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エントリーキットチャレンジ Vol.2| FUJIFILM X-T30+フジノンレンズ XC15-45mmF3.5-5.6 OIS PZ×hirotographer with 姪っ子

『エントリーキットチャレンジ』とは、「素敵な写真を撮影するMARSHクリエイターなら、初級者向けの機材でも良い写真が撮れるのでは?」という素朴な疑問から始まった、MARSH編集部からの挑戦状。
月替わりで登場するチャレンジャー(=MARSHクリエイター)が、GOOPASSでレンタル可能なエントリー機を使って、作例写真の撮影に挑む企画です。
「良い機材を使えば、良い写真が撮れる確率は上がる」という機材至上主義に一石を投じるべく、久しぶりのエントリーキットを手に取ります。
果たして、エントリーキットでも良い写真は撮れるのか?
第2回は、旅と記憶のリフレームを連載中のフォトグラファー・hirotographerさんです。

可愛らしい姪っ子たちもすっかり大きくなってきた。小さくて階段を下りれずに無言で両手を広げて抱っこを要求してきたあの頃、永遠に続くおんぶや抱っこや肩車のリクエストを仰せつかったあの頃、夏の盛りに川遊びをしてはしゃいでいたあの頃・・・あっという間に時間は過ぎて気づけばもう中学生と小学生。

こちらが遊んであげているのではなく、もう遊んでもらっているのかもしれない。

きっとあっという間に成長してあの思春期特有の距離感の中へ突入していくのだろう。そんなことを考えているタイミングに訪れたのが今回の記事の機会だ。

エントリーキットチャレンジ。

そんなお題をいただいて私が考えたのは、

「エントリーキットの性能の限界にチャレンジする」こと!

…ではなくて、むしろ

「エントリーキットならではの簡易さ、取っつきやすさでどういう写真が残せるか?」

ということだった。

つまり、マニュアル設定でカメラを構えている、いつもの自分には撮れない写真だ。

実はこれを突き詰めていくと、誰かに撮ってもらう写真に行きつく。

バスケットゴール役を下の姪っ子から仰せつかった一枚。姪っ子撮影。

いつも自分の撮った写真しか残っていないけれど、もし一緒にいる誰かがカメラを持っていたら?それがエントリーモデルのように簡単な操作で扱えるカメラだったとしたら?

ちょうど今回のGWの帰省は片付けがメイン、時間を持て余してしまいそうな姪っ子に、このエントリーキットを渡し、一緒に遊んでもらうことにした。

GOOPASSで借りた富士フイルムのエントリーモデル、X-T30。

しっかりと充電してSDカードを挿入してから姪っ子(次女)に手渡す。

絞り?シャッタースピード?そんなことは後回しだ。

フィルムシミュレーションの設定だけ少ししてあげていい感じに写ればそれでOK。

何も教えてないし、指示もしない、彼女の感性と興味の在処に任せるだけだ。

X-T30の軽さやコンパクトさも抵抗なく触れてもらえる大事なポイント。

案の定、渡してみるとすぐに首からかけてなんだか嬉しそう。

この瞬間に成功を確信した。

最初はカメラの持ち方もおぼつかず、半押しすら上手くいかない様子だったのに、

1時間も立つと「ピピッ!カシャッ!」「ピピッ!カシャッ!」と小気味よいリズムを彼女は響かせていた。

階段を上るところから始まる実家の独特なエントランスも気になったのか姪っ子は撮影していた。違和感は写真の萌芽だと思う。
木馬を紐で引っ張らせての、姪っ子撮影。無心でシャッターを切り始めたころ。

夕食の準備をしていると、「見て見て!その辺で撮ってきた」と楽しそう。

姿見も遊び道具。カメラの持ち方はまだおぼつかない。

夕食の時も3家族+両親の写真がいつもよりも増えて、夕食後も「ひろとくん、そこに立って手を出して、そうそう!その角度」と要求が続く。他人の創造性に身を委ねるのも悪くない。それが姪っ子なら尚更だ。

そんな私、叔父さんは中腰でプルプルと震えながら、姿勢を維持しつつ、やがて満足いく一枚が出来上がる。いいぞ、すごいぞ、エントリーキット。そして姪っ子。そしてそこからトリミング範囲の指定の適切さには驚かされた。子供たちが遊び散らかした後の雑然とした室内とそれと相反するような構築された画面バランス。

ディレクション:姪、撮影:姪、トリミング:姪、スナップの楽しさを表したような1枚を彼女一人で作り上げていた。

「xx市に行くときに持ってってもいい?」

一日だけ隣の町まで出かけたときも、雨天にも関わらず君はそう言った。

自分だったらきっと「雨だしな・・・」とカメラを置いていったことだろう。

帰ってきたときは「見て見て!xxちゃんの写真もいっぱい撮ったの!」と嬉しそうだった。

普段見向きもしないシンクの水滴ですら被写体になる。カメラを持つことで彼女の視点に起きた変化を見て少し嬉しくなる。

写真を見せてくれながら「一緒に遊んだxxちゃんの顔写ってるけど、大丈夫?」と聞いてくる。みんながスマホで写真を撮れる時代、プライバシーの感覚も獲得が早い。そんな違いを直に感じるのも写真撮影という行為を通した別の物語の体感だろう。

ブレてる写真が多いのは絞った写真が多いからだ、autoモードのレバーがいつのまにか切り替わってしまっている。でも、そんなことも気にしなくてよいし、何よりブレた写真もその時何があったかを思い出せるトリガーになる。それすらも君がシャッターを押さなければ映らなかった思い出だ。

妹側の甥っ子を兄側の姪っ子が抱っこする。どちらの親もおそらく撮っていないシーンを姪っ子は残してくれていた。

たった3日ほどだけれど、姪っ子が撮った写真は900枚にもなっていた。

結構な枚数だ。スマートフォンを渡したとしても、そんな枚数にはたどり着かないだろう。カメラ、という専用機の力を感じるし、自分が普段、綺麗な風景、整った構図、適切な設定、そんなものに意識を奪われがちで、「ただ無心でシャッターを切る」ということを忘れていたのだと、少しショッキングですらある。

振り返った父。姪っ子にとってはおじいちゃん。姪の姿も鏡にうっすら映る、二人の記念写真。
雑然とした部屋を撮っているが、彼女のバランス感覚を感じる一枚。

帰りの飛行機に向かうギリギリにも「最後にもうちょっと撮っていい?」と撮影を続けていたね。

実家の片付けがメインの帰省で、時間を持て余してしまうだろう君に少しでも良い体験になればと老婆心で渡したカメラだったけれど、得たものが大きかったのはこちらの方だったんだよ、きっと。

自分以外のみんなの写真を撮りまくって、結果自分は映らない、残らない。

楽しいけれど、少し寂しいあの感じ。

物語の語り手にまわり、写真だけでそれを伝えるけれど物語には入らない、

そんな立ち位置だ。

普段写真を撮りまくっている人ほど、この気持ちがわかるだろう。

そして、撮ってはいるものの、「いい瞬間」を収めたがるせいで、年を追うごとにシャッターは選択的になってくる。

きっと気づいていないだけで、撮らなくなってしまった光景も多いだろう。

そこからは抜け落ちてしまう記憶だってある。

でも今回は君が残してくれた沢山の写真がある。

ずっこけているような下の姪。少しダイナミックな動きもこのカメラと姪だからこそ写せた一枚だ。きっとあとから「この時何が起きたんだっけ?」と話題になる。

別れ際、小さかったあの頃のように両手を広げてハグしてくれたことはX-T30のシャッター音とともにいつか思い出すと思うんだ。

赤と緑の補色は鉄板だ。知ってか知らずかそれに引き付けられる姪の視点。
私が兄(彼女の父)の仕事用のプロフィールを撮影している最中の1枚。一緒に撮ることは嫌がったけれどこんな1枚を残していた。
別れ際の一枚。姪はぎりぎりまでカメラを持って撮影していた。

あなたの撮らない写真を残してくれる誰かと一緒に過ごすためのエントリーキット。

普段カメラを携えて写真担当になってしまいがちなあなたに借りて、誰かに預けて欲しい。

機材レンタルはきっと自分が撮るためだけにあるわけじゃない。

お子さんのいるご両親、一緒に旅行に行く友人、恋人同士の何でもない一日、エントリーモデルを持つことで残る物語がきっとそこにはある。

普段カメラを持たない誰かがファインダー越しに見る世界にきっとあなたはいるし、あなたの視点を見つけた誰かがあなたを映しているはずだ。

私が撮影した1枚。姪たちと甥が去った実家の店舗(彼らにとっては遊び場)で。ここも来年には取り壊される予定だ。

今回使用したエントリーキット:FUJIFILM X-T30+フジノンレンズ XC15-45mmF3.5-5.6 OIS PZ

FUJIFILM X-T30
有効画素数2610万画素
ISO感度160~12800
マウントXマウント
シャッター速度1/32000秒~15分
手ぶれ補正なし
重さ約383g
サイズ約118.4×82.8×46.8mm
フジノンレンズ XC15-45mmF3.5-5.6 OIS PZ
焦点距離15-45mm(35mm判換算23〜69mm)
開放F値F3.5-5.6
最短撮影距離0.13mm(広角)
手ぶれ補正光学式3段分
レンズ構成9群10枚
最大径×長さ62.6×44.2mm(収納時)
重さ約135g
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この記事を書いた人

-北は利尻・礼文島(北海道)から南は波照間島(沖縄)まで
-アジアから北米、南半球でへリスキー、スペインで牛に追われるまで
-高級宿から寒くて寝れないハードコア野宿まで
-三ツ星レストランからフルコースの自炊まで
-天下の名湯からヒグマに怯えつつ入る野湯まで

と振れ幅のある旅を得意とする(ちょっとだけ)副業フォトグラファー。

旅に出ていない時は主にTwitterに生息しているか、noteで旅の思い出を綴っている。
M型ライカを愛用しつつ、風景や仕事ではSONY機を利用。 最近では「World Cupでドイツに日本が勝ったら・・・」と口が滑ってLeica M11を買う羽目になった41歳厄年。