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田舎者写真日記【第八回:わたしが“写真家”になった日】 2ページ目

さて、踏切わきのビニールハウスにさしかかったところで、わたしはひとりの女性に声をかけられます。

「ありゃま、ありあ、どしたこげなどごろに(どうしたのこんなところに)。」

 声をかけてきたのは、町内会の会合でいつもわたしに手作りお菓子をくれる、高橋さんでした。

「こんにちは。畑してるって聞いてましたけど、こんなところでしてたんですね。それは、ジャガイモですか。」

「んだ、遠いげんど、毎日チャリンコでくっからよお、健康に良いべしたな。いもっこ(ジャガイモ)少し持ってぐが?」

「ごめんなさい、今日は入れる袋とかなにも持っていなくて、今度もらいに来ますね。」

 そんなやりとりをしていた時だったでしょうか。いえ、高橋さんとはもう少し話をしてからだったと思いますが、ビニールハウスの奥から、旦那さんが顔を覗かせました。

 「あれま、写真家さんの登場だべや。せっかぐだがら撮ってもらうべ。」

 実は数十分前も、通りかかった子ども達にそんなことを言われました。とても小さいこの田舎町では、ひとつの噂は1日あれば町中へ広がっていきます。わたしが最近たくさんの方々に声をかけてフィルム写真を撮っているということが、どうやら噂で広まっているらしいのです。

 「一昨日、大ちゃんのとごろさ行って、おめえさんの撮った写真飾られてんのみでよ。なんだ良い写真撮んじゃねえが。」

大ちゃんって、この前撮らせてもらった一丁目に住む大五郎さんのことかな。撮った写真はのちにプリントして、撮らせてもらった方へプレゼントしていましたが、まさかあの強面な大五郎さんが、わたしの写真を飾ってくださっているなんて。わたしは嬉しさを隠すのに必死でしたが、いま振り返ると、表情に漏れていましたね、きっと。

「わたしは、写真家なんてたいそうなものじゃないですよ。ただ趣味で、楽しくて写真撮っているだけですから。」

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この記事を書いた人

写真家、文筆家。東北の田舎町出身。

ドイツの大学で西洋美術史を学んでいる。
2021年に祖父の形見としてフィルムカメラを譲り受けて以来、フィルム写真の魅力に取り憑かれてしまう。「青春」や「日常」をテーマとしつつも、様々なジャンルの写真に挑戦し、絶賛成長中。

また、幼少期から書いている日記を、SNSで毎日発信している。