Nikon Z fとキットの40mm、そしてライカレンズと巡る香港旅。
事件は真夜中に起きた。
初日を幸せに過ごし、布団に入った深夜0:30(日本時間の午前1:30)、けたたましく鳴り響く火災報知器の音で飛び起きる。
ホテルの部屋のドアを開け、周囲を見渡すとプレーリードッグのごとく、他の部屋の客も外の様子を伺っている。火は見えない、煙も匂わない。他の部屋からもどんどんプレーリードッグが湧いてくる。誰しも不安そうにしてはいるものの、様子を伺うだけである。そういえば絶滅危惧種だったな、などと思い出すと少し不安になり、パジャマから着替えて1Fのロビーに行き、フロントに確認をする。旅行中に火災で昇天などちょっとネタにもならないし、まだ記事も書き終わっちゃいない。
フロントスタッフは「OK!OK! No Problem!」と拍子抜けするほどざっくりした反応。念のため、下の階もチェック(火や煙は下から上がる)するが異常はなく、戻るとまだプレーリードッグたちがつぶらな瞳で不安そうにこちらを見ている。
フロントや下の階の様子を話すとみんな安心したようで部屋に戻っていく。
Twitter廃人を自称する私は「香港」「火災報知器」で検索。
どうやらよくある話らしい。
こんな事件の翌日の朝は眠気が酷い。
外に出ると冬の低い入射角の日差しだが光は強く、濃い陰影に思わずシャッターを切る。
影の描写や階調もなかなかに好みだ。もちろん現像時にシャドウを持ち上げてもしっかりとトーンを残してくれるし、一方で白も飛ばずにググっと粘る印象だ。

この日は少し贅沢を、ということで昼から高層ホテルにあるレストラン「天龍軒」に向かった。

地上102階にあるこのレストランでは香港の海を眼下に見渡しながら、飲茶を楽しむことができる。所狭しと停泊するクレーン船のリズム感も個人的には大好きなポイントだ。

ちなみに「寄れない」で定評のあるライカレンズでもTechartのアダプターを通してなら、それすら忘れてしまうようなテーブルフォトを撮れる。エビ餃子の皮の光沢と透明感を見るだけで龍井茶6杯はおかわりできそうである。もはやフォト飲茶。
残念ながら、名物メニューのイベリコ豚叉焼は相変わらずの美味しさで殴られたような衝撃に思わず写真を撮り忘れてしまう。
非日常の贅沢に「美味しかったね!」と満足して妻と感想を述べあっていると4年前の2倍のお会計がやってきて、102階から飛び降りたくなった。時の流れはあまりにも残酷である。香港ドルはドル円の為替と連動してしまうのだ。円安が憎い。

気を取り直して午後はSoho地区のあたりを練り歩く。Victoria Peakの麓にあたるこのエリアは九龍半島側の尖沙咀(チムサーチョイ)とも異なる活気があってお気に入りのエリアだ。サンフランシスコのような坂道やリノベされた小洒落た建物、壁に描かれたグラフィティアート、歴史ある寺院、歩くには少ししんどいが写欲を掻き立てるものは数多い。


警察の官舎がリノベされたPMQのあたりも結構好きなスポットだ。
行くたびに中の店舗が変わるが、若いクリエイターがアトリエや店舗を構えており、エネルギーに溢れた場所だ。ここを起点に新しいビジネスにチャレンジする人たちも多い。
前回と同じ店はほとんどなく、四年の間の変化も感じながら何度もシャッターを切った。


光がいい時間帯に入ったので、何枚か光がにじむシチュエーションでの撮影もしてみたが、どれもにじみ方が心地よい。
いつもはF8ほどに絞りがちな自分でも少し開放寄りで撮ってみたくなる。おしゃれだったり、雑然としていたり、新しかったり、鄙びていたり、香港という街の振れ幅に自身の撮影の幅が揺さぶられているような気分になる。旅スナップの醍醐味の一つだ。


樹木の緑もNikonらしい気持ち良い色合いに収まってくれるし、建物の質感もライカレンズとNikon Z fの組み合わせで独特の空気感を醸し出す。
朝から晩まで歩き通しだったが、ライカレンズのコンパクトさを活かしつつ、荷物も最小限で済む。Nikon Z fは首から下げっぱなしでスリングバッグにレンズ4本詰め込んで歩き回るスタイル、このセットアップが電車と徒歩中心の香港撮影に最高なことを確信した一日だった。

(三日目へ続く)
今回使用したカメラとレンズ
Nikon Z f

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