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田舎者写真日記【第一回:嫌いだけれど、好き】 2ページ目

午後、友だちへ会いにゆくために、駅へ向かいました。

「ちょっと早くきすぎたかな」

改札などもない古びた駅の待合室で、1時間に1本来るか来ないかの列車を待ちます。

ひんやりとした空気を感じる駅の待合室

わたしは、田舎が好きです。

小鳥のさえずりや、川のせせらぎ、枝葉が風に揺れる音。ひとつとして不協のない心地よい音は、ぼうっと列車を待つには、何ら退屈しません。

しばらくして、小学生の女の子ふたり組が、かけっこをしながら近づいてきました。奥からは、ふたりのおじいちゃんらしきご老人が、腰を曲げながらゆっくり歩いてきます。ふたりにとってこの駅は、いつもの遊び場のひとつのようです。

駅舎で遊ぶ女の子ふたり

「見てみて、何このカメラ、可愛い!」

ひとりの女の子が、わたしが首からぶら下げているフィルムカメラを指差して言いました。

「何十年も前のカメラなのだけれど、触ってみる?」

そうやってやり取りをいくつか重ねて、女の子たちはいつしか、わたしを「カメラさん」と呼ぶようになっていました。

人と人の繋がりや交流のようなものは、この田舎町ではまだ、重要な役割を持っていて。寂しさを埋めるように、あるいは自身の「生」を再認識するように。そうやってこの町は、小さくも強く、繋がっています。

笑顔でピースをする女の子

「ねえねえ、わたしのことを撮って!今度会ったら写真ちょうだいね!」

ファインダーも見ず、カメラの設定もせずに、シャッターを切ります。全力のピースと屈託のないその笑みは、紛れもなく、緩やかに時の流れるこの田舎町によって形作られているようでした。

おじいちゃんのもとへ駆けていくふたり

ほどなく、遠くで踏切が鳴りはじめました。ふたりの女の子とバイバイをして、2番線ホームへ向かいます。

「きっとあの女の子たちとは、またどこかで会うんだろうな」

そんなドラマみたいな台詞を躊躇なく言えるくらいには、この町は狭いのです。

なんだか可愛い、一両編成の列車

一両編成の列車には、わたしと部活帰りの高校生と、そしてキャリーケースを持った観光客ふたり組だけ。

「この廃れた感じが良いんだよねー」

「わかるわかる、何もない感じがたまんないよね」

車窓からの景色を眺めながら会話をする観光客の声が、ディーゼル車のエンジン音に紛れて聞こえてきます。

「そうそう、そうなんだよね」

心の中で同意するも、反面このふたりの会話にちょっとムッとしてしまったわたしは、なんだかんだこの町が好きなのかもしれません。

さて、列車はトンネルを抜けて山をひとつ越え、友だちの待つ無人駅に停車しました。

背伸びをして聴いていた、都会での恋愛を語るラブソング。ちょうどサビの前で一時停止ボタンを押して、イヤホンを外して。ススキざわめく自然の音に耳をすませば、深呼吸とともに、自身が何者であるかをゆっくりと再認識してゆきます。

駅舎の脇に生えていたススキ

わたしは、古くさいものは嫌いだけれど、でもおじいちゃんのフィルムカメラは大好き。

フィルムを装填して自分で色々な設定をするのは面倒くさいけれど、でもシャッターを切った時に心が満たされる感覚はとても好き。

アメリカの哲学者であるトマス・ネーゲルは、かつてこう言いました。

「そうやって悩めるだけ幸せ。二律背反こそが人生だ。」

田舎は嫌いだけれど、でも田舎が大好き。

どう足掻いても、わたしは田舎者なのでした。

田舎町の夕日は、澄み渡っていて

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この記事を書いた人

写真家、文筆家。東北の田舎町出身。

ドイツの大学で西洋美術史を学んでいる。
2021年に祖父の形見としてフィルムカメラを譲り受けて以来、フィルム写真の魅力に取り憑かれてしまう。「青春」や「日常」をテーマとしつつも、様々なジャンルの写真に挑戦し、絶賛成長中。

また、幼少期から書いている日記を、SNSで毎日発信している。