「おばあちゃん、わたし、写真を撮り始めたんだ。カメラってすごく面白いんだよ。」
用意してくれた苦めのコーヒーを一口飲んでから、わたしは突然話を切り出しました。
「これ見て、可愛いでしょ。50年も昔のフィルムカメラなんだよ。」
「ソフィアおばあちゃん、もしかしたら知ってるかなあ。」
わたしがこんなにもカメラの話をするのには、理由がありました。ソフィアおばあちゃんの写真を撮りたかったのです。可愛らしいえくぼ、つやのある髪の毛、そして凛々しくも優しさを秘めた、この素敵な表情。また会えるかも分からないソフィアおばあちゃんのことを、わたしはどうにかして、記録として残したいと考えていたのでした。

「ありあ、わたしはね、カメラがそんなに好きじゃないの。」
ソフィアおばあちゃんからの突然のひとことに、わたしの企みは、唐突に終わりを迎えることとなります。
「どうして好きじゃないの?」
わたしに紡ぐことのできる言葉は、質問を投げかけることだけでした。
わたしの精一杯の問いかけに、ソフィアおばあちゃんはなにも言わず、そっと席をたち、リビングを離れます。
たくさんカメラとか写真の話をして、怒らせちゃったかな。
せっかくの再会を台無しにしてしまったのではないかという、焦りと後悔のこみあげてくる午後の束の間。ちょうど外からは、教会の鐘の音が聞こえてきます。




