人生を彩るコトやトキを提供する、参加型プログラムの「GOOPASS GO」。

GOOPASS GOを運営するGOPASS株式会社は2024年8月18日、写真家・小林淳さんと共に撮影ワークショップを開催しました。

撮影地は岐阜県関市。町に息づく2つの伝統、美濃伝の刃物作りと鵜飼を1日で巡ります。

関市は鎌倉より続く刀匠の技と、1000年余りの歴史を持つ小瀬鵜飼が受け継がれてきた町です。

歴史と文化に触れながら特別な被写体を撮影する、関市ならではのイベントになりました。

今回、スタッフの1人としてワークショップに参加してきた体験をまとめます。

まずは第一部の「刀匠撮影」。関の刃物作りや刀匠撮影に興味のある方、GOOPASSイベントへの参加を検討している方はぜひご覧ください。

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イベント概要

実施日:2024年8月18日(日)
一部(関鍛冶伝承館にて刀匠撮影):14時00分~16時00分(13時30分受付開始)
二部(長良川にて小瀬鵜飼の撮影):18時00分~21時30分(17時50分再集合)

座学会場であるアピセ・関に現地集合
希望者にはイベント中のみ、小林淳さんおすすめ機材の「Nikon Z 6II & 純正大口径標準ズームセット Z 6II ボディ + NIKKOR Z 24-70mm F2.8 S」がレンタル可能です

講師:小林淳さん

@atsushi.k.photography

1982年岐阜生まれ。一級建築士として企業に勤める傍ら、2012年から風景や家族写真をメインとしたフリー写真家として活動を開始。2023年に写真家としての活動に注力するため『株式会社オフィスK』を設立。代表作「月と岐阜城」が世界的なムーブメントを起こしメディアでも幅広く取り上げられる。フォトイベント運営のほか、写真展、フォトコンテスト、SNSコンサルティングなど実績多数。

講師である小林さんは、岐阜県のご出身。現在も岐阜県内で活躍しています。

撮影テクニックや写真に対する考え方に留まらず、岐阜の被写体やその魅力についても教えていただけます。

関の刀鍛冶「藤原兼房」の技を撮る

刀匠撮影
撮影:小林淳氏

世界三大刃物産地として名高い関市。五箇伝の中の1つ「美濃伝」は織田信長をはじめ多くの武将に認められ、代々受け継がれてきました。

現在では日本刀に限らず、包丁やハサミなどさまざまな刃物を製造しています。

今回ご協力いただいたのは、刀匠・藤原兼房さん。

藤原兼房の名は室町時代より世襲され、現在は二十五代とその息子・二十六代を中心に工房での刀剣制作が行なわれています。

関の刀鍛冶・および藤原兼房について詳しく知りたい方は、下記をご参照ください。

https://www.city.seki.lg.jp/kanko/0000001558.html
http://kanefusa.web.fc2.com/index.html

「アピセ・関」にて座学スタート

小林淳さんワークショップ

まずは、刀匠撮影をするうえで重要な座学からスタートです。

今回のワークショップに参加した方の多くが、私と同じく初めて刀匠撮影に挑戦するとのことでした。

座学では、刀鍛冶の魅力や撮影のコツを小林さんが丁寧に解説します。

特に炎と火花が織りなすドラマチックな瞬間を捉えるためには、カメラ設定とピント合わせが鍵になる点を強調。

照度が低く火の粉が舞う鍛冶場では、AFが誤作動してシャッターチャンスを逃してしまう可能性が高いそうです。事前にピントを合わせてチャンスを狙う「置きピン」が有効とのことでした。

そのほかにもシャッター速度の変化による魅せ方の違いなど、鍛冶鍛錬の写し方について具体的に教えていただけました。

SONY α7RⅢとFE 24-70mm F2.8 GM
今回の使用機材「SONY α7R IIIとFE 24-70mm F2.8 GM」 できるだけ開放値の低いレンズが望ましい

関鍛冶伝承館で鍛錬を見学

関鍛冶伝承館

1時間ほどの座学を終え、「関鍛冶伝承館」へ移動しました。

ここでは鍛冶に関する展示室に鍛錬場を併設しており、打ち初め式や月に1度の定例公演など、一般公開も行なわれます。

今回のワークショップでは実演場を貸し切り、鍛錬を見学する贅沢な体験ができました。

一般公開の際は100名を超える観覧者が集います。そのため写真撮影をしても他の観客が画角に写り込んでしまい、刀匠・刀工さんだけを写した撮影は困難です。

関鍛冶伝承館 鍛冶場の様子
鍛冶場の様子 一般公開では座席が埋まるほどの観覧者が訪れる

しかし少人数のワークショップでは、刀匠さんたちに近づいてベストポジションを確保できます(※催行人数が多い場合は2班に分かれます)。

鍛冶場の様子

また、普段は明るい実演場も、今回は特別に暗幕で光量を落とした撮影仕様です。炎・火花の迫力、コントラストがより感じられる写真になること間違いなし。

ここまで整えられた環境で、刀鍛錬を間近に見られる機会は滅多にありません。

はじめに日本刀製造の工程を教わりました。島根県を産地とする玉鋼(たまはがね・純度の高い鋼)を原料に作られる、日本刀。

刀匠

今回実演していただいたのは、玉鋼を叩いて平たくし折り返す「折り返し鍛錬」と呼ばれる工程です。

主に不純物の均一化を目的としており、刀作りの大部分を占める重要なプロセスです。

硬い鋼を折る、という点からも高温具合が想像できます(1300度まで熱するようです)。

見どころは、熱された玉鋼を刀匠の金槌とお弟子さんの大槌が交互に打つ際に生まれるリズム。そして舞い上がる火花。

迫力の一瞬を早く撮りたくて、皆さんウズウズしていました。

刀匠撮影にチャレンジ

いよいよ刀匠撮影に挑戦です。

この日は、二十五代・藤原兼房刀匠が黒い烏帽子と白装束の正装にて実演してくださいました。

二十五代藤原兼房さん

厳かな風貌は、まるで戦国時代から時を超えて現れたかのよう。

各々が好きなポジションを見つけ、撮影準備に入ります。

刀匠撮影

シャッターチャンスは一瞬。刀匠さんが真っ赤に熱せられた玉鋼を金床(写真中央部にある作業台)に乗せ、大槌が振り下ろされる瞬間にかかっています。

刀匠撮影

鍛錬中は何度も火花が舞うイメージでしたが、実際は違います。勢いよく火花が散るのは最初の振り下ろしのみ。そのあと2~3回は出るものの、後半へいくに従って火花はほとんど見られなくなるとのことでした。

一本勝負、といっても過言ではないシビアな撮影です。

炎の熱気に包まれた会場には、息を飲んで待ち続ける参加者の緊張も満ちていました。

そしてついに熱された玉鋼が金床に置かれ、大槌が振り下ろされた瞬間――

刀匠撮影

鋭い金属音が響き、真っ赤な火の粉が一面に舞い上がりました。しかし、それも一瞬の出来事です。
一斉に鳴ったシャッター音は鳴りやみません。

私も火の粉の熱を肌で感じながら、夢中でシャッターを切りました。

小気味よく鳴る小槌と、重厚な大槌が奏でる心地のよいリズム。刀に命を吹き込むかのような、刀匠さんたちの気迫と炎の熱。目で見るだけでなく、耳や肌でも感じられる迫力に圧倒されました。

刀匠撮影の難しさと面白さ

実際に撮影をしてみて、刀匠(鍛錬)撮影の難しさを痛感しました。

なんといっても、最大の難関はシャッターのタイミング。大槌が振り下ろされるまでの緊張感は計り知れません。

一瞬を狙うのは不可能なので、ひたすら連写。火花が鮮やかに写るかどうかは運次第の世界です。

大槌の当たる場所やシャッターのタイミングがよいと派手に火花が写るようで、予想もしていなかった写真に喜ぶ参加者の姿も見られました。

刀匠撮影
撮影ポジションによっても火花の見え方が変わる

また、火花の表現はシャッタースピードによって異なります。

速いシャッターで火花の一瞬を止めるか、スローシャッターで線状に描写するか。どちらも独特の美しさがあり、各々、好みの撮り方を模索しているようでした。

肉眼ではわからない、写真ならではの楽しみ方ですね。

刀匠撮影
シャッター速度を1/160秒まで落として撮影

同じ設定でシャッターを切っても、二度と同じ画は得られません。そんな一期一会の難しさが「また撮影したい、挑戦したい」という思いを掻き立ててくれました。

刀匠さんとお話し・記念撮影

撮影後には、刀匠さん方とのお話しや質疑応答、記念撮影等の交流時間もありました。ワークショップならではの特別な時間です。

相撲力士・横綱が土俵入りの際に用いる太刀も手がけてきた藤原兼房さん。今回は実際に打った刀を触らせてもらえる、稀少な機会もいただけました。

真剣を持つお弟子さん
藤原兼房刀匠の刀を持つお弟子さん 波のように滑らかな刃紋が美しい

現代において刀は非日常であり、テレビや博物館でしか見たことがありません。

ずしりと手に伝わる重さは、華麗な太刀捌きができるとは到底信じられないものでした。しかし、刀が生活に溶け込んでいた時代はたしかに存在し、そんな遠い昔を想像させる体験になりました。

大槌を持つ

また、回し打ちの疑似体験もさせていただきました。

一見軽々扱っているように見える大槌ですが、重さは5kg超。振り上げることができず、刀工さんたちの力強さと技術に改めて驚かされました。

まとめ

関鍛冶伝承館

関市の鍛冶場で目の当たりにしたのは、800年の歴史を背負い「折れず、曲がらず、よく切れる」を実現し続ける技の数々。

二十六代にわたり受け継がれた刀匠の鍛錬は、命を吹き込む瞬間を目撃するような、息をのむ迫力がありました。

そんな刀匠の技を撮影する時間を通じて、伝統工芸の奥深さの片鱗を見た気がします。もっと知りたい、また訪れたいと心を動かされる熱がありました。

絶えることなく続いた技術と、職人たちの精神。これからも引き継がれていくであろう鍛錬を写すワークショップは、まさに歴史を撮る試みです。

ぜひ、皆さんご自身の目と耳、そして肌で味わってみてください。