それから暫くの間、私たちは色々な話をした。
父は、自分のいる世界のことについては多くを語らず、ひたすら、私の暮らしぶりについて心配し、様子を聞きたがった。
「そっちから私の様子って見られるんじゃないの?」
何となくのイメージで聞くと、元気にしているか等の大まかな様子は分かっても、細かいところまでは分からないという。
私は父を安心させるよう、できるだけ明るい話題を選んで話した。
医師との面談で、そろそろ大学に復学できそうと言ってもらえたこと。父が遺してくれた万年筆の値段をネットで検索したら、想像よりずっと良い値段だったこと。月に一度、父の妹が家にきて、料理を教えてくれること。
父が亡くなってから、必ず夜明け前に目が覚めてしまうことは言わなかったが、父も、こんな時間に私が一人で歩いていたことについては、特に触れてこなかった。
音のない湖畔で、私たちの笑い声だけが響いていた。




