はじめまして、写真家の髙木美佑(たかきみゆ)と申します。
この度はMARSH編集部さんからフォトコラム連載のお話をいただき、こうしてご挨拶をさせていただいております。
連載の内容については好きなことをやっていいということで、何をしようか、楽しく続けられるものがいいな、と考えているとき、昔読んだある本を思い出しました。
写真家の荒木経惟さんの奥様である荒木陽子さんの著書「愛情生活」です。
1997年に出された本ですが内容は30年ほど前のもので、陽子さん目線で当時のアラーキーとの出会いやデート、更には何気ない日常まで、陽子さんの日記が細かく綴られた一冊です。
荒木夫妻のどちらにもお会いしたことはありませんが、文章や写真から伝わるアラーキーの自由奔放さ、そして陽子さんのチャーミングさはとても愛おしく、素敵で刺激的な日々をおくられていたのがひしひしと感じ取られます。
そしてその本の中には具体的な店名や地名までが書かれており、いつか私もこれらの場所へ行ってみたいな、と思っていました。
そこで、この連載では荒木夫妻が辿ったであろう愛の軌跡を巡ろうと思います。
私は現在独身ですが、はたまた独身だから、なのかもしれませんが、他人のアバンチュールや愛についてとても興味があります。
彼等が実際に足を運んだ場所に赴き、愛情の断片を探したり、毎月の振り返りやその時の出来事なども含めながら写真を撮って文章を綴っていこうと思います。
我ながら出不精の私にぴったりな企画だと思います。
連載タイトルは、アラーキーが陽子さんとの新婚旅行を撮影した写真集「センチメンタルな旅」にちなんで、「センチメンタルなひとり旅」と名付けました。
また、連載更新日はお二人の結婚記念日が7月7日ということで、毎月7日更新が目標です。
アラーキーと陽子さんの共著でもある「愛情旅行」と「東京日和」も購入し行く場所を選定。
そしてGOOPASS※さんからPENTAX Q10 ズームレンズキットというカメラをお借りしました。
小さくて可愛い、コンパクトデジカメのような一眼レフ。
マイクロ一眼というものらしいです。
早速、最初の目的地へと向かいました。
※MARSHの運営元・GOOPASS株式会社が提供するサブスクリプション形式のカメラレンタルサービス。

まず初めは、「愛情生活」の初めの章でお二人がデートの待ち合わせに使われていた帝国ホテルのコーヒーハウス、ランデブーラウンジ・バー。
出発してすぐに、財布を忘れたことに気づく。
最近はスマホ決済で支払ってしまうので財布をあまり持ち歩かなくなった。
しかしお店を調べてみるとカードと現金の支払いのみであった為、近くに住んでいる友人へ連絡し、現金を借りた。
先行きが思いやられるスタート。
最寄駅の、日比谷駅へついた。
日比谷へくるのなんていつぶりだろう。
何年も前に、日比谷野外音楽堂でロックバンドのライブを観に来て以来だ。
帝国ホテルへ泊まることはもちろん、来ること自体も初めてだった。
こういった綺麗な場所へ入ることは緊張する。
入り口で止められたりしたらどうしようと心配しながらも、さも慣れたような顔をしてはいる。
ランデブーラウンジ・バーはロビーの目の前だった。
既に順番待ちをしている人たちがいて、私はウェイティングリストの11番目だった。
ロビーのソファに座りながら、順番を待っていた。
ロビーにはたくさんの人で溢れていた。
大きなクリスマスツリーが飾られ、年末の雰囲気も相まってか皆落ち着かないようだった。
チェックインを待つ人たち、宴会前の人たち、久しぶりに親戚と集まったような人たち、ディナーデート前の人たち。



番号が呼ばれ、席へと案内される。
ブレンドコーヒーを注文した。
あらかじめ調べていたので値段は知っていたけれど、1000円以上のコーヒーを飲むのは人生で初めてかもしれない。
すぐにウェイターがコーヒーポットとカップを持って来てくれた。
目の前で注がれるコーヒーはなんだか贅沢な気持ちにさせる。
広くて賑やかな空間に一人でいると、そのうち目の前の席に待ち合わせていた誰かが現れるような気がしてくる。
今まで、結婚したとしても結婚式を挙げたいと思ったことは一度も無かったけれど、こういった煌びやかな場所来ると結婚式を挙げてみるのも悪くはないかも、と思う。
一生に一度ぐらいはお姫様のような格好をして、みんなに綺麗だとかおめでとうだとか言われ、チヤホヤされたりお祝いされる日があってもいいなと思う。
他のお客さんたちはみんなどこか品が良く、育ちが良さそうに見える。
百貨店や銀座などに行くといつも思うけれど、明らかなブランド品を身につけていなくても上品に見える人たちはどうしてそう見えるのだろう?
姿勢や細かな所作なんだろうか?
髪や肌の艶?
自分とはどうしてこうも違うのか、いつも比べてしまう。
そして多少なりとも他人を身なりで判断しているというのは私の悪いところだ。
今日は帝国ホテルに行くと決めていたから、自分なりにいつもよりは小綺麗な格好をしてきたつもりだけれど、よく見るとセーターに毛玉がついている。


コーヒーを飲みすすめながら、格好をつけてノートを広げ、この原稿を書いている。
私もなにか小説家だとか研究者だとか、別の人間に見えているだろうか?
いつかこんな綺麗な場所で打ち合わせをしたりしてみたい。
隣でビジネスの商談をしていた2人が去り、綺麗な格好をしたマダム2人がやってきた。
コーヒーの香りに混じって、フローラル系のフレグランスの香りが漂っていた。
コーヒーを飲み干して、その場をあとにした。
なんだか勿体なくてちまちまと飲んでいたら、すっかり冷めてしまった。
記念にコースターを持ち帰る。
部屋のベッドのサイドテーブル用にしよう。
こんなケチくさいことをしているようじゃ、まだまだだなぁ。


著者紹介:髙木 美佑(たかき・みゆ)

1991年生まれ、東京都在住。 日本大学芸術学部写真学科卒業。セルフポートレートや 自己の体験を中心に作品制作を行う。
2020年12月に初の作品集『きっと誰も好きじゃない。』を刊行。
■WEB:https://www.takakimiyu.com/
■Instagram:@miyu.takaki
■Twitter:@2h35m
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