたいだ。

Leica(ライカ) Q2のスペックを見る

著者プロフィール:長谷川 晴人(はせがわ・はると)

「なんでも断らない」を人生のモットーの掲げて生きている地球人。
断らなさすぎて自分で自分の首を絞める今日この頃。
しんどいことがあっても、美味いもん食べて寝たら大丈夫。

好きなものは牛乳。
パンには牛乳。クッキーにも牛乳。杏仁豆腐とも牛乳。白米と牛乳もいける。
おそらく前世は牛。

■Instagram:@hase10phot

利用機材

Leica(ライカ) Q2

Leica Q2
センサーサイズ 35mmフルサイズセンサー
画素数/動画サイズ 4730万画素/C4K(4096×2160)23.98fps/4K(3840×2160)29.97fps
ファインダー視野率 約100%
常用感度 ISO50~50000
シャッター速度 60~1/40000秒
重さ ボディ本体:718g
その他機能 光学式手ブレ補正