能登に行くのは一体何度目だろう。
初めて能登に行ってから15年、毎年のように訪れ、我ながらよく飽きずに通うものだな、と思うこともある。新しい場所にも行ってみたいし、やっぱり能登にも行きたい、そんな気持ちで揺れ動きながら、いつも旅先を決めていたりする。
そんな私だが能登の桜にはまだ巡り合えていなかった。

4月中旬の一週間。地元の人に聞けば、昨年は嵐で1日で吹き飛んでしまったという。
開花宣言からちょうど1週間、仕事のスケジュールとにらめっこし続ける私がいた。
まだ、一度も出会っていない能登の桜に会いに行きたい。
でも実はたった2週間前に能登に行ったばかり。
天使と悪魔が戦いを始めるのにそう時間はかからなかった。
天使「思ったら行くべきでしょう?きっとまだ見ぬ景色が広がっています!」
悪魔「おめぇよぉ、行くのはいいけど、本当にそんな時間はあるんか?もし行って咲いてなかったら無駄足だぞ!」
AI Chat「能登半島の桜は一生に一度の経験です。仕事を休む価値は十分にあります。素晴らしい写真を撮り、心に残る光景に出会えるでしょう。行動に移す勇気を持って、夢中になって桜を追いかけてください。応援しています!」
AI Chatには課金してやり直しを命じつつ、天使と悪魔は私の脳内で終わりのない戦いを続け、ついに天は堕ち、地は裂け、海は枯れ、なんとライカM11は130万円になった。
さて、追い詰められてからこそ胆力が試されるのがサラリーマン。
まず、土日は気兼ねなく撮影をする。月曜は早朝・晩だけ撮影してリモートでホテルで働く。
火曜は有給をとりつつ仕事状況次第で判断をする。
妻には日持ちのする料理を作って冷蔵庫に残しておく(今回はビーフシチュー)。
全てのピースがハマり、調整出来そうなプランが見えれば自ずと脳内のバトルにも決着がつく。
何よりこの週の能登の天気予報は毎日が晴天であったことも私を後押しした。
こんな完璧なタイミングはこの先何回あるだろうかという僥倖。
すぐにスマホのアプリでぽちぽちと航空券と有給の申請を済ませた。
なかなか進まない開花状況は当日朝も40%のままで、少しヤキモキしたままフライトを迎えたが、20℃近くまで気温が上がる好天の予報。
朝発のいつもの能登便に乗り込み50分程経過したころ、パイロットが左に操縦桿を切ると機内の窓からは能登半島の深く濃い、しかし澄み渡った海の色だけが見え、少しの不安はすぐに期待へと変わった。

古墳の桜と天の川、桜に包まれた駅と電車、能登の青い海と桜の回廊のコントラスト、ただただ桜だけを追いかけるためだけの贅沢な旅が始まった。能登に通った十数年でも訪れたことのない場所へと赴き、桜を探す。多少事前に下調べはしてはいるけれど、道の途中でも桜を見つければおもむろに車を止め、無心にシャッターを切る。時に遅咲きの一本桜にも出会い、満開での再会を誓って別れることもあった。







