MENU

てのひらの炎 2ページ目

東の空がうっすらと色付き始める。
空から水面に視線を移すと、遠くで、ぼんやりとした人影と小さな光が動いているのが見えた。
こんな時間に、他の人の姿を目にするのは珍しい。
反射的に体がこわばるのを感じつつ、目を凝らした私は、思わず息を呑んだ。
あの歩き方。後ろ姿。
有り得ない、と即座に否定する理性を思いきり振り払い、確信する。
間違いなく、父だ。
ランタンだろうか、灯りを手にしながらゆっくりと歩みを進める懐かしい背中を見ていると、頭を掠めた疑問や恐れが喜びでかき消され、私は走り出していた。

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

学生の頃に写真活動を始め、独学で撮影技術を獲得。「季節のうつろいや物語性を感じさせる写真」をテーマに数々の作品を制作。元国家公務員で、現在は兼業カメラマンとして活躍中。2022年9〜10月には「恵比寿 gallery HALO」にてAoki Nagisa氏との合同写真展『透光』を開催した。

目次