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田舎者写真日記【番外編:Die schöne Zeit -ありあの南ドイツひとり旅-】 3ページ目

午前9時39分

 オーストリアとの国境にほど近い、Füssen(フュッセン)という小さな街に到着しました。列車の終着駅であり、今回の旅のひとつの目的地です。

 アムステルダムからここまで、列車に揺られて12時間くらいでしょうか。わたしは少し疲れていましたので、駅前にあるカフェに入り、ほっと一息。少しストレッチをするなどもして。

フュッセン駅に到着

午前10時39分

 宿へ向かう路線バスまでは少し時間がありましたから、街を散策することにしました。旧市街の大通りを少し歩くと、南ドイツにいることをよく感じることができます。石灰で作られた家々はカラフルに塗られ、レンガの屋根は、まるでとんがり帽子みたい。左右にはたくさんのカフェと、談笑を楽しむ人々と。

旧市街の路地裏

“ゴーン、ゴーン、ゴーン”

 左奥の少し坂になったところから、鐘の音が聴こえてきました。無意識に、わたしの足はその音の鳴る方へ。見えてきたのは、小さくてちょっと無機質な、白壁の修道院です。

 教会や修道院というのは、わたしにとってはどうも不思議な存在だと、訪れるたびに感じます。キリスト教を信仰しているわけではありませんが、心を落ち着かせるには程よい静けさを保ち、一方でどの季節でも感じることのできる建物内の肌寒さは、わたしという人間のあちこちを、ちょっぴりシャキッとさせてくれるのです。

外装の無機質さとは相反するような、修道院の内装

「きれい」

 反射的に発したこの3文字は、この修道院を表すにはおよそ十分な言葉でしょう。もう一度この修道院を訪れることがあったとしても、きっとわたしは同じ言葉を発するんだろうな。

午後12時34分

 修道院のそばにある街を一望できる高台で、お昼ご飯を食べることにしました。リュックから取り出したのは、ついさっき旧市街にあるスーパーで買った、トマトとレタスのサンドイッチ。ちょっとつぶれています。学校とかピクニックとか、これまでサンドイッチを大勢で一緒に食べてきたわたしにとって、サンドイッチをひとりで食べるのはいささか寂しさを感じましたが、これが旅というものでしょう。

「同じサンドイッチだね、そこのスーパーで買ったんだろう?」

 近くのベンチに座っていたパーマの似合うお兄さんが、わたしに話しかけてきました。

「そうですそうです、美味しいですよね。トマトがたくさん入っているのが好きなんです」

それから会話はあまり続きませんでしたが、彼も旅をしているそう。互いの旅路などを話しながら、あの街はどうだとか、あそこのレストランはぼったくりだとか。やはり、誰かと一緒に食べるサンドイッチはより美味しいのだなと、街を見下ろしながら、ひとりうなずきます。

フュッセンの街並み

午後1時48分

 路線バスに乗って宿へ向かいましたが、チェックインには少し早い時間帯でしたから、荷物だけ預けて、再び外へ出ました。

「ちょっと早いけど、そろそろ行こうかな」

 観光客の流れに身を任せて、オーストリアとの国境付近まで歩みを進めます。

「暑い、暑すぎる……」

 アルプス山脈を構成する山々の麓なのだから厚着をしなければ、と着込んできたわたしですが、滴る汗が凸凹ジャリ道の石ころをハネるのを見るにつけ、「ああ、これは失敗だったのだな」と、ようやく見つけた木陰に身を休めながら思うのでした。同じく汗をかきながら休みを取る腰曲がりの白髪おばあちゃんと目を合わせて、互いに微笑んだ瞬間に吹くそよ風はとても気持ちよく。

目的地はもうすぐそこ
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この記事を書いた人

写真家、文筆家。東北の田舎町出身。

ドイツの大学で西洋美術史を学んでいる。
2021年に祖父の形見としてフィルムカメラを譲り受けて以来、フィルム写真の魅力に取り憑かれてしまう。「青春」や「日常」をテーマとしつつも、様々なジャンルの写真に挑戦し、絶賛成長中。

また、幼少期から書いている日記を、SNSで毎日発信している。