MENU

田舎者写真日記【第六回:言の葉の森】

「あれはね、ああいうのをねえ、『創音“そうおん”』っていうんだべね」

近所で行われている工事の音をそのように言った藤原のばあちゃんが、亡くなりました。

「あの工事、『騒音“そうおん”』がひどくて、学校から帰る時うるさいんだよね」
農作業中の藤原のばあちゃんにわたしがそう文句を言ったのは、たしか中学1年生くらいの夏だったと思います。

「あそごには、都会から若けえ夫婦が、米(稲作)やりに引っ越してくるんだってにゃ」
「老いたもんばっかのこの町に新しい何かがつぐられんだがら、うるさいなんて言ったらだめだべした」

当時、「騒音“そうおん”」を「創音“そうおん”」と言い換えたことの意味をあまり分かっていなかったわたしは、農作業で汗ばんだ彼女の表情を見ながら「ふーん」と言って、あれ、それからどうしたんだっけ。

ただ、すでに日記を書くことを日課としていたわたしが、言葉をより好きになった瞬間であったことは、疑うまでもありません。それからのわたしは、言葉とともに生きてきました。

1 2 3 4 5
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

写真家、文筆家。東北の田舎町出身。

ドイツの大学で西洋美術史を学んでいる。
2021年に祖父の形見としてフィルムカメラを譲り受けて以来、フィルム写真の魅力に取り憑かれてしまう。「青春」や「日常」をテーマとしつつも、様々なジャンルの写真に挑戦し、絶賛成長中。

また、幼少期から書いている日記を、SNSで毎日発信している。