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旅と記憶のリフレーム #3 僕らが旅に出る理由

先日、広島へ向かった。
東北出身者にとって関西以西は秘境だ。
かつて東北が蝦夷(えみし)と呼ばれたのと同じように自分たちの想像を及ばない領域。ネットで情報はいくらでも手に入るものの、未だにそう言った「異境」感覚が抜けきれない部分がある。「広島風お好み焼き(※カープファンに怒られるのを承知で定義のためにこの表記とさせていただく)」なんてものは未だに私の故郷の街には存在していない。かろうじて焼きそばが入った「モダン焼き」を提供するお店はある(※ここでまたカープファンに怒られる)。

それくらい縁遠いことを食文化でも表現できるのだ。かつて岩手県某所は(広島風)お好み焼き不在の虚数空間だったのだ。ちなみに子供の頃なぜか私のキャップ帽は一時期カープで、兄がジャイアンツだった。「なぜ僕のはジャイアンツじゃないの?」とひとしきり泣いた後、徐々に受け入れ、やがて新幹線のホームで落として失くしてしまうまでよく被っていた気がするのでカープファンの方は許して欲しい。

さて、そんな私を広島の地に呼び寄せたものは何だろうか?興味を掻き立てたものは何か?

そう言えば広島はここ6年くらい推している「Perfume」の出身地だし、
劇場で見るだけに収まらず電子書籍も買った「この世界の片隅に」の舞台は呉だし、
先日惜しまれながら18年余の歴史に終止符を打った「蒼穹のファフナー」は尾道の町並みをモデルにしている。ほぼこじつけだけど、そういえばSLAM DUNKのインターハイも広島大会だった!!

どれも自分にはひとかたならぬ思い入れがある作品と人物であるだけに、地元に「(広島風)お好み焼き存在しない民」、としても広島に向かわざるを得ない理由付けとして十分である。ANAの7,000円キャンペーンに背中を押されて勢いでチケットを取ったけれど、その実、ちょっとした聖地巡りの感覚だったのかもしれない。

多数の物語を人は読んだり、見聞きすることで内包できる。
聖地巡りはその見聞きした他人の物語を自らの物語に変換する装置である。きっと誰しも物語を残したくて例えばそれを再度SNSに載せる。そして、語るものと語りを聞くものが新たに生まれ、それが伝聞のように広がっていく。
もちろん「自分が物語の中に入った」という没入感も大前提だけれど、そこから始まるのは名もなき出演者(Mob)として自分が加わった新しい物語とも言える。

かつて故郷にお好み焼き屋がなかった私の物語には(広島風)お好み焼きは存在していなかった。つまり、各種聖地を巡るとともに、私の中に存在していなかった物語を取り戻す話なのである。伝聞で伝わる物語もあれば、そうでないものもある。食べ物は圧倒的に後者だ。

なお今回の滞在中に二度のお好み焼きと一度の鉄板焼ホルモンを楽しんだ。
どれも美味しかったし、また食べに来たいとも思う。
やはり旅に出て、食事を通してその土地を理解することは旅の最も重要な要素の一つだ。
例え私が、広島の至宝オタフクソースには友人のおばあちゃんの店で焼き上げられる「たこ焼き」で慣れ親しんでいたとしても・・・。

・・・しかし、わからない。
混ぜて焼く関西風とはそもそも調理の流れが異なるが故に、よくわからないことだらけである。なぜ「つなぎ」になる十分な量の小麦粉もないのに、どうして生地とキャベツと麺が一体化できるのか?そもそもそれが分からない。

加えてもう一つ混乱を呼ぶのが、麺だ。
“現在の日本においては、材料は麦に限らず、一方、形は薄く伸ばして細く切ったり、線状や管状などに押し出して成形したものを麺、麺類という。” 引用:日本大百科全書(ニッポニカ)

という麺の定義から言えば、果たしてお好み焼きに完全に内包された焼きそばはその姿を持ってしても未だに「麺」と言えるのか?いや、我々にとって「麺なるもの」と「麺ならざるもの」の地平線は一体どこに引かれているのか?仮にそれが三次元的な境界であるとするならば、それは麺ではなくもはや立体ではないか?などと多分ChatGPTには答えも出せそうもない疑問が続く。

そして何よりも広島のお好み焼き屋の選びの基準と店ごとの差だ。
みな、それぞれお気に入りの店があるというが、麺とキャベツがメインコンテンツだから具のバリエーションもそれほど多くない。出汁で差別化しようにも出汁の分量は少ないか、ほぼ存在せず魚粉で代替している。では、焼き加減だろうか?それも麺パリ、麺やわだったり、表面の焼き加減くらいなもの。キャベツをどれくらい蒸すかという違いもかなりわかりづらい要素だ。聞けばソースのメーカーも全部で三種類ほどだという。故にコモディティ化が進み、「この店じゃなくては!」という強い理由もないように何も知らない私には思えた。(3度目のカープファン怒髪天ポイント)。

では、それでもなぜ広島の人はお気に入りのお好み焼きの店があるのか?それを選ぶのか?そんな疑問符はお好み焼きの物語を知ることで解けていった。

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この記事を書いた人

-北は利尻・礼文島(北海道)から南は波照間島(沖縄)まで
-アジアから北米、南半球でへリスキー、スペインで牛に追われるまで
-高級宿から寒くて寝れないハードコア野宿まで
-三ツ星レストランからフルコースの自炊まで
-天下の名湯からヒグマに怯えつつ入る野湯まで

と振れ幅のある旅を得意とする(ちょっとだけ)副業フォトグラファー。

旅に出ていない時は主にTwitterに生息しているか、noteで旅の思い出を綴っている。
M型ライカを愛用しつつ、風景や仕事ではSONY機を利用。 最近では「World Cupでドイツに日本が勝ったら・・・」と口が滑ってLeica M11を買う羽目になった41歳厄年。