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思いやりから生まれた、愛あふれる一枚 〜 フォトグラファー・花盛友里インタビュー 〜

女の子の、飾らないかわいさを魅せる。ありのままのあなたが素敵だよと伝えてくれる。そして極め付けは、どの写真も愛で溢れている。

そんな、女性のかわいさを最大限に引き出すフォトグラファー、花盛友里さん。

女性誌や音楽誌、広告などで主にポートレートの撮影を手がけており、作品集『脱いでみた。』では、モデル経験のない素人の女の子のヌードを撮影しています。

今回は、花盛さんに撮影で意識していることや被写体との向き合い方についてインタビューしました。

ポートレート写真を撮る上で欠かせない、被写体との距離感。

当記事が、「被写体との関係のつくり方」の一つのアイデアとして提供できれば幸いです。

※本インタビューは、2022年1月21日に行われたものです。

目次

普通だから共感できる、被写体の気持ち

 ー本日は宜しくお願いいたします。早速ですが、花盛さんの写真はどれも、愛で溢れているように感じます。元々そういう写真が撮りたいと思っていたのか、それとも紆余曲折あって最終的にそこに辿り着いたのか、どちらでしょうか?

花盛:最終的に辿り着いた感じかな。最初からこういう写真を撮ろうと思っていなかったけれど、自分の強みに気づいてから変わりましたね。

 ーなるほど。その強みとは?

花盛:相手が感じていることが、わかるんです。私、感情がノーマルなんですよ。ぶっとんでない。

「変わってるなぁ、この人」っていうカメラマン、結構いるじゃないですか。でも私は普通なんです。

だからこそ、緊張するのも、みんなの悩みも理解できるんです。

 ー確かに、奇抜な人が撮る写真はそのカラーが現れている気がします。花盛さんが自分の強みに気づいたきっかけは何でしたか?

花盛:多分、『脱いでみた。』を始めてからですね。15年くらいカメラマンをやっているんですけど、悩むことってたくさんあるじゃないですか。これじゃあ同業者に負けるなとか、これじゃあお仕事もらえないな、って。

そういう悩みを持っていた時期、撮影中に女の子たちの悩みやコンプレックスを聞くうちに、私が感じているものと一緒だとふと思ったんです。

私自身コンプレックスもいっぱいあるし、普通に色んなことに悩んできたから、普通なことが強みなんだと思えてきて。

その子たちのそのままを撮るのが得意だと気づいたから、ここを突き詰めていこうと振り切ることができました。

ー被写体に共感できると、表情なども変わってくるものなのでしょうか?

花盛:自分を分かってくれるし心を開いてくれているんだなと分かると、初対面でも少し緊張がほぐれるじゃないですか。

話す内容も相手が気持ちよく話せる内容を探すので、その人らしさがどんどん出てくる状態になっていきますね。

定期的に初心に帰って、成長し続ける

 ー『脱いでみた。』では、素人の方をモデルにして撮影されています。撮影に慣れていない方を選ぶのには、何か理由があるのでしょうか?

花盛:普段の雑誌や広告の撮影って、綺麗なモデルに素敵なスタイリストさんや素敵なヘアメイクさんがいて、お金がかかったロケーションを選ばせてもらえるじゃないですか。だから、誰が撮っても結構うまく撮れちゃうんです。

モデルさんは可愛いし、スタイリングも素敵だし、このロケーションでうまくいかない訳がない。だから、ほとんど力がいらないんです。

もちろん最大限の力を出すし、だからこそ良い写真を撮らないといけないとは思うんですけど。でも、それらが全部ないフラットな状態でも、うまく撮らないといけないと思うんです。

 ーなるほど。

花盛:だからと言ってはなんですが、作品撮りでは普通の女の子を撮るようにしています。
初めて会う、どんな顔かどんな体型かもわからないモデルさんと、そんなにお金がかかっていないロケーション。作品撮りの時は、アシスタントも連れていきません。

 ーおひとりで全部やられるんですね。それはなぜでしょう?

花盛:初心に帰るための時間だからです。やっぱり本業のモデルさんって、どんなところでも可愛く撮れるんですよ。

それに加えてスタイリストさんやロケーションのパワーが加わる。そこに甘えるのは嫌なんです。何もない状態で、どんな人でも絶対に美しく撮ることができる自分でありたい。

誰しもそれぞれの魅力があるのに、その魅力に気づいていない人も多いじゃないですか。それを私の写真を通して気づいてもらって、喜んでもらえる瞬間が私にとっては大切なんです。

 ーめちゃくちゃ格好良いです!初心に帰るための作品撮りということは、クライアントワークでは自分を全面に押し出さないということでしょうか?

花盛:お客様がやりたいことをするのが、カメラマンとして一番大事なことです。

だから、自分がこうしたいというよりは、今回の雑誌はこういう感じだからこうしようと考えて撮って、作品撮りで自分のやりたいことを思いっきりやりますね。

でも、クライアントワークの撮影の時も、合間に自分の味を出してこういうのも撮れるよとちゃんとアピールはしますよ。
「花盛さん、それいらないです」って言われる時も沢山あるんですけどね(笑)。

 ー求められている価値は提供しつつ、自分の欲求にもちゃんと向き合うということですね。

花盛:そうそう。例えば、寄りの写真はいらなかったとしても、寄りたかったら寄って撮ることはあります。

でも、基本的には相手が満足するものを撮ること。これは商業カメラマンとして大事にしていることです。

他にも、雑誌によって異なる味があったりするので、そういうのも汲み取って撮影していますね。

緊張する前に、撮影終了!

 ー花盛さんが、撮られ慣れていない方や初対面の方を撮るときに気を付けていることはありますか?

花盛:とにかく緊張させないこと。それに尽きますね。難しいんですけど、そこが一番気をつけなければいけないところだと思っています。

 ー緊張させない、ですか。具体的に、どのように緊張をほぐしているのでしょう?

花盛:例えば『脱いでみた。』は、基本撮られたことがない人をモデルにしています。裸なんか人に絶対に見せないし、撮影なんてされたことない人ばかり。

でも、私もそうじゃないですか。だから気持ちに寄り添えるんです。緊張するよね、わかるわかる!って思いを伝えながら撮影して、相手が緊張する前に終わるように心がけています。

 ー緊張する前に!?あっという間に終わらせないといけないですね。

花盛:私の撮影、めっちゃ早いですよ(笑)。一人40分と決めているので、部屋に入ったらすぐに脱いでもらいます。
だからこそ、最初から自分のマインドをフルにして接しますね。

 ー花盛さん側から相手に寄り添っていくのでしょうか?

花盛:そうです。まずは、相手の緊張をふき飛ばすために「こんにちはー!」と元気よく入っていきます。

常に会話するようにしていて、相手のことを聞いたり、自分が話したくないようなことを少し話したり。そうすると相手は、自分に心を開いてくれているんだと分かるじゃないですか。

他にも、その子が止まる瞬間が発生しないように、常に動かしています。人って、手をどこに置いたら良いのか分からないと感じた瞬間に緊張するんです。だから、常に喋っているし常に動いていますね。

 ーモデルさんを内面までよく見られているんですね。

花盛:そうですね、すごくよく見ながら撮影しているかもしれません。

撮影の最中に写真も見せてあげて、「こんなに綺麗なんだよ」って伝えてあげています。このひと手間でどんどん表情が変わっていきますね。

インスタに載っている子たちと自分も一緒なんだと思ってもらえたら、そこからは結構自信が出てくる子が多いです。

 ーお話を伺っていると、コミュニケーション能力が非常に高いですよね。元々人との交流が好きだったのでしょうか?

花盛:いえ、元々は私、人見知りなんです。よく意外だと言われますけどね(笑)

普段は全然人とあまり喋りたくないタイプ。美容院も緊張するし、コンビニの店員さんと話したり、電話で公共料金の話をしたりするのもすごく緊張するので苦手です。

 ーそれは意外でした。そうすると、このコミュニケーション能力はどこで身につけられたのでしょう?アシスタント時代ですか?

花盛:アシスタント時代にも教えてもらっていないですね(笑)。相手の気持ちが分かるからかな。

「いま緊張したな」と敏感に感じとることができるから、相手がして欲しいことをしてあげられるのだと思います。直感が強いことを武器にしていますね。

 ー最後に、花盛さんにとって作品撮りとはなんでしょう?

花盛:初心に帰れる場所であり、私の人生になくてはならないものです。私も緊張するし、休みの日にわざわざ知らない人に会って喋りたいという気持ちはないですよ。

でも、みんなが喜んで帰っていってくれるとすごく嬉しいし、私も成長できるんです。例えば普通の仕事帰りに作品撮りをやりたいかと言われたら、そういうことでもないんですよね。体力がまず持たない(笑)。

でも、その瞬間が絶対に必要なんです。人のことを綺麗に撮ってあげて、その人が喜んでくれるのが私の喜び。

その瞬間が人生にとって必要だからやるけど、常にやりたい訳じゃない。

ずっと人のために生きたい訳ではないけれど、その瞬間は必要だと感じているので、これからも撮り続けます。

INTERVIEWEE:花盛 友里(はなもり・ゆり)

1983年、大阪府生まれ。

中学時代から写真の楽しさに目覚め、2009年よりフリーランスとして活動開始。

女性誌や音楽誌、広告などで主にポートレートの撮影を手がける。

2014年に出産を経験し、現在は二児の母として仕事と家庭の両立に奮闘中。同年、自身初の写真集『寝起き女子』(宝島社刊)を発売。

2016年2月には『脱いでみた。』で自身三度目の個展を開くなど、活躍の場を広げている。

■OFFICIAL WEB SITE:http://www.yurihanamori.com/

■Instagram:@yurihanamori 

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この記事を書いた人

1994年生まれ、岐阜県出身。高校時代の友人がきっかけでカメラをはじめる。愛機はNikon D750、決定打はシャッター音。アートやワイン好きが高じて現在はフランスに移住し、最近購入したGRIIIでスナップを中心に撮影している。

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