こんにちは、GOOPASS MAGAZINE編集部です。

被写体の宝庫である山。雄大なスケールの絶景、厳しい自然で生きる動植物、歴史と文化を築いてきた人々。地上にはない景色を求めて山へ登り、そして時に心を動かされた一瞬をカメラにおさめます。

今回はそんな登山と写真の魅力を知る3名の方に、カメラ×登山をテーマに対談していただきました。

風景写真家の横田裕市さん、フリーランスフォトグラファーの井上秀兵さん、GOOPASSスタッフの原和也さん。

座談会は2部構成になっており、前編の「プロ写真家と登山愛好家が語る機材愛|軽量な山カメラと持ち運びのひと工夫」は、登山情報マガジンの『YAMAP MAGAZINE』にて掲載しております。

後編のお題は、登山へ持って行くベストなカメラについて。軽さ、耐久性、画質、操作性……これらの要素をどうバランスよく取るかが、登山撮影の成功を左右します。

御三方の体験談や写真に対する想いを交えながら、山での1台を導き出していただきました。

後半では、「山に持っていくカメラ」のお題でお話しいただければと思います。

YAMAPさんで事前にアンケートを取っていただいた回答では、55%の方が山で使うカメラには軽さを求めており、次いで画質でした。

やはり、「山では軽さこそ正義である」といいますが、登山での課題には荷物の重量があるようです。

画質も軽さも欲しい人への1台

YAMAP×GOOPASS座談会
(左から原和也さん、横田裕市さん、井上秀兵さん)

――御三方は、画質も劣らずに軽い機材で攻めていくならどのようなカメラを選択するでしょうか。

横田:普段はα7R IVですけど、先週の大菩薩嶺で利用させていただき、α7Cもありかなと思いました。やっぱり軽さこそ正義なので。若干持ちにくさはあるものの、α7R IVの重さと比べると山用にα7Cへ移行するのも検討したいレベルです。

横田さんが使用したα7CとTAMRONの高倍率ズームレンズセットは、YAMAP RENTALで借りられます。

最近、α7Cの後継が新しく出たじゃないですか。フルサイズセンサーを搭載していてこの小型軽量なボディ…..正直、悩ましいですね。

山は一に体力、二に体力。体力がすべてを解決するみたいなところがありますよね。

井上:疲れてくると本当に撮らなくなっちゃう。

横田:写真が好きなのであって、機材はその次なんです。それでいうと、極論スマホがどんどん進化して「スマホで良いんじゃないか」と思えるくらいになってくれれば良いんですけど。

どうしてもスマホで収まらない理由としては、印刷すると画質が粗くなってしまうからです。

山の写真を印刷してプリントして大きく見せたいとなると、スマホではあとで残念なことになってしまう……。そういった本来の写真としての良さというのは、やはりプリントしたときが一番良いと思っています。

そもそも山にカメラを持っていくこと自体「山の装備を軽くする」という点に反していて、だから山で写真をやる人って、常にそのジレンマと戦いながら登っていると僕は思っています。

体力的に無理のない範囲で持っていける1台というなら、僕はスマホの次にGR IIIがちょうど良いんじゃないかなと思います。

フルサイズだったら、α7Cあたりかな、という気がします。

――フルサイズと、APS-C。どちらが良いというより体力に応じて、という選択だとは思いますが……井上さんはフルサイズ派ですか?

井上:そうですね。僕の使い方はちょっと特殊だと思っていまして。

いくらカールツァイスのCONTAX Planarが良いレンズだといっても、現代レンズの解像感には劣るんです。解像度は決して良いわけじゃないんです。

味がある点でこのレンズを使っていますけど、画質の点でいうとα9 IIのポテンシャルを発揮できていないんですよ。

とはいえCONTAX Planarの持つ独特な描写、青の発色を活かしつつ、登山における物理ボタンの多いカメラで安心安全の糧にして、フルフレーム機によるプリントを前提とした使い方ではα9 IIがベストでした。

©井上秀兵 カメラ:SONY α9 II レンズ:CONTAX Carl Zeiss Planar T* 50mm F1.4

センサーサイズの点でいうと、GR IIIでこの前印刷をしてみたら、意外とA3まで綺麗にできました。でも、やっぱりセンサーサイズが小さい分、色の再現性が低いんです。

そういった面で考えると、横田さんもおっしゃったように印刷が前提なら、頑張ってフルサイズを持って登った方が良いかもしれません。

けど、一般の方はInstagramなどの利用が主なので、APS-Cとかフルサイズとか正直関係ないと思います。

ただ、その一方で一般の方が考える写真の面白さって「ボケ」の要素もあるので、レンズ交換式のカメラで良い雰囲気で撮ることができるのも大事だと思います。

ボケの点から考えると、GRIIIは難しいです。

©井上秀兵 RICOH GR III

横田:確かにボケみでいうGR IIIはちょっと……

井上:そうなんです。F値を下げればボケると思っている方も多いですが、ボケは背景と被写体の相対的な距離の差なので、いくらF2.8といっても焦点距離が28mmのGR IIIではボケは難しい。

個人的にはレンズ交換式のα7CFUJIFILM X-T4を使用して、レンズワークと距離感でバランスをとるのが良いかなと思います。

横田:FUJIFILMを登山で持っていく人もいますね。

――FUJIFILMを使うのは軽さ面で、という意味でしょうか。

横田:そうですね。軽さと使いやすさ、ですかね。

原:フルサイズ機で1kg切るか切らないか、くらいが山へ持って行くにはちょうど良い重さで十分に満足出来るかと思うんですけど。そういう意味では、α7CSIGMA fpがフルサイズ機の中では軽量なので選択肢に入ってくるのかなと思います。

©原和也 カメラ:SIGMA fp レンズ:SIGMA 28-70mm F2.8 DG DN

fpではカラーモードが分かりやすくなって、パウダーブルーというモードが搭載されました。少し青白みがかったようなフィルターになっていて、フィルムっぽさがでるんですよね。

井上:fpは写真機としても動画機としても優秀。排熱のシステムが独特で、普通この軽さとこの大きさで長時間の動画は撮れないんですよ。

でも、独自の排熱システムがあるから動画にも強いんです。動画のプロファイル数も多くて、プロからアマチュアまで網羅しています。色味、カラーバリエーションが豊富で、現像をしなくていいんです。

原:カメラ内現像という、RAWで撮ったあとにカメラ内で明るさやグレードを変えられる機種があるんですけど、fpはカメラ内現像ができるので嬉しいです。

晴天時の登山中にモニターで見る画と家へ帰ったあとに見る画はだいぶ違うので、カメラの中でRAWデータをいじれるのはありがたいなって。

私、Lightroomはまだ触ったことがなくて、現像沼に入りたくないんです。時間が溶けるだろうなと思っているので。そういう意味では、初心者にとっては良いモデルだと思います。

©原和也 カメラ:SIGMA fp レンズ:SIGMA 28-70mm F2.8 DG DN

横田:シンプルにカメラボディが美しいですよね。fpはプロダクトデザイン愛がハンパないです。

井上:ネジ穴が縦位置にもついているので、色々なアタッチメントができて幅が広いですよね。デメリットで言うと、ファインダーがないので、明るいときにモニターが見え辛くて露出が分かりづらいことですね。

原:モニタもチルトやバリアングルではないので、感覚で撮るしかないんですよ。

――機能面というよりは、物理的に撮るときの制約があるのですね。

横田:あと、ボディ内手ブレ補正機能がないんですよね。

原:基本、F値を開放にしてシャッタースピードを速めて撮っています。

ISOは拡張モード(ソフトウェアによる処理)でISO6から選択できるので、滝とかを撮ろうと思ったらISOを下げて長秒にする撮り方ができます。

――これから山を登りたい人には、α7CX-T4fpの3つあたりがちょうど良いバランスかもしれないですね。

原:カラーバリエーションという点だとFUJIFILMは結構良いですよね。

横田:FUJIFILMの良いところは、完全にAPS-Cと中判に振り切っているところですよね。あと、フィルムシミュレーションの色。

井上:FUJIFILMをはじめ、各メーカー、色の作り込みが全然違いますよね。

――色の作り込みとは、たとえばどういう点でしょうか。

井上:たとえばCanonの場合は、色を出力するときに肌色が一番きれいになるようなトーン設定をしてるんですよ。

SONYはNikonと似ていて、風景のようなグリーンとかブルーが綺麗にでるような色のレンジの設定をしているんです。FUJIFILMはストリートスナップの領域で活躍していたカメラという影響もあって、彩度が落ち着いて大人の印象のトーンが出る点でFUJIFILMを選ばれる方が多いですね。

あとプロダクトとしても良いカメラが多くて、「これからカメラを始めます」という方は、カメラの形で選ばれる方が多いと思うんです。

横田:プロダクトデザインと色、APS-Cの軽量さあたりが良いんじゃないかなと思います、山では。

――センサーサイズにこだわらずに、好きなものを使うのがベスト、ということでしょうか。

井上:そうですね、好きなもので良いと思います。

まずは自分の撮りたい写真に合いそうなカメラとレンズで写真を撮ってみて「すごく良い写真が撮れた!」という体験からベストを探すと良いです。

――そう考えると、α7Cは歩くことも必要な中で邪魔にならないバランス感がありますね。

山へ持って行くマイベストレンズ。

――次に、1本しか持って行けないとなったら、レンズは何を持っていきますか。

横田:1本だけと言われたら、僕は広角から望遠までいける28-200mm F/2.8-5.6 Di III RXDですかね。

28mmだと僕が好きな広角って意味だとちょっと足りないんですけど、そういうときは撮ったあとに合成して広角の1枚にします。

あとで合成することを前提に4枚撮ったりとか、逆にレンズを持っていけないときはそういう工夫をしますね。今は合成の精度もよくなっているので。

やっぱり、欲張りなんですよ。風景も撮りたいし、ちょっと離れたところにある高山植物も撮りたいし、雷鳥と会ったら雷鳥も撮りたい。

なので、1本と言われたら、200mmまである28-200mm F/2.8-5.6 Di III RXDが理想かなと思います。

――では、α7Cとの組み合わせがベストだったのでしょうか。

横田:大菩薩で撮らせていただいて、普通にこのセットで新しく欲しいと思いました。

【SONY α7CとTAMRON 28-200mm F/2.8-5.6 Di III RXDのセット】

YAMAP RENTALへ

©横田裕市 カメラ:α7C レンズ:TAMRON 28-200mm F/2.8-5.6 Di III RXD

井上:僕は横田さんと逆で、諦めますね。ライチョウは遠くにいる……脳裏に焼きつけます。遠くに山があってもズームで寄ってデカく撮るんじゃなくて、「次は近くから撮ろう」って。なので、僕はもう単焦点を選びますね。

横田:僕は憧れるんですよ。でも、なかなかできない。

井上:僕の場合は記憶するものと記録するものを棲み分けて考えていて、そもそも撮りたいものの数が少ないんですよ。記録したいものが明確なんです。

だから1本だけと言われたら、28mmですね。

そもそも僕が撮りたい写真は山の雄大さもそうなんですけど、それ以上にライフスタイルにまつわる部分や、自分の目で見たときと近い距離感のものを撮りたいというのがあるので28mmを選択しました。

28mm自体がニッチな画角なので、SONYのαユーザーであればFE 35mm F1.8 SEL35F18F、CanonであればRF35mmF1.8 MACRO IS STMあたりで十分良い結果が得られると思います。

――井上さんが見ている視野角の中の世界観を写真に落としたい、というニュアンスが強いんですね。

井上:そうですね。山は天気が刹那的なので、目の前の風景を見て「綺麗だ」って自分の中で説明できる前の状態に写真を撮りたいんです。

そうなるとやっぱ起動が早くてサッと撮れる機材が良いなと思うんです。

そのほかにも、一緒に登っているパーティーがいて「進んでいるパーティーがココに来たら光や構図が良い塩梅で写真に収まるな」ということを頭で予測して撮れる距離感がおおよそ28mmなんです

©井上秀兵 RICOH GR III

ズームだとあれもこれも撮りたいってなっちゃうんで、そうじゃなくて、単焦点で撮るものと撮らないものを棲み分けて考えるのが僕の1本に繋がっています。

――みなさんそれぞれ目的意識が違うんですね。

原:私は便利な標準ズームを使うことが多いです。

これまでの写真で1番良い写真が撮れたと思った機材はフォクトレンダーのHELIAR 40mm F2.8 Aspherical VMだったんですけど、どうしてもマニュアルだとピントを合わせるのが難しかったり時間かかったり、ズームしたいときにズームができなかったりするので、一番便利な標準ズームを使います。

本当はもう少し望遠端が広いと良いなと思いつつ、そういうレンズがまだLマウントにはないので。28-70を持って行っています。

――24-70mm F2.8 DG DNは使わないのでしょうか。

原:重いんですよ。GOOPASSで色んなレンズを借りて持って行ってたんですけど。

Artレンズの50mmとか60mmとか30mmとかそれぞれ持って行って、自分にとってどれが良いレンズか探して、結果的にはここに落ち着いています。

ただ、ちょっと無難な画作りになるんですよね。だからもう少し遊びがあると良いなと思います。

©原和也 カメラ:SIGMA fp レンズ:SIGMA 28-70mm F2.8 DG DN

――自分の1台を見つけるのにGOOPASSは良いですね。

登山おすすめセットの紹介

今回、御三方の話をまとめ「SIGMA fp+28-70mm F2.8 DG DN」を登山おすすめセットとして作りました。

フルサイズでありながらレンズと合わせても1kgを切る軽さ、カメラ内のRAW現像、アタッチメントの幅広さ、そしてデザイン性……。

さまざまな観点から、初心者でも使いやすいバランスの良いセットです。28~70mmの汎用性ある画角で、登山中に「撮りたい!」と思ったさまざまな一瞬を切り取れます。

カメラ内でRAW現像機能やフィルターが充実しているので、PCを持っていない方・現像やレタッチが苦手な方でも、色味や写真の雰囲気をカスタマイズ可能です。

レンタル価格を見る

また、横田さんにおすすめいただいた「SONY α7C ILCE-7C+TAMRON 28-200mm F/2.8-5.6 Di III RXD」はYAMAP RENTALにて借りられます。

井上さん愛用のコンパクトデジタルカメラ「GR III」も、GOOPASS・YAMAP RENTAL双方でレンタル可能なのでチェックしてみてください。

YAMAP RENTALへ

今回の座談会では「軽さを重視する山と、荷物になるカメラ機材」という、相反する悩ましい問題を3名の方に話し合っていただきました。

山は一に体力、二に体力。と言ってしまえば身も蓋もない話ですが、それでも機材の重量問題は避けて通れない道です。

さまざまな観点を加味しながら、現時点で登山撮影のベスト機材といえそうなカメラ・レンズが見つかりました。

もちろん、撮りたいものやこだわりによって人それぞれの最適解があります。

しかし「これから登山でカメラをはじめたいけれど、機材に迷っている」という方は、今回紹介した機材を検討してみてはいかがでしょうか。

ぜひ、前編とともに今回の座談会を参考にして、カメラと山の楽しさを体験してみてください。