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おはよう、じゃあね、またあした。「良いことは良いこととして記憶しておきたい」

仕事の撮影で久しぶりに帰省した8月の長崎。僕は祖母の撮影をした。

撮影中も撮影していないときも、祖母はいろんな話をしてくれる。これまでの経験上、そんなに暗い話題が出ることはないのだが、この日は暗い話題がひとつあった。

祖母が住んでいる場所は周辺に団地が多く、目の前には公園もあるので子どもたちが遊んでいる姿をよく目にする。

ある日、祖母が出かけると、道端でしゃがんで何かを覗いてる子がいたそうだ。これまでもそうしてきたのだろう。祖母はしゃがんでいる子に対して「なんばしよっとー(何をしているの?)」と話しかけた。

そうすると、少し離れた場所にいたその子のお母さんが祖母のほうに歩いてきて「話しかけないでください!」と言われてしまったらしい。

祖母はそのような対応をされるのが初めてで、このときの体験を恐ろしかったと話した。これからは子どもに話しかけるようなことをもうしないと言った。

ここまでの情報だとその子のお母さんに対して悪い印象を抱く人がいるかもしれない。ただ、そのお母さんが悪いかというと、そうでもないと僕は思う。

お母さんの過去に何があったのかは僕も祖母も知らない。今はSNSを通して凶悪な事件から些細な事件まで、いろんなことが見えやすくなったと思う。どんなに注意していても何かが起こってからは遅いのだ。お母さんとしては子どもを守るための行動として当然のことをしたまでなのだろう。


それでも僕は悲しかった。

祖母の年齢は90を超えている。まさかこの歳になって誰かから注意されるようなことが起こるとは思ってもいなかっただろう。僕から見ると、本当に穏やかな見た目の祖母であり、間違っても子どもに危害を加えるような雰囲気は出していないのに。

自分もよくある。こちらがよかれと思って行動したことが裏目に出るパターンだ。良いと思って行動したからこそ、マイナスの結果になると精神へのダメージが大きい。

「せっかくやってあげたのに」

自分を守るためにこんなことを思ったりする。

でも、相手にとっては良い行動ではなく余計なお世話だったわけで。せっかくやってあげたなんて気持ちは偉そうにもほどがある……。

とは考えるものの、もやもやするんだよなぁ。

タフな人はこんなことでくよくよしないのだろう。Aさんにとっては悪かったかもしれないが、Bさんにとっては良いことかもしれない。そもそも自分のやり方にも悪い部分があったのではないか? ここを改善すれば次はもっと上手くいくかも!

そんなふうに考えられたらどんなに良いことか。自分はまだまだ未熟者だ。

明るい話もしよう。

家から歩いて5〜6分の場所にあるStarbucks Coffeeへ向かう道中、おじいさんから道を尋ねられた。見た目から察するに警備員だった。

僕は大学生のとき警備員のアルバイトを2年近くしていたから、警備員がどれだけきつい仕事かは理解しているつもりだ。

初めて訪れる場所だったのだろう。おじいさんは駅までの道のりを僕に尋ねてきた。何も用事がなかったら駅まで案内したかったのだが、Starbucks Coffeeでコーヒーをモバイルオーダーしていたので、口頭で駅の場所を伝えることにした。しかしまあ、説明するのが難しい。

どのように伝えれば一番、わかりやすいのか。可能な限り、一度、曲がるだけで済むルートを考えた。けれど、直線距離が長くて道中に何もないと不安に思ってしまうかもしれない。何か目印が欲しかった。

(そうだ。途中にセブンイレブンがある!)

「この道をずっと真っ直ぐ進むと、左手にコンビニのセブンイレブンが見えます。セブンイレブンが見えてもそのまま真っ直ぐ進んでください。そうすると、首都高下の横断歩道があります。そこを左に曲がってください。あとは進み続けると、駅が見えてくるのでわかると思います」

このように伝えて、僕はStarbucks Coffeeへ向かった。

僕は歩くのが早い。Starbucks Coffeeでコーヒーを受け取ったあと、歩いて戻っていると、先ほどの警備員のおじいさんに追いついてしまった。

一瞬、話しかけようと思ったのだが、人見知りなことと、自分の説明がちゃんと伝わったのかを確認したくて、あとを付いていくことにした。

(真っ直ぐ進んでくれ!)

心のなかでそんなことを思いながら、おじいさんの動向を見守る。

ようやくセブンイレブンが見えてきた。セブンイレブンが見えてもおじいさんはそのまま真っ直ぐ進んでくれた。最後に左に曲がるところまでを見届け、僕は家に帰った。

悪いことは本当に些細なことでも気にするのに、良いことは些細なことだと通り過ぎていく。きちんと捕まえて、良いことは良いこととして記憶しておきたい。そんな毎日を過ごせればいいのに。

今回使用したカメラ・レンズ

SONY α7 IV ILCE-7M4 ボディ

SONY FE 35mm F1.4 GM SEL35F14GM

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この記事を書いた人

フォトグラファー 1984年生まれ、長崎県出身。大学卒業後、建築業の職人を経てフリーのラ
イターに。その後フォトグラファーに転身。セクシー女優たちのデジタル写真集”とられち”シ
リーズ撮影担当。#なんでもないただの道が好き発案者。愛用機材はFUJIFILM X-Pro3。好き
な撮影ジャンルはスナップ。