写真家・井上浩輝さん解説!野生動物の撮り方Vol.6「北海道の初夏~夏の魅力」

  • 2023.06.01
  • 2024.07.16
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これから野生動物を撮影してみたい方の中には、「どんな機材を使えばいいの?」「どうやって撮っていいか分からない…」という方も多いのでは?

そこで、米誌「National Geographic」のフォトコンテスト『TRAVEL PHOTOGRAPHER OF THE YEAR 2016』ネイチャー部門で日本人初の1位に輝いた写真家・井上浩輝さんに野生動物の撮影方法について、うかがいました。

今回は、【テーマ:北海道の初夏~夏】について、詳しく解説いただいています。また、井上さんの記事では、毎回撮影テーマに沿った撮影のコツや愛用機材を解説いただいています。

井上 浩輝(いのうえ ひろき)

写真家。早稲田大学非常勤講師。北海道札幌市出身。キタキツネを中心に、北海道の美しい風景や野生動物たちを撮影している。「中居正広の金曜日のスマイルたちへ」、「情熱大陸」で取り上げられるなど、話題の写真家。

   

   

麦がどんどん育っていき、遠くの山を見れば、残雪が残る初夏

SONY α1 ILCE-1・FE 70-200mm F2.8 GM OSS II(焦点距離:200mm)・F10・1/200秒・ISO100・露出補正 :-1.3・モード :マニュアル

5月末頃は山々に残雪が見られ、麦秋に向けて麦がどんどんと育っていきます。丘の緑がボリュームを増すのもこの頃です。

SONY α7R II ILCE-7RM2・Vario-Tessar T* FE 16-35mm F4 ZA OSS SEL1635Z(焦点距離:24mm)・F14・1/640秒・ISO100・露出補正 :0・モード :マニュアル

北海道の夏の楽しみ・ラベンダーが咲き出す

SONY α1 ILCE-1・FE 24-70mm F2.8 GM II SEL2470GM2(焦点距離:35mm)・F11・1/40秒・ISO100・露出補正 :±0・モード :マニュアル

北海道の夏の楽しみの一つにラベンダーがあります。しかしながら、ラベンダーがいつ咲いているのかを正確に言い当てるのはちょっと難しい印象です。

過去にラベンダーを撮影していた日を確認すると、撮影している多くは、7月に入ってから。

ラベンダーの撮影は7月に入ってから、と考えるのが良さそうです。

また、ドラマチックな光を期待するなら、朝早い時間の斜光の時に撮影するのがおすすめです。

一方、動物たちの姿は?

子ギツネの姿が見えなくなっていくのが初夏です。小麦畑の陰に隠れたり、ひとりで遊びに行ったりしてしまって、次々と姿が見えなくなっていきます。

SONY α1 ILCE-1・FE 400mm F2.8 GM OSS(焦点距離:400mm)・F2.8・1/2500秒・ISO1250・露出補正 :0・モード :マニュアル

また、6月、7月にはジャガイモの花が咲きだし、そこでキタキツネの姿が見られることも。

SONYα7R III ILCE-7RM3・FE 70-200mm F2.8 GM OSS(焦点距離:200mm)・F2.8・1/640秒・ISO250・露出補正 :-0.3・モード : マニュアル

道東ではタンチョウの親子の姿を見かけることが多くなります。写真は夕刻の野付風蓮道立自然公園で撮影。

SONY α1 ILCE-1・FE 400mm F2.8 GM OSS(焦点距離:400mm)・F2.8・1/1250秒・ISO1600・露出補正 :-0.3・モード :マニュアル

エゾシカは可愛らしい水玉模様に変わり、エゾリスは冬毛の特徴だったふわふわの耳毛がなくなって、まるでネズミのようです。

SONY α1 ILCE-1・FE 400mm F2.8 GM OSS(焦点距離:400mm)・F2.8・1/1000秒・ISO1600・露出補正 :+0.7・モード :マニュアル

夏の風物詩『サクラマスの滝登り』

SONYα9 ILCE-9・FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS(焦点距離:187mm)・F8・1/2000秒・ISO5000・露出補正 :+1・モード : マニュアル

6月下旬頃から7月いっぱいまでの風物詩が『サクラマスの滝登り』。滝登りを見られるのは、北海道の東部・清里町にある“さくらの滝”です。

元々ヤマメとして生まれた魚が生存競争に負けて、生きる場所が無くなって海に下り、海を回遊して、海の中で何年間か過ごします。その間に体が大きく、強く、顔は鬼のようになって、川に戻って来きます。

その川に戻ってきたヤマメがサクラマス。

サクラマスは元来、ヤマメとして生まれます。 でも、この言い方では、さっぱり意味がわからないでしょう。

「山女魚」とも表記され、その魚体の美しさから"渓流の女王”と呼ばれる体長20センチほどのヤマメと、海から遡上し、滝越えを果たす全長60センチ、重さ数キロにもなる巨大なサクラマスは、もともと同じ種類なのです。ともすれば同じ母親から生まれた魚なのです。

引用元:北国からの手紙_井上浩輝

サクラマスは、自分たちを追い出したヤマメを蹴散らして種を残していくのですが、その滝登りがかっこいいこと。

この滝登りはとても魅力的なシーンなのですが、撮るのは本当に大変です。サクラマスが止まった状態で写すには、まずシャッター速度を1/2000秒以上に設定します。

ピントは、「AFが超高速かつ正確なカメラを使う」または、「被写界深度(ピントが合っているように見える範囲)が深く(広く)なるよう、F8程度に設定して“ここに飛んで欲しい”と思うところで待つ」か、のどちらか。

多くのミラーレスカメラの場合、ファインダーを見ていたのでは、ファインダーの中で見えたときにシャッターを押すのでは間に合わないことあるので、「このあたりを飛んだら、覗いている画角の中に入るぞ」と思う所に見当つけて、ひたすら連写。

そうすると、何枚か撮影できるのではないでしょうか。

サクラマスは、1分間に何十匹と飛ぶときもあれば、1分間に1匹しか飛ばないときも…。経験上は、11時以降がいちばん飛んでいる印象です。

井上浩輝さん

彼らの物語にも感動せざるを得ません

秘境中の秘境・神の子池

さくらの滝にほど近い、『神の子池』もおすすめの撮影スポット。地底で摩周湖と繋がっているという噂がある神の子池は、冷たい水がずっと湧いていて、冬でも凍りません。

森の中、透明度の高い池に倒木が沈み、そのまま腐ることなく五角形のような美しい模様を描いています。 なにより特筆すべきは、奇跡のような、その水の色です。 〝神さまからの贈り物”と書 かれた看板に偽りなしです。天候によって変わりますが、エメラルドブルーやコバルトブルー、吸い込まれそうな青が広がっています。

引用元:北国からの手紙_井上浩輝
参照:https://nisifilters.jp/pl-pdinfo/examples/

この池を綺麗に撮るにはPLフィルター(反射光を抑え、鮮やかな発色やコントラストが得られるフィルター)が必須です。普通に撮ったら空が水面に映ってしまい、このように綺麗には写りません。

この時期、風景写真を撮るなら?

丘陵地帯(美瑛町、上富良野町、中富良野町、富良野市、南富良野町にかけて)

SONY α1 ILCE-1・FE 24-70mm F2.8 GM(焦点距離:40mm)・F14・1/250秒・ISO100・露出補正 :±0・モード :マニュアル

夏の陽射しに輝く緑と、雲が落とす影の輝度差を撮るとおもしろい写真に仕上がります。

大沼国定公園

SONY α1 ILCE-1・FE 12-24mm F2.8 GM(焦点距離:12mm)・F14・1/125秒・ISO100・露出補正 :±0・モード :マニュアル

ナイタイ高原

SONY α1 ILCE-1・FE 24-70mm F2.8 GM(焦点距離:53mm)・F16・1/250秒・ISO320・露出補正 :-0.7・モード :マニュアル

大雪山国立公園

DJI FC3170・焦点距離24mm・F2.8・1/500秒・ISO100・露出補正 :-0.7・モード :マニュアル

こちらはドローンで撮影した一枚。公園の麓に広がる樹海が美しい場所です。

ニセコ積丹小樽海岸国定公園

SONYα7R III ILCE-7RM3・FE 16-35mm F2.8 GM(焦点距離:16mm)・F16・1/100秒・ISO400・露出補正 :±0・モード : マニュアル

厚岸霧多布昆布森国定公園

SONYα7R III ILCE-7RM3・FE 70-200mm F2.8 GM OSS(焦点距離:200mm)・F13・1/250秒・ISO200・露出補正 :+1・モード : マニュアル

釧路湿原国立公園

SONYα9 II ILCE-9M2・FE 70-200mm F2.8 GM OSS(焦点距離:200mm)・F14・1/20秒・ISO100・露出補正 :±0・モード : マニュアル

幌見峠(札幌市)

SONY α7R Ⅲ ILCE-7RM3・FE 16-35mm F2.8 GM(焦点距離:18mm)・F18・30秒・ISO800・露出補正 :0・モード :マニュアル

深山峠(上富良野町)

SONY α1 ILCE-1・FE 24-70mm F2.8 GM II SEL2470GM2(焦点距離:35mm)・F11・1/40秒・ISO100・露出補正 :±0・モード :マニュアル

夏はカメラマンたちにとってつらい季節?

夏は、北海道を撮り回るカメラマンたちにとってつらい季節。夜が明けるのがとても早いからです。

撮影は早朝3時から始まります。2時半には起きて出かけて、日の出の30分前には現地に着いて撮影始めたいところ。

2023年6月1日の日の出時刻(予想)

根室3:40
札幌3:58
東京4:27
福岡5:09
SONY α7R Ⅲ ILCE-7RM3・FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS(焦点距離:235mm)・F16・1/20秒・ISO100・露出補正 :0・モード :マニュアル

QAコーナー
井上さんに直接質問しちゃおう!』

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井上さんに直接質問しちゃおう!』

野生動物の撮影で三脚や雲台の選び方を教えてください。
また、これは撮影にあると便利!といった撮影アイテムなどが
あれば教えてほしいです。

雲台は、クランプレバー(レバーの開閉でカメラを固定する)がポイント。

どうしてネジ式を避けるのかというと、寒い所に持って行く場合、ネジの部品とクランプの部品の金属の組成の違いでネジが回らないことがあるから。

回らなくなるということは、締まっていないのに締まったと思ってしまうということ。

ネジ式はカメラの落下事故が起こってしまうかもしれないので、ホールドしたことが視覚的にも触覚的にも確実なレバータイプのクランプがおすすめです。

それから、『マグマ』というカイロは便利です。一年中持って歩いています。また、何かあったときに吹けるよう、笛は常に持ち歩いています。

あとは、強力な懐中電灯・Ledlenser(レッドレンザー)のLEDライトを愛用しています。100メートルほど先まで照らせるフラッシュライトがおすすめです。

SONY FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSSとFE 200-600mm F5.6-6.3 G OSSの違いは?

手ブレ補正に違いを感じます。100-600mmはちょっと弱い印象です。

600mmで撮影する場合、シャッタースピードを400mmのときよりもずっと上げなければいけません。

そうすると1/2000秒近くで撮影することに…。あくまで僕の場合ですが、手持ちで600mmの望遠端で撮るときは、1/2000秒ぐらいで撮らないとブレやすいと感じます。

600mmの望遠端の場合、F値は6.3。F6.3でシャッタースピードが1/2000秒の場合、ISOは3200などの高感度に…。

SONY FE 200-600mm F5.6-6.3 G OSS

明るい開けたところで鳥を撮るなら良いですが、朝夕にうっそうとしたところで四つ足動物を撮るには暗くて大変だと感じます。

600mmは夢の望遠域ですが、北海道の冬ではない時期に四つ足動物を撮ろうと思ったら、僕は100-400mmの方が好きです。

FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS

100-400mmを使って400mmをトリミングするのが◎。「それなら、100-400に1.4倍テレコンを装着するのは?」と思う方もいるかもしれません。

FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS使用

僕の印象ですが、100-400mm(SEL100400GM)に1.4倍のテレコンは、ちょっと絵がぼやけるように感じます。また、手ブレ補正が弱くなってしまう感じがします。

個人的には、トリミングに備えて高画素機であるR系のボディと、テレコンを使わずにSEL100400GMだけの組み合わせがおすすめです。

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GOOPASS ANIMAL MAGAZINE編集部 木村

こころに残る"トキ"のサブスク・GOOPASSを展開するGOOPASS株式会社の編集ライター。自社Webメディア『GOOPASS ANIMAL MAGAZINE』の編集スタッフとして、記事制作などを担当する。カメラを使い始めたのは2020年から。愛犬2頭を美しい景色の中で撮影するのが好き。使用カメラは、Canon EOS R6。

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