修道院の鐘が鳴りましたから、わたしはまた、旅に出ようと思います。次の鐘の音を聞くために、そして、心の鐘を鳴らすために。
午前6時14分
“Guten Morgen!”
夢のような夢を見ていたのに、わたしを眠りから目覚めさせたのは、渋く少し滑舌の悪い、車掌のあいさつでした。
「お客さん、朝ごはんの時間だよ。何にする?」
「えっと、これとこれと、あ、やっぱりハムじゃなくてチーズが良いかも」
目覚めの余韻に浸ることなく、朝ごはんの注文を急かす車掌さん。車掌室に戻った彼はきっと、わたしの寝ぐせを笑っているに違いありませんが、そのあと運ばれてきた朝ごはんの匂いがこのA寝台の個室に充満すると、あらゆる感情がその匂いに包まれてゆき、肩を少し上げて深呼吸するわたしは、ひとつ小さな笑みを浮かべるのでした。

「このパンとチーズうっまー!」
2秒に一度くらいの頻度でパンを照射する朝焼けの光は、薄汚れた窓の外から。わたしはいま、寝台特急に揺られ、ひとり旅をしています。




