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てのひらの炎 4ページ目

私たちは暫く黙ったまま、刻々と色を変えていく湖と空を見つめていた。
頭の中を駆け巡る疑問を一つ一つ吟味し、どこから尋ねようかと考えている私の横で、父は黙ったまま、落ち着かない素振りをしている。
そわそわとポケットに手を突っ込みながら視線を彷徨わせているその姿を、何度も目にしたことがあった。
初めての三者面談の前、高校の合格発表の日の朝、東京へ向かう私を見送る駅のホーム。
私が不安や緊張を感じている時、父は私以上に落ち着かない様子で、そんな時はいつも、父から微かに煙草の匂いがした。
私は、服に臭いがつくから絶対に私の側では吸わないで、ときつく言っていたため、私のいないところでこっそり吸っていたのだろう。
けれど、煙草を吸う時間は、男手ひとつで仕事と子育てに明け暮れ、息つく暇もなかった父にとって、貴重な安らぎのひとときだったのだろうと今では思う。
色とりどりの記憶と懐かしさに胸がいっぱいになり、
「煙草、吸っていいよ」
敢えて素っ気なく言うと、父は少し驚いた後、どこか照れ臭そうな表情をし、
「では遠慮なく」
と、ポケットから煙草とライターを取り出した。

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この記事を書いた人

学生の頃に写真活動を始め、独学で撮影技術を獲得。「季節のうつろいや物語性を感じさせる写真」をテーマに数々の作品を制作。元国家公務員で、現在は兼業カメラマンとして活躍中。2022年9〜10月には「恵比寿 gallery HALO」にてAoki Nagisa氏との合同写真展『透光』を開催した。

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