
コートを羽織り、玄関のドアを開けて外に出た。
雪に覆われた、見慣れた故郷の風景が目の前に広がる。
涙に濡れた頬に刺す風は冷たく、朝の光は温かかい。父のいない、いつもの朝だ。
私は自分の存在を確かめるように、手袋越しに自分の手を強く握ってみた。
握ったところから、脈拍に合わせてどくどくと熱が広がっていく気がする。
(きっと、大丈夫)
朧げな夢の記憶の中で、父から最後にかけられた言葉が、鮮やかに耳に残っている。
確かに二人だけだったあの世界で、手のひらに感じた小さな炎の熱が息づいているようで、私は自分の手を握りしめたまま、目の前に広がる景色をいつまでも眺めていた。




