数分後、ソフィアおばあちゃんは、1冊の古いアルバムを持って戻ってきました。
飲みかけのコーヒーカップとクッキーのお皿を少し脇にどけて、そのアルバムを広げて。
大体3秒に1ページくらいの速度でページをめくられるそのアルバムには、ソフィアおばあちゃんと、ソフィアおばあちゃんの家族の写真がぎっちり詰まっていたのです。
「おばあちゃん、これって・・・」
「夫はね、それはもう、たくさんカメラを持っていたのよ。」
とあるモノクロ写真のページに差し掛かったところで、ソフィアおばあちゃんは口を開きました。椅子の上で微笑むひとりの少女が写るそのモノクロ写真を、人差し指でなぞりながら。

「ナポリへ旅行した時も、結婚式の時も。わたしたちの娘が生まれる時だって、あのひとはカメラを手放さなかったわ。」
「見て、この無邪気な笑顔。娘は、生まれた時からとっても元気でねえ、わたしのお腹から出てきた時なんて、お医者さんに向かっておしっこしちゃったのよ。この写真だってそう、あの人が娘の写真を撮りたいってカメラを向けても、娘はなかなか言うことを聞いてくれなくて。何枚も何枚も撮って、やっとこの写真が撮れたんだから。」
「家族旅行した時なんて、写真撮影に夢中になりすぎて、列車に乗り遅れたこともあったわねえ。」
次から次へと出てくる、旦那さんへの愚痴。ソフィアおばあちゃんの話は、それから10分くらい続いたと思います。
そうか、旦那さんがあまりにもカメラに熱中してしまったから、ソフィアおばあちゃんはカメラのことをそんなに好きじゃなくなってしまったんだ。
でもどうしてでしょう。その愚痴を言っている彼女の表情は、新緑の風のように優しさと希望で満ち溢れ、そのまなざしは夏の日差しのように鋭く、そしてその顔色は、紅の季節を思わせます。




