わたしのひとり旅のはじまりはたいてい、目的地がどこなのか、自身でも分からないことが多いです。こういう時、わたしは自身の五感を頼りに行き先を決めます。
たとえば電車に揺られて、途中停まった駅でドアが開いた時、良い匂いが漂えば、きっとわたしはそこで降りるでしょう。
良い匂いというのは、食べものに限った話ではありません。季節の草花の匂い、人々の営みの匂い、そして、その街の匂い。少し曖昧なことを言っているかもしれませんが、「旅をする」こと自体、わたしにとってはとても曖昧なことですから、概念的で抽象的なものごとと旅を結びつけてやろうというのは、それほど不自然ではないのかもしれません。
さて、ここまでちょっと恥ずかしくなるようなことを言いましたが、今回の旅の目的地は、電車で「寝過ごした」ことによって決まりました。加賀百万石の面影を色濃く残す、石川県金沢市です。

眠たい目を擦りながら金沢駅のホームに降り立ったわたしがまず驚いたのは、幾何学的で、どこか近未来を感じる駅舎でした。「ほええ〜」なんとも頼りない声を発するわたしはまだどこか夢うつつでしたが、それでも確かに、表情は好奇心に満ちていたと思います。
追加の電車賃を支払って、改札の外へ出ました。改札を出ると、その街に入ることを許されたような気がして、思わず挨拶をしたくなるのは、きっとわたしだけではないのではないでしょうか。
「金沢さん、こんにちは。」ありあの金沢ひとり旅、スタートです。




