どうして島へ来たのかというと、友だちがねこを見たいと言うから。「あの島にはねこがたくさんいるんだって、ありあ、行こうよ!」断る理由はありません。だってわたしも、ねことふれあいたいですから。
島の港には、使われているのかどうかも分からない船や網がたくさんありました。わたしはそれを見て見ぬ振りするように通りすぎて、友だちとの会話に集中します。数分も歩けば、きっと昔は栄えていたのだろうと感じることのできる看板や廃屋の群れに、ごあいさつ。わたしの心は梅雨半ばのような様相でしたが、近くから聞こえてきたねこの鳴き声は雲を吸い、現実の春晴れへと連れ戻します。


「ねこだねこだ!」
第一島ねこ発見。わたしはウキウキとねこに近づいて、「何してるの」「きみ可愛いね、名前はなんていうの」なんておしゃべりを始めました。ねこにとってはきっとただの迷惑なナンパにすぎなかったでしょうが、許してください、そんなものなのです。
「にゃあ」
老いを感じるそのねこは、わたしを見ながらひと鳴き。そのまっすぐな瞳を見るにつけ、なにかわたしに言いたげでしたが、可愛いという感情しか持ち合わせていなかったわたしの単純な脳みそでは、理解できるわけもありません。
それから数時間、わたしと友だちはたくさんのねこと戯れあって、おしゃべりをして、写真を撮って、端から端まで島を散策しました。観光客数人を除いては、すれ違うのは悠々自適なねこたちだけ。その不気味さをどうも思わないくらいには、たしかに“ねこの島”を楽しんだのたと思います。心の中のざわめきも、隠すようにして。



帰路。
疲れ切ったわたし達は、無防備に夕焼けに照らされて、行きと同じプラスチックの椅子に座っていました。
友だちは椅子にもたれかかって寝ていて、とても幸せそう。きっとねこの夢でも見ているのかな。
船に揺られておよそ10分。
たぶんちょうど南へ向かう貨物船と、すれ違った時だったと思います。
貨物船の向こう側には、今日訪れた島がみえましたが、その島を見た瞬間、突然息が苦しくなり、目眩のようなものを感じたのです。
それは瞬間的で、どこかに助けを求めるような暇も与えないほどにはすぐにやってきて、去っていきましたが、わたしはゆっくり深呼吸をして、ことを冷静に考えようと努めました。
そっか・・・
行きの船で感じた閃光といい、島を散策しているときの心のざわめきといい、そしていま感じた、この息苦しさといい。
「そうだった、わたしは昔から、島が怖かったんだ」





