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別所隆弘さんに学ぶ花火写真③【幻想と現実の間に咲く花を求めて|煙編】 |Creator’s Style Vol.5

MARSH読者のみなさんこんにちは。
今回は「花火写真」の撮影方法第3弾!Nikon Z 8 の公式作例担当の写真家・別所隆弘さんに【花火と煙を一緒に撮影する方法】を教えていただきました。

花火写真の煙の魅力や煙の活かし方、構図の作り方などを詳しく解説しているので、ぜひ最後までご覧ください。

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Creator’s Styleとは…
「だいぶ写真撮影に慣れてきたけど、自分の作風がなかなか出せない」「自分が撮りたいイメージになかなか近づけられない」という悩みを持つ方は、きっと少なくないはず。

そんな読者の悩みを解決するべくスタートしたMARSHの新企画が、Creator’s Style(クリエイターズ・スタイル)。
撮影テクニックや作品表現に関するノウハウを、独自のスタイルを持つクリエイターにレクチャーしていただく、1ランク上のお勉強コンテンツです!
自分の色を出すための、自分の思い描く理想の作品表現に近づくための、とっておきのヒントがたくさん詰まっているので、ぜひ最後までご覧ください。

目次

フォトグラファー・別所隆弘さんについて

まずは今回「花火の写真」について教えてくださる別所隆弘さんについて紹介します。

別所隆弘

写真家、文学研究者、ライター。関西大学社会学部メディア専攻講師。毎日広告デザイン賞最高賞や、National Geographic社主催の世界最大級のフォトコンテストであるNature Photographer of the Year “Aerials” 2位など、国内外での表彰多数。写真と文学という2つの領域を横断しつつ、「その間」の表現を探究している。滋賀、京都を中心とした“Around The Lake”というテーマでの撮影がライフワーク。日経COMEMOで記事執筆中。フォトグラファーとしての知見を活かして、インバウンドや地方創生事業、SNS運用のコンサルタントなどにも関わる。

 

別所隆弘さんの作品

今回のお手本写真

写真①:びわ湖大花火大会

びわ湖大花火大会

写真②:きほく燈籠祭

きほく燈籠祭

写真③:教祖祭PL花火芸術(PL花火大会)

教祖祭PL花火芸術(PL花火大会)

花火と煙を一緒に撮る魅力

ー本来であれば花火写真に煙をできるだけ写したくない人が多いと思うのですが、花火と煙を一緒に撮る魅力を教えてください。

別所さん

僕は風景写真家なので、「その場所で撮った」ということと「その日撮った」ということを大事にしています。この2つが写真に対して唯一性を与えるんです。

煙の形って、実は毎年違うんですよ。この写真(写真①)を見た瞬間、僕は2013年の「びわ湖大花火大会」だってわかるんです。2013年の「びわ湖大花火大会」だってわかる理由は、この同じ場所から撮っていたとしても、この写真に写っている煙が出たのはきっかりこの回だけなんですよ。そうしたら、その煙が出たことによって、この写真がその年唯一そこで見れたものであるという刻印になるじゃないですか。100年後になったとしても、2013年のこの煙の出方が最高だったんだって伝える手段になるじゃないですか。だから煙はその年の花火に固有性を与えるための大きな要素になっていると思うんです。それが煙の魅力ですかね。

あとは単純に立体感が出ますよね。上の写真見てくださいよ。中層に煙があるおかげで、距離感がわかりやすいじゃないですか。サイズ感がわかりやすくなるから「こんな高いところまで花火が来てるんだ」とか、「煙をぶち抜いて花火が高いところまで上がってるんだ」って思えますよね。

ーたしかに、別所さんが撮られる花火の写真はすごく立体感と臨場感がありますよね。それって煙があってこそのものだったんですね。でも、素人からしてみたら「あ〜煙出ちゃった、もう撮れない……」と思ってしまう方が多いような気がします。

別所さん

そこはもう、諦めそうになる心をなんとか奮い立たせるんですよ(笑)。

煙って、左から右に回ったり、正面に回って来たり、風向き次第で来てしまうんですよね。それが続くと、撮影に対する集中力もだんだんと切れてきて、「あぁ、見えねぇ…」って言ってる間に、きれいな花火がその煙の上にドカンと上がったりするんです。
そのときに気が緩んでいると、シャッターチャンスを逃してしまったりとか、レリーズさえ持っていなかったりとか、長い間カメラのボタンを触らずに放置して省電力モードで電源切れていたりとかで、ワタワタしている間に、そのきれいな一発が終わってしまう場合もあって……。
僕も何も見えなくて、ダメだと思いながらシャッターを切ってたら、最後撮れたという経験があるので、悪条件の時は心が萎えがちなんですけど、諦めずにシャッターを切り続けることが大事だと思います。

ーそこまで苦労して撮った写真だからこそ、唯一無二なものになるというのはあるのでしょうね。

別所さん

今回紹介している花火の写真って、いつまでたっても出すことができるじゃないですか。それはやっぱり町とか煙が入っているから、この時これっきりの写真だからだと思うんですよね。もう2度と同じ写真は撮れないっていうのが煙が入るところの良さですね。

花火と煙を一緒に撮る方法(画角、設定、撮影場所、機材など)

ー煙と一緒に撮る場合の撮影に関して、撮影場所は海辺や山など幾つかあると思うんですけど、場所による設定や撮影方法の違いなどはあるのでしょうか?

別所さん

煙の扱い方がちょっとだけ違っていて、山の場合は煙がめっちゃあってもなんとかなる場合が多いんですよ。
仮に風下であったとしても、射出点から距離が大きく離れていて、その上とか横から花火が出てくるパターンが多いので、それに合わせて対応ができるんです。

一方で水辺で撮っているときは、射出点から近い場合が多いので、風下だと全く見えないことがあるんですよね。

なので、どちらかというと煙に対してより寛容になれる、チャレンジできるのは山です。水辺で撮るときは風上を選ぶこともあります。

ーなるほど。水辺の撮影でも風の向きは重要なんですね。

別所さん

あとは、水辺で撮影するときってリフレクションしてほしいから、風自体が止んでてほしいときが多いんですよ。
一番いいのは風速1mくらいで風上とかなんですけど、そんなタイミングはなかなか無いので……。この「きほく燈籠祭」の写真(写真②)はきれいにリフレクションしていますけど、風は横から吹いていて風速1mくらいなんですよ。完璧ですよね。

ーでは海・湖編や山編の撮影方法で解説いただいた点と、何か異なるポイントなどはありますか?

別所さん

煙があればあるほど光量がさらに少なくなるので、そこは気をつけますね。変える余地があれば明るいレンズに変える場合もあります。

山からの撮影の場合は超望遠で撮っているので、間に2倍とか1.4倍のテレコンが入っている場合があるんですよ。テレコンを付ければ光量が落ちるので、そのせいで暗くなってしまうんですよね。
なので、煙やモヤが多いタイミングの時はテレコンを外して、トリミング前提でレンズ直付けにして、明るい方向へ戻すというパターンもあります。

ー煙があることでそんなにも光量が変わってしまうのですね。

別所さん

あとはF値を少し下げます。例えばF8で撮っていたとしたら、F7.1とか5.6とかにする場合もありますよ。でも、まぁ白飛びが怖いんですけどね(笑)。
そこはもう現地の写真家の勘みたいなものを、自分で養うしかないですかね。

ーなかなか判断が難しそうですね。構図で気にされていることはありますか?

別所さん

結局は山からの撮影と同じで立体感を感じられるような構図にしたいんですけど、煙ってじつは撮るまでわからないんですよ。

例えば花火って5秒、10秒シャッターを押しているじゃないですか。そうするとその間に煙って動くんですよね。自分が今見ているものと、写真として写る煙の形って全然違うんですよね。

だから、煙を入れて写真を撮るという場合は、要素が花火、町、煙の3つになりますが、その煙が一番計算できない要素になってくるので、僕も広めに撮ります。

上の「PL花火大会」の写真(写真③)は直前までもっと寄っていたんですけど、「最後ちょっと怖いな」と思って引いて、それでも左が切れてしまいました。

ーこれはトリミングではなくて切れてしまったんですね。

別所さん

僕が普段よく切るので、みんなあえて切ったと思ってくれるんですけど(笑)。

ーそう見えます(笑)。でも切れているからこそ大きさがすごい伝わります。

別所さん

そうなんです。すごく大きく見えるじゃないですか。
この煙もかっこいいですよね。左側に爆発している花火は光量がすごく激しいもので、真下にいると「昼か!」っていうレベルで明るいんですよ。本当に町全体が真っ白になったように見える花火で、右側には怪物みたいな煙が出ていて、これぐらいの煙を一瞬で吐き出すようなラストなんですよね。

ー写真で見るだけでもスケールがよく分かるので、実際にも見てみたくなります……!
では煙と一緒に撮る場合の構図は、広めに撮っておくのが安心ということですね。

別所さん

花火全体に言えることなんですけど、とくに煙の場合は予想できないものが多くなるので、より一層注意深くなります。

花火と煙を一緒に撮る方法
・煙の量に応じてF値を下げる
・立体感を意識しながら、煙が無い場合の撮影よりも、画角を広めにとる

レタッチ

ー最後に、レタッチについて教えていただきたいのですが、花火やリフレクション、町部分は前項で教えていただいた方法と同じでしょうか?

別所さん

煙以外の部分は一緒です。

煙が入ってきた場合にもう1つだけ考えるのは、明瞭度ですね。煙部に明瞭度を当てる場合が多いです。煙の部分にだけレイヤーを追加して、明瞭度を足したり、テクスチャーをプラス20〜30くらい強めにかけたりして煙の立体感や精細感をグワッと出すようにしています。

ー明瞭度やテクスチャーを上げる意図などはありますか?

別所さん

煙をちょっとだけ怪物っぽくしたいからなんですよね。
「PL花火大会」の写真(写真③)も、左下あたりの煙がまるで花火を食うような感じで、ムワッてなっていますよね。生物感というか、生き物みたいな雰囲気にしたいので、煙のところだけゴリゴリゴリっとさせています。

あと、全体にかけてしまうと空間にノイズが乗るので煙の、立体感のある部分だけにします。

ーでは「PL花火大会」の写真(写真③)は右側にはかけていないのでしょうか?

別所さん

はい。かけていないです。左下の部分だけですね。

正解は無いんですよ。煙全体にかけても良かったと思うんですけど、僕はやっぱりその下の部分が、煙の魔物が手でグワってやっているような感じがして、その指みたいな煙の部分を見せたかったんです。

煙部分のレタッチ方法
・明瞭度やテクスチャーを調整して、煙の臨場感をUP!

まとめ(花火写真の撮影方法)

ー今回はありがとうございました!花火の撮影って想像より大変なんだなということが改めて分かったのですが、そこまでの苦労をされてでも花火を撮る理由を教えてください。

別所さん

最近ちょっと思い出したことがあるんです。
地元のお盆の冊子みたいなものが届いたんですけど、関西のお盆に地蔵盆っていうのがあって、地域のみんなで集まるんですね。そのお盆を管轄する町の区画が変わったというお知らせでした。
その地蔵盆って、子どもは大人からお菓子を貰って、最後に小さい花火大会を町ごとにするんですよ。僕、それが子どもの頃に一番好きだったことを思い出して……。

それもあって、「びわ湖大花火大会」を初めて見たときにめちゃくちゃ感動して、僕にとっては幼少期の記憶を探るために撮っているんですよね。あるいは、おそらくそこに戻りたいんでしょうね。
大人になるとそんなに感動することもなくなるじゃないですか。やらなきゃいけない義務みたいなものが積み重なっていく中で、花火を撮っているときだけ、一瞬だけなんかそんなことを考えずに楽しんでいた子どもの頃の喜びにちょっと繋がれるんですよね。

そういう動機がないと写真なんてやってられないと思うんですよ。(現地まで)行かなきゃいけないし、機材重たいし、だけどそうやって写真を撮っているときだけ、打算抜きで喜ぶことができるっていうのがあるから花火(の撮影)をやっちゃうんでしょうね。

ー大変な思いをしてでも撮りたいものがあったり、熱くさせるものがあるって素敵ですね。
あとは、先ほどお話に出てきた「地元に返したい」というのもとても素敵なエピソードでした!
その町に住んでいる方って客観的に地元の花火大会がどれだけ美しいかって、実はあまり知らないんじゃないかと思うので、遠くから撮ることで、改めて地元の花火の魅力に気づけそうですね。

別所さん

それは本当にその通りで、初めて僕がD800を買ったときに感動したのは、比叡山の山の上から撮った自分の町の夜景なんですよね。「僕の住んでいる町ってこんなにきれいやったんや!」っていう。で、夏ってそこに花火が乗っかっているんです。

地元の人はやっぱり現地で見るから、その邪魔はできるだけしたくない、最低限にしたい。何十万人の人が見上げている花火大会を、僕は一歩引いたところから「こんな花火でしたよ」って後でみんなに見せたくて、それはやっぱりそれは花火を地元のものとして成立させたい、返したい想いがあるからだと思います。

花火はいいんですよ、本当に。「自分の町ってこんなすごいことやっていたんだ」って誇りを持てるので。やっぱり僕は地元に行って、「びわ湖大花火大会」があんなきれいなのがうれしいんですよね。風景写真家としてはそこらへんは大事にしたいと思っています。

ー毎年夏になると漠然と「花火見たいな〜」と考えたりしますが、そのときに思い出すものってやっぱり地元の花火大会だったりしますよね。まずは地元の花火大会から挑戦してみるのもいいかもしれませんね!

別所さん

基本的に写真っていうのは、被写体であったり、世界であったり、人間であったり、空間であったりに対して、愛着や愛情があるっていうのを表現する行為だと思うんですけど、僕がたまたま花火とか飛行機とか桜だっただけで、ほかの人には別の何かがあるんじゃないかなと思います。

ー自分の撮りたいものについても考える良い機会となりました。ありがとうございました!

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別所隆弘さんの使用機材一覧

※GOOPASSで在庫があるもののみ掲載しています

レンズ

NIKKOR Z 20mm f/1.8 S

NIKKOR Z 35mm f/1.8 S

NIKKOR Z 100-400mm f/4.5-5.6 VR S

NIKKOR Z 24-200mm f/4-6.3 VR

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この記事を書いた人

東京都出身。大学卒業後、写真専門学校にて写真を学ぶが、中退し編集者の道へ進む。現在は独立してフリーエディターとして活躍中。韓国が好きすぎるあまり移住し、日本と行き来する生活を実行中。

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