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MARSH Photographers Interview|No.1 髙木美佑

MARSH読者の皆さんこんにちは。MARSHが開設してから1周年が過ぎ、現在では多くのフォトグラファーや写真家の方にコラムを連載していただけるようになりました。

そんなMARSHで連載しているフォトグラファーや写真家の方がどんな方なのか、じつは良く知らないという方も多いのではないでしょうか。

そこでMARSHのコラムを読者の皆さんにより楽しんでいただくために、フォトグラファーや写真家の方の素顔に迫るインタビュー企画を発足することにいたしました!

記念すべき第1回は、フォトコラム『センチメンタルな一人旅』を連載中の髙木美佑さん。
ファッションブランドのルックや映画のスチール撮影など、幅広いジャンルで活躍されています。
今回は、前回インタビューを行なった2020年6月から2023年8月までの活動を中心に、お話を伺いました。

▼髙木美佑さん前回のインタビュー

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目次

クライアントワークスについて


ー前回インタビューさせていただいたのが、2020年6月でした。あれから、どのような活動をされてきたのか伺いたいと思います。まずは、クライアントワークスから教えていただけますか。

髙木:2020年にマッチングアプリを使った『きっと誰も好きじゃない。※1』という作品集を出したことで、そこから仕事に少し変化があったと思います。作品集の内容が取材調だったこともあり、雑誌のインタビューや密着取材など、誰かにフォーカスして撮影するような内容の仕事が増えた気がしますね。

ーそれは『きっと誰も好きじゃない。』を見たクライアントの方から、取材も含めた写真撮影の依頼が増えたということでしょうか?

髙木:編集やライティングの仕事ではなくて、誰かにインタビューをする記事の写真撮影をお願いされることが多くなりましたね。あとは、映画などでドキュメント風というか、映画やドラマの現場スチールやメイキング、ポスタービジュアルの撮影のお仕事も増えました。

ーたしかにSNSを拝見していて、映画とかドラマとかのお仕事が目立っていましたよね。映画のスチール撮影、取材撮影のほかにも、さまざまなお仕事に取り組まれたと思いますが、それぞれどのような割合・バランスで依頼を受けられていたのでしょうか?

髙木:よくも悪くもなく、満遍なくですかね……。映画やドラマが年1本ほどあって、映画と雑誌の取材もあるし、あとはファッションのルック撮影とか、広告撮影、アーティスト写真の撮影もあったりして……。最近はスチールだけでなく、YouTubeの動画撮影を担当することもあります。それはここ最近の変化ですね。

※1…出会い系アプリを通じて男性と実際に会い、その時の出来事や心情を綴った文章と、別れ際に男性に撮ってもらった髙木自身のポートーレートから成る作品。

YouTube動画撮影

ーYouTubeの撮影はどのような経緯で受けられたんですか?

髙木:違うお仕事でご一緒させていただいた方が、YouTubeチャンネルの監督や構成をすることになってお声がけいただいた、という感じです。

ー撮影をご担当しているのはどんなチャンネルなんですか?

髙木:声優の山根綺さんという方のチャンネルです。
一般的なYouTube動画やVlogではなく、アパートの部屋の中でいろんな曲を歌って配信するというコンセプトがあって、ちょっとパーソナルな企画というか……。歌ってみた系でも企画系でもなく、個人にフォーカスしたチャンネルなんです。

ーあ、たしかInstagramのストーリーズに『踊り子』のカバーをアップされていましたよね。

髙木:そうです。月に2回ぐらいのペースで動画がアップされます。いつも6畳一間で配信するっていうコンセプトでやっているチャンネルで、2022年末〜2023年初めぐらいから始めた仕事です。

ーYouTubeの撮影用のカメラは、どんなものを使われているんでしょうか?

髙木:SONYのα7s Ⅲで撮っています。

ー普段とは違うカメラで撮られているんですね。チャンネル側が用意したカメラで撮られているのでしょうか?

髙木:そうですね。監督が元々持っていたのもあって。

アパレルブランド・tiit tokyo

ー色々な案件を受けられていると思うのですが、お付き合いの長いクライアントさんが多いのでしょうか?

髙木:どちらもいます。初めてご一緒する方もいますし、5年以上ご一緒にさせていただいている方もいます。編集の方やデザイナーさんから取材や広告の撮影をご依頼いただいて、その現場で知り合った方からお声がけいただいて新しく広がることもあります。

ーブランドのルック撮影は『kotohayokozawa』さんですか?

髙木:そうですね。あとは『tiit tokyo』というブランドのお仕事もしています。tiit tokyoはちょっとクラシックな、女性らしい服を作られているのが特徴です。
じつはtiit tokyoの方も『きっと誰も好きじゃない。』で興味を持ってくれて、お声がけいただけたんです。私はファッション畑の出身ではなかったんですけど、たまたまお会いする機会があって、知り合いになって、その後にお仕事振ってくださって……。ファッション写真を見て依頼いただいたというよりは「一緒にやってみましょう」みたいな感じから始まりました。

SUUMOタウン

ー純粋なスチール撮影の仕事ではなく、コラム『きっと誰も好きじゃない。』をきっかけに、お仕事の幅が広がったんですね。ほかに印象的だったお仕事はありますか?

髙木:印象的だったのはなんだろうな…。難しいですね。MARSHの連載もそうですけど、文章を書くお仕事の依頼もたまにあって、『SUUMOタウン』っていう、町に関するコラムを配信しているWebメディアなんですけど…。私、東京の日野市に実家があって、その日野市にまつわるものを書いてほしいと」お声がけいただいて、日野市の良いところを紹介する記事も最近手がけました。

SUUMOタウン
古物店をめぐり、物語はまわる。東京・日野市の回遊案内|文・髙木美佑 - SUUMOタウン 一度は不要となった物が世代を超えてめぐり、その物にまつわる物語もめぐる。たまたまの出会いでも、ドラマチックでなくても、なんだっていいのだと思う――。そう話すのは10...

ーあ、これ面白そうですね。

髙木:そうそう、その土地にゆかりのある色々な人たちが、思い出や現在進行形の話を綴られていて面白いです。これは割と最近の仕事でしたけど、楽しかったですね。なんて言うんだろう……。ただ撮影をするっていうよりは、私にまつわるものを撮って文章を書いてほしいっていう、パーソナルな部分にフィーチャーしてお声がけいただいたお仕事だったので、印象深かったですね。

ー写真家だけじゃなく、芸人さんやミュージシャンなどいろんな方が書かれているんですね。

髙木:それも面白いですよね。料理されている人とか、本屋さんやっている人とか、色々な方が執筆されています。

ーSUUMOタウンはどういう経緯でお仕事を受けたんですか?

髙木:これも『きっと誰も好きじゃない。』の連載を見ていただいて……。たまたま私が日野に住んでいたことを知ってくださって、お声がけいただきました。

ー『きっと誰も好きじゃない。』、すごいですね!文章を書くお仕事も増えてきたということでしょうか。

髙木:そうですね。全体的な割合で言えば、まだまだ写真が多いんですけど、文章や動画のお仕事が、1、2割ぐらい増えたかなって感じですね。

コロナ禍がクライアントワークスにもたらした変化

ー前回インタビューさせていただいた時は、コロナ禍に突入した頃だったと思いますが、クライアントワークで何か影響はありましたか?

髙木:緊急事態宣言が東京で出ていたので、1ヶ月ぐらいは本当に何もしなかったですね。アシスタントの仕事を、月に1本入れていたかなぐらいで……。私はその時まだ実家の日野市に住んでいて、両親と同居していたので。コロナに感染して両親へうつしても困るなっていうのがあって、仕事はほとんど何もしませんでした。

ー自粛中、お写真は撮られていましたか?例えば、ご家族を撮られたりとか……。

髙木:それこそ、自粛中に『きっと誰も好きじゃない。』を連載していたんですよね。なので、記事を書き起こしていました。元々(『きっと誰も好きじゃない。』の)撮影や取材はコロナが流行するよりもっと前(5年ほど前)からやっていたんですけど、データの整理や執筆を全然していなかったので、自粛中にやっていました。

ーなるほど。じゃあコロナの影響はあったものの、コロナ禍に作った作品がきっかけで、幅広いお仕事に繋がっているんですね。

髙木:そうですね。まとまった時間が仕事をしているとなかなか取りづらいので、コロナ禍を利用して、溜め込んだ作品制作や整理をしていましたね。

ー髙木さんの場合は「コロナの自粛期間」をポジティブに捉えられると思うんですけど、写真家の方にこの質問すると、大変だったという話をされる方が多い印象でした。

髙木:そうですよね。周りの写真家で、自粛期間中に収入源がなくなっちゃって、オンラインでプリントを販売して収入を得たりする方とか、物を郵送してもらって家でブツ撮りしてデータを送るリモート撮影事業を始めたりする方とか…そういう働き方をされている方もいましたね。

ー髙木さんのように、温めていたものを形にされて、それが今のいろいろなお仕事に繋がっていると考えると、コロナの自粛期間は重要な時期だったのかもしれませんね。

プライベートワークス(作品づくり)について

ーここからはプライベートワークスのお話を聞かせていただければと思います。2020年以降にはどのような作品を手掛けられましたか?

金髪ポートレート(仮)

髙木:29歳になる時に人生で初めて金髪にしたんです。29歳になる1日前に金髪にして、金髪にしたことで結構自分の中で意識が変わったんですよね。

それで今、金髪にしている人のポートレートを撮っていて、その人に「何故金髪にしたのか」や「金髪にしてからどう変わったか」みたいな話を聞いてます。それが2020年からここ数年で新しく取り組んでいる作品ではありますね。まだちゃんとどこかに載せたりはしてないんですけど。

ーちなみにその被写体の方からは、どんな答えが返ってくるものなんですか?

髙木:今はまだ女性にしか話を聞けていないんですけど、ある子は、就活の時にうまくいかなくて、でもみんながどんどん大人になっていって、黒髪に戻して同じようになっていくのが嫌で、逆張りじゃないですけど、そういう意識でやったっていう子だったりとか……。美容室で働いている子で「あの金髪の女の子だよね!みたいな感じで覚えてもらって、キャラ付けのために金髪にした」っていう子。あと、20歳の大学生の子に聞いたときは、「中学生のころいじられキャラで、自分をいじってたような人と成人式で再会する時に、見返すじゃないですけど、イケてる自分になりたくて金髪にした」とか、そういういろんな話を聞いてますね。

ーちなみに髙木さんは、どのような理由で29歳の時に金髪にされたんですか?

髙木:いくつかあるんですけど、そのとき、ちょうど展示だったりとか、いろんな本を書いたりしてて、ストレスで白髪が一気に出てきて、それがきっかけで「もうめんどくさいから金髪にしよう」って思ったのが1つです。あとは黒髪にしていた時に気が弱く見られることがすごく多くて……。とくに撮影現場で、男性が多かったりとか、アシスタントっていう立場だったりとかすると余計にそういうことが多い気がして、ちょっと自分で見た目をコントロールして印象を決めちゃおうと思って……。
それで金髪にしたら、不審者とか危ない目に遭うことが減ったんですよね。その時「ほかの人はどうなんだろう」って知りたくなって、今いろんな人に会って話を聞いています。

ー髙木さんの過去のセルフポートレートを見ると黒髪の印象がありましたが、MARSHで連載を始められてからは金髪ですね。

髙木:そうですね。金髪にする前はずっと長くて黒髪でした。

家族写真×ペイント(仮)

ー新しい作品も楽しみにしています!ほかに並行して取り組まれている作品はありますか?

髙木:ちょっと今止まっちゃってて、作品として発表するかも分からないんですけど、ペイントをする作品もお試しで取り組んでいます。
昔の自分が写っている家族写真を見つけて、それをキャンパスに貼ってみて、その背景を絵で延長していくっていうものなんですけど。

ー写真作品というよりは、写真を使ったペイント作品なんですね。

髙木:今までの作品は、ずっと今のことを考えて取り組んでいたんですけど、この作品は自分の過去のことに目を向けています。家族写真って自分が1〜3歳ごろのものだと覚えていないんですよね。それで昔を思い出しながら描くんですけど、小さい頃の思い出っていい思い出ばかりではないじゃないですか。トラウマなどのマイナスな思い出も含めて、過去に向き合う意識で取り組んでいます。

ー過去の思い出って、なぜか良い思い出よりも嫌な思い出のほうが鮮明に覚えていたりしますよね。それに敢えて向き合われた作品がどういうものなのかとても気になります……!
髙木さんは自分自身を作品の題材の一部として扱われることが多いですが、作品に関するインスピレーションはどこから得られるのでしょうか?

髙木:映画や展示を見たときや、本を読んだときもそうですけど、何かしらインプットをした時に思いつくことが多いです。金髪の作品は自分がそう変わったから、ほかの人はどうなんだろうっていう、ちょっとした好奇心からだったり……。思いついたらiPhoneでとりあえず概要だけメモしておくみたいな感じなんですけど。突然思いつくときもあるし、写真じゃないものを見たときに「こういうことを写真でやってみたらどうなるんだろう」と思うこともありますね。

ー普段のインプットを日常的にしていることが、アウトプット(=作品制作)に繋がるんですね。

インアワールームトーキョー

ー完全に作品づくりと切り離して、プライベートの写真を撮ることもあるんですか?

髙木:プライベートでも撮ることもありますね。出かける時は、何かしらコンパクトカメラを持って行くようにはしていますし、旅行だったら一眼レフカメラも持って行きます。プリントアウトして、アルバムを作ることもあります。

ーアルバムまで作られるんですね!最近撮られている普段のお写真はどのようなものになりますか?

髙木:半年前ぐらいに引っ越して、今下北沢の方に住んでいるんですけど、家がちょっと広くなったんです。それで家の写真を撮ることが多いですね。全然更新してないんですけど、Instagramアカウントを作って……。

ーわ、素敵ですね!

髙木:ありがとうございます。散らかっているんですけど(笑)。仕事とは関係なく、家の日常を投稿しています。

ーちなみにこの写真はどんなカメラで撮られてるんですか?

髙木:これはデジタル一眼レフやミラーレス一眼で撮っています。

ーコンカパクトカメラの話があったかと思いますが、それはコンパクトフィルムカメラということでしょうか?

髙木:そうですね、フィルムカメラが多いです。最近フィルムがすごく高いので、ハーフカメラとか、夜だったらストロボが付いている「現場監督」というフィルムカメラが多いですね。

ーフィルムの現像は、どのお店に依頼されているんですか?

髙木:急いでいる時は、カメラマンの方がよく利用している、渋谷と恵比寿の間にあるフォートウエノさんや、最近は下北に引っ越したのもあって、ヒロセフォトショップさんにお願いしています。あと、プライベートの急ぎじゃないものは桜カメラっていう郵送の現像所をよく使っていますね。普通は現像・データ化してくれて1500円くらいするのに、460円なんですよ。フィルム到着から2〜7日営業日ほどで、現像済みのフィルムとデータが入ったCD-Rを返送してくれます。

ーすごく安いですね!普通は現像だけでも数百円するのに、データ化込みでその価格はすごいです。

髙木:そうなんですよ。なくなってほしくないから、色々な人に教えてるんですけど、使う人がいなければなくなっちゃうものなので……。

ーとてもリーズナブルだと思うのですが、仕上がりはほかのお店と遜色ないのでしょうか?

髙木:いつも綺麗に仕上げてくださっています。リバーサルや白黒フィルムは受け付けていないんですけど、ハーフカメラにも対応していて、ブローニーもいけるんですよ。中判も同じ料金でやってくれるので、めちゃくちゃありがたいです。郵送で5本ぐらいまとめて送れば、送料考えてもすごく安いんです。

ーコンパクトフィルムカメラで撮られる写真は、スナップ写真が多いのでしょうか。

髙木:そうですね。スナップだったり、友人だったり、一緒にセルフで撮ることが多いです

ーフィルム自体はどのメーカーのものを使われてるんですか?

髙木:それも値段なんですけど、Kodakが多いです。一番安いKodakの『ULTRA MAX(ウルトラマックス)』をよく使っています。

ー最近はフィルムを手に入れるのってなかなか大変ですよね……。フィルムはどこで購入されているんですか?

髙木:もう見つけた時に買う感じですね。最近はもうフィルムを売っているお店も少ないし、本数制限も1人3本までとか決まっていることが多くて……。先ほど話したウエノさんとかヒロセフォトショップさんとかはフィルムを置いているのでそこで買ったり。あとは中野のフジヤカメラやカメラのキタムラで買うこともありますね。

ーどこか固定で決まっている入手先があるわけではなくて、買える時にとりあえず買われているんですね。

髙木:欲しいタイミングで買えないことが多いので、ある時に買っておくことが多いですね。あとはAmazonで買ったりもします。

プライベートについて

ーここからはプライベートについて、お聞きしていきます。

30歳を迎えて

ー2021年に30歳を迎えられたと思うんですけど、個人差はありますが、節目の年になったり、考え方が変わる年でもあると思います。髙木さんの場合はそういった心境の変化のようなものは、30歳を迎えてからありましたか?

髙木:30歳になった途端に…というのは、あまりなかったんですけど、いよいよ30歳になったかっていうのもあって、物事を長い目で考えるようにはなったかなと思いますね。
20代の時は結構がむしゃらにというか、もうその日暮らしみたいな形で生きていて……。もう来月、3ヶ月後とか半年後同じ仕事ができているのか分からないみたいな感じで、先のことを長い目で考えていなかったんです。
でも30代になって「5年後こういう人生になってほしいから、今何をするか」みたいに考えて動くようにはなったかなと思います。

ーではお仕事する場合も、その新しい視点が入ることはあったのでしょうか?例えば長く付き合えるか付き合えないかという感じで、お仕事の取捨選択をされるとか……。

髙木:多分カメラマンって選ばれる側の立場で、私から指定することってあんまりないんです。なんて言うんだろう、編集とかファッションとかって、新しいものを取り入れなければならないから、多分ずっと同じ人と仕事することってあんまりないと思うんです。若い子が出てきたら、その子に撮ってもらおうみたいな感じで、循環していくものだから……。広告でもファッションでも、ずっと同じことを同じ人としてても、多分限界がきますよね。相手も選ぶ人が変わってくるし、私もやっていくことを変えなきゃいけなくて、同じことをしてたらいつかマンネリ化しちゃうので……。

ーなかなか難しいですね。仕事って経験がものをいう部分はあるけれど、ずっと同じところに留まることはできないという……。では髙木さんが思い描く5年後の姿っていうのはズバリどんなものになるのでしょうか?

髙木さん:商業写真と作品制作の比重バランスを今よりも良くしていけたらと思います。
現在の収入源のほとんどが商業写真なのですが、今後は作品展示や販売でも収入を得て、それを次の新作の制作資金に回していけるようにするのが理想です。
そうなってくれば、先ほど質問でいただいたようにお仕事の取捨選択をして、制作への時間をもっと確保できるかなと思っています。

ー学生時代に、『しょーもない私の十代が終わりました。※2』を作られたと思うんですけど、20歳から30歳の節名で何か作品は作られたんでしょうか?

髙木:20代から30代は100日間カウントダウンみたいな形ではとくに作品は作っていないです。20代のその『しょーもない私の十代が終わりました。』を作った時に、30歳になる時に同じことやろうかなとは思ったんですけど、10代から20代にかけて作った時は、20代になることが本当に嫌で作ったんです(笑)。今の自分の心境の変化的には、30歳になることは別に恐怖ではないし、「どうにかして20代でいたい!」みたいな気持ちがなかったんで、作品を作ろうっていう意識にはあまりならなかったですね。

ーなるほど。ではあの時は20代になりたくなかったんですね。

髙木:そうですね。なりたくなくて「めちゃくちゃいっぱい写真撮って、10代を残そう!」っていうきっかけで始まったので、30歳になることはいい意味で嫌な感情はなく、同じことはしませんでした。

ー嫌な感情がなかったのはなぜでしょうか?私も昨年30歳を迎えましたが、卑屈になっちゃってる友人も結構多いです(笑)。

髙木:大学を卒業し社会へ出てから多くの人と関わることが増え、楽しそうに過ごしている方々と沢山知り合えたことがかなり大きいです。
30代でも40代でも年齢はあまり関係なく、かっこいい仕事や制作をされている方々が多くいるのだと知り、自分も将来こうなっていたいと思うようになりました。
学生の時よりも時間やお金を自由に使えるようになったし、自分で自分の道を切り開けるのだと思うと、年齢を重ねることに対して嫌な感情は自然となくなりましたね。

※2…二十歳になる誕生日の100日前から1日フィルム1本撮影すると決め日常を記録し、誕生日までの100日間をカウントダウンした作品。二十歳の誕生日当日には、自身がイメージする“大人”の物事を体験し、その様子をセルフポートレートで撮影した。

桑沢デザイン研究所に入学

SNSを拝見していて「桑沢デザイン研究所」に通われていることがずっと気になっていたんですけど、何故入学しようと思われたんですか?

髙木:私は日大芸術学部の写真学科出身なんですけど、授業内容は写真に関することだけだったんです。大体そういう美大っぽいところの受験ってデッサンがあったりするんですけど、うちの学科は全くなくて、面接と、ポートフォリオと、写真に関する小論文だけで、デッサンとか全くやったことがなかったんです。大学に入学してみても、美術学科はあるにはあるんですけど、ほかの学科だと、美術の授業を受けることは全くないんですよ。それがなんとなく、自分の中でコンプレックスじゃないんですけど……。「興味があるのに全然できない」みたいな気持ちがあって、ずっとやってみたいなって思っていたんです。

ーやりたいのにずっとやれなかったデッサンや彫刻などのアート表現を学びたかったんですね。

髙木:そうです。少し仕事が落ち着いた30歳ぐらいのタイミングで、何かを学びたいみたいな気持ちが出てきて、昔からずっとやりたかったデッサンなどの美術にまつわる勉強をしたいなと思って調べた時に、すごく自分に合っていたのが桑沢の夜間でした。

ー桑沢デザイン研究所を選ばれた理由はありますか?牛腸茂雄さんなどの著名な写真家さんも数多く輩出していますよね。

髙木:桑沢ではない他の学校へも見学に行ったり、町にあるような絵画教室も考えたんですけど、どれもやるジャンルが1個に決まっていて……。絵だったら『油絵コース』や『アクリル絵の具コース』、『水彩画コース』とか、そういう風にコースが決まっていて、それ以外は学べないみたいな感じのところが多かったんです。
一方で今通っている桑沢夜間の基礎造形という科は、いろんな授業を満遍なくやってくれる、本当に初心者向けのコースです。例えば、さまざまな素材の白い紙を使ってどんな表現ができるか考える授業だったり、絵の具やクレヨンなどの色を作るものを持ってきて、それをぐちゃぐちゃにしたり水を垂らしたりとかして、自分では意図しない表現をやってみる、色彩表現の授業だったりとか、木の棒を使ってどんなことができるだろうみたいな授業をやるんです。

ーアートについて幅広く表現を学びたかった髙木さんには、桑沢夜間の基礎造形コースがぴったりだったんですね。授業を受けてみていかがですか?

髙木:幼稚園で受ける一番最初の美術の授業みたいなことを、今この大人になってやるとすごく楽しいですね(笑)。
Instagramに載せたりもしているんですけど、写真のような2次元のものを3次元に変換する授業、逆に立体のものをデッサンで平面に落とし込む授業、黒い鉛筆で描くのが難しい白い石膏作品を描く授業、透明なものを鉛筆で描く授業、金属・木材・プラスチックと素材が異なるものを1個の鉛筆で描く授業などなど……幅を超えて考えるような授業が多くてすごい楽しいです。

ー単純に絵を描くだけじゃないんですね。

髙木:そうですね。「油絵はこういう風に描く」というよりは、発想力を鍛えるような授業ばかりです。テクニック的なものを学ぶ授業はあまり多くないです。

ー髙木さんが通われているクラスには何名くらいの方が通われているのでしょうか?年齢層も気になります。

髙木:今私が通っている科は本当に幅広くて、18〜65歳ぐらいまでいます。クラスメートは40名ほどです。高校を出てストレートで入学してきた人、大学に行きながらダブルスクールで夜間だけ桑沢に通っている人、私みたいに昼間働きながら夜に学校へ通う人、あとは40〜50歳ぐらいで、子どもが自立して家を出て、自分の時間ができたから学校でやりたかったことをやる人、定年して学校に通ってる人など……いろんな人がいますね。

ー転職のために通うというわけではなく、自分の興味関心とかスキルアップみたいな目的で通われる方が多いんですね。

髙木:私が通っている基礎造形という科は、仕事に直結するようなカリキュラムではないんですよね。それよりは桑沢などの昼間部で具体的なスキルを学ぶ前に、発想力を鍛えたり、脳みそを柔らかくしたりするために通っている人が多いですね。

ーずっとデッサンや彫刻などのアートを学んでみたかったということですが、髙木さんにとって桑沢に通うことは、仕事のためではなくて、どちらかというと趣味の方がニュアンスとして近いのでしょうか?
写真をやっている人でも、アートの勉強したいという方をあまり見たことがなくて……。勉強したいと思って学校まで行くって、結構なエネルギーがないとできないかなと思うんですけど、そこまでに至った理由はあるのでしょうか?

髙木:趣味の部分が多いですね。デッサンをやって、じゃあ実際に仕事に繋がるかと問われると、多分直接的に繋がることはないと思います。それよりは逆にリフレッシュ……仕事場と写真のこととかで、脳みそが凝り固まっているので、それをほぐすぐらいの気持ちで通っています。クラスの人たちも仕事や競争ではないので、別に下手くそでも大丈夫だし、できなくて当然で、とりあえず考える前にやってみましょうという感じです。1個のクオリティにこだわるよりは、とにかく数を作ったりとか、アイデアを生み出していく方法を学ぶ授業が多いので、それが凄くちょうど良くて。下手くそでもいいし、何のプレッシャーもない、クライアントがいて「こうできなきゃいけない」とかが全くないんで、責任のなさが自分にとってすごい良い時間なんですよね。週に2回だけなんですけど。めっちゃいい1日になってますね。

ーたしかに大人になると、いろんな情報が蓄積してしまって仕事に限らず「上手くやろう」っていう方向に自然と向かっていってしまいますよね。それがどんどん積もっていってストレスになることもありますし……。そういう縛りのない時間が髙木さんにとってとても有意義な時間になっているんですね。宿題や課題はあるんですか?

髙木:一応、授業内で終わらなかったらっていう感じで出ることはあるんですけど、働いている人も多いので、授業内で終わる範囲の量でカリキュラムが組まれていますね。

ーすごくいいですね。社会人になって、働きながら学校に通うのってかなり勇気がいることだと思うんですよね。ネックな部分としては課題の部分が結構大きいと思うんですけど、そういうストレスがないのもとても良いですね。

休日の過ごし方

現在、学校も通われてお仕事もされてっていう、かなりお忙しい状況だと思いますが、そもそも休日ってあるんですか?

髙木:フリーランスなこともあって、はっきりとした休日っていうのはあまりないかもしれません。でも細かいことをなしにしたら全然休んでますよ(笑)。寝る時間がないみたいな感じではないですね。ただ、仕事が入っていなくても、撮影前日だとレンタル機材のピックアップや車の手配などをしなければならないので、準備みたいなことで時間を取られるとかはありますね。

ーお時間が少し空いたときとかは、どんな時間の過ごし方をされてらっしゃいますか?

髙木:めっちゃ普通ですよ(笑)。ご飯作ったりとか、掃除したりとか。あとは今取り組んでいる新しい作品を作ったり。ホームページをちゃんと更新しようと思って、SNSやWebサイトの編集もやってますね。

ーじゃあちょっとお仕事っぽいような過ごし方になるんですね。

髙木:そうですね。でも出かけて映画見たりとかのんびりする時間もありますよ。

ー髙木さん、個人的には映画と音楽にすごく造詣が深い印象です。あと本とか漫画とかお酒も好きなのかなと……。

髙木:あ、お酒も好きですね(笑)。

最近ハマっていること

ーそんな多趣味な髙木さんが、最近ハマってることって何かありますか?

髙木:最近ハマってること……。今ちょっと学校が夏休みなんですけど、学校行っている時は学校の授業が楽しかったです。中でもデッサンが本当に楽しくて、ちょっと写真に通づる話だと、写真だと光の当て方とかでモノを見るけど、デッサンって結構辻褄を合わせて描くんですよね。具体的に言うと、例えばモノに光が当たって1番明るいハイライトがあったら、その隣って本当は影がグラデーションになっているはずなんですよ。でもデッサンだとその1番明るいハイライトを際立たせるために、現実ではあり得ないんですけど、その隣は真っ黒く塗らなきゃいけないんですよね。絵でモノを表現する時に、写真で考えてたものの見方とは全く違くて、「こう見せなきゃいけないからこう描こう」みたいな、無理矢理なところが結構多くて、それは全然知らなかったから、目から鱗というか、面白かったです。

ー写真で使う頭とは別の頭で物事を考えるといった感じでしょうか……。写真をやっているからこそ新鮮に感じるのかもしれませんね。

髙木:あと、なんだろうな……。引っ越して部屋が広くなったのもあって料理をするようになって、それ以来ずっとハマっていますね。昔アートディレクターの方に「センスがいい人は感覚が優れているから、大抵料理もできる」のように言われたことがあって、余裕のある日は出来るだけ料理をするようにしています。盛り付けもセンスが問われるので、インスタグラムの料理アカウントをみて参考にしたりしています。

ーよく作られるメニューとかあるんですか?

髙木:忙しくて追い込まれたりストレス溜まったりすると、ひたすら無心でできるような、キーマカレーとか、ミネストローネとか、「とにかく材料を刻めばいい」みたいなメニューを作ることが多いです(笑)。

ーちなみに、得意料理は……?

髙木さん:得意料理……。作る頻度で言うと、キーマカレーは月に1〜2回は絶対作ってますね(笑)。市販の固形ルーを使うこともあるし、カレー粉を使うこともあるし、ドライキーマもトマト缶とか入れて水っぽいやつを作ることもあるし。

ーこちらのカレーもご自身で作られたものですか?完全にお店のカレーです!

髙木さん:はい、自分で作ったものです。これは多分イエローカレーかな。KALDIとかで売ってるような、ベースト使っているだけなんですけど…
あと観葉植物にもハマっていて、たくさん部屋で育ててます。

ーMARSHのレビュー記事でも観葉植物のお店に行かれたりしていましたよね。

髙木さん:そうです(笑)。よく買いに行っていますね。

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好きなラジオ番組

ー音楽や映画などはいかがでしょうか?

髙木さん:音楽は来月夏フェスに行く予定がありますね。あと、音楽でも映画でもないんですけど、最近はラジオを聞いてます。

ーいいですね!何を聞かれるんですか?

髙木さん:いろいろ聞くんですけど、最近は『きしたかの』っていう芸人さんの『ブタピエロ』というラジオ番組を聞いていて……。多分SpotifyやYuTubeで聴けると思います。

髙木:あとアルコ&ピースの坂井さんと三四郎の相田さんが2人でやってるラジオ「83Lightning Catapult」もずっと聞いています。

ーYouTubeよりラジオを聞かれることが多いですか?

髙木さん:そうですね。レタッチなどの作業してる時とか、耳だけで楽しめるので。YouTubeだとどうしても視線が奪われてしまうんですけど、ラジオはそれがないのでいつも助けられてますね。

ーちなみにこのラジオ番組はどのようにして知ったのでしょうか?お笑い番組などで気になる芸人さんを見つけて…といった感じでしょうか?

髙木さん:ネタ番組は基本的に見るんですけど、めちゃくちゃお笑いが詳しい人に聞いてます。
今おすすめしたその2つのラジオも、お笑い好きな編集の方に聞きました。まんまとはまりましたね(笑)。

ー私も今度聞いてみます!

理想の働き方

ー最後に、今後「こんなお仕事やってみたい」とか「こういう作品作ってみたい」とか、今後のビジョン・目標・野望があれば教えていただけないでしょうか。

髙木:前回の多分インタビューの話と被ってしまうんですけど、仕事と作品作りにあまり境目がないような仕事をやっていきたいです。
がっつり仕事ではあるけど、プライベートの延長として写真の仕事があるのが理想ですね。それこそお笑いが好きでその人にお話を聞くとか、旅行をして写真を撮るだったりとか、この国のこの場所を取材に行くとか、そういう風に繋がっていけたらいいなって感じはしますね。
あとは展示や作品集を作りたいなっていうのは変わらずあります。

ーちなみに、撮ってみたい芸人さんやタレントさんはいますか?

髙木さん:宇多田ヒカルさんですかね。
いつかご一緒できるようなことがあったらいいなとずっと思っています。

ー意外です。宇多田ヒカルさんは世代的に少し離れているのかなと思うんですけど……。

髙木さん:多分小学校中学年〜高学年ぐらいの時に『First Love』が出たので記憶はありますね。その才能のすごさみたいなものまではその当時は全く気づいてなかったんですけど。昔の曲はもちろん、活動再開後の最近の楽曲も好きです。

ー大人になってから改めて魅力に気づくものってありますよね。
ここまでありがとうございました。どんどんお仕事の幅を広げられている髙木さんの活動に、MARSHも注目して行きたいと思います!

髙木美佑さん連載コラム『センチメンタルなひとり旅』

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東京都出身。大学卒業後、写真専門学校にて写真を学ぶが、中退し編集者の道へ進む。現在は独立してフリーエディターとして活躍中。韓国が好きすぎるあまり移住し、日本と行き来する生活を実行中。

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