なにか物思いに耽るわたしの心を読んだのか、ソフィアおばあちゃんはゆっくり、こう切り出しました。
「ごめんなさいねありあ、変なことを言って。」
「わかってる、わかってるのよ。わたしはきっと、写真に、写真によってあたたかくなる自分の心に、そして写真によって蘇るかけがえのない記憶に、いまこうして生かされているのよね。」
「ありあはどんな写真を撮るのかしら。よかったら、見せてもらえないかしら。」

ヴェネチアの冬はたしかに厳しいけれど、ソフィアおばあちゃんと過ごすこのかけがえのない時間は、どの季節のそれにも、当てはまらなかったように思います。
「素敵な旦那さんだったんですね。」
「勝手に人のことを殺すんじゃないよ、まったく。」
エプロン片手に突然リビングに入ってきた素敵な白髭のおじいちゃんは、わたしにそう言って。
瞬く間に笑い声に包まれたこの空間を、わたしは決して忘れないでしょう。



