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シャッターを切る前の話【第9回:ライカM11を買ったら旅の(沼の)終わりかと思ったら、まだ始まってもいなかった件(多分Vol1)】

M11を買った。

大事なことだからもう一度言う、Leica M11を買った。勢いで買った。定価123万円。わかっている、あなたの言いたいことはわかってる。私もそう思う、アホの極みであると。勢いで買うカメラではない。それは言わば至高であり究極。海原雄山と山岡士郎が共に目指し、ついには和解を果たすであろう約束された場所。カメラの沼の深奥にして最果て。ゴダイゴの歌うあれである。

「そこに行けば どんな夢も かなうというよ 誰もみな行きたがるが 遥かな世界(ガンダーラ/作詞:山上路夫、奈良橋陽子)」

その国の名はガンダーラ、どこかにあるユートピア!それが俺の手元に来てしまった。ガンダーラ的究極のカメラ、M型ライカの新型。勢いで買ってしまった、言い訳ができない。

「どうしたら行けるのだろう、教えて欲しい〜♪」

ゴダイゴよ、簡単に行けたよ、ガンダーラ。お金の代わりになる魔法のカード持って、ヨドバシとかカメラのキタムラ行ったら、そこがガンダーラだった。ゴダイゴ曰く、今や「どんな夢も叶う」はずだ。だってライカこそフォトグラファーの約束された大地ガンダーラ、至高のカメラですもの。

ところがだ。買った途端にコロナに罹った。「どんな夢」どころか、死の淵を彷徨う羽目になった。カメラ沼の果てに見たのは、黄泉の国とか笑えない。全然笑えない。

で、ようやくコロナから回復したあたりで、ふと気づいたのだ。

「そういや、レンズねえわ」

ライカ本体買うことに脳のメモリーの全部が使われてしまって、レンズ買うことをすっかり忘れていた。カメラ沼の果てに来たんだから、レンズなんてちょちょいのちょいと決まるだろうと思ったら、これが意外と困った。ライカのレンジファインダーって、どのレンズつけても基本見え方変わんないの。オートフォーカスなんて洒落たものは、この質実剛健と虚弱繊細の間に生まれた究極のカメラであるデジタルM型ライカには存在していない。マニュアルフォーカスのみ。

そうなると、ファインダー覗いた時の画角と、つけているレンズとの像が、実はそのファインダー内で一致しない。もちろんデジタルライカは、一応「ブライトフレーム」と言うのをファインダー内に表示してくれるので、

「あなたが今つけてるレンズでシャッターを切ったら、ここまで写りますよー」

って目安は、ある程度示してくれる。でも、やはりと言うかなんというか、M10Rを使ってる時に気づいのだけれど、レンズが違うと、異様なほどに撮影体験が変わるのがレンジファインダーというやつだ。自分にとってのファーストMマウントレンズを買うにあたって、適当に選んだら多分、かなり後悔しそうな予感はしている。何せまあ、レンズも100万ですからな。いやー、困ったな。どうしよう、コロナの後遺症でぼんやりした頭で考えている最中に、ガンダーラからの啓示が訪れた。

「汝、GOOPASSでレンズを借りるがよい、その後に自分のレンズを買うべし」

それだ!さすが、カメラ世界のガンダーラにして至高&究極のカメラ。持ち手の気持ちを察してくれるじゃないか。というわけで、MARSHに企画を持ち込んで記事にしたのがこれ。GOOPASSでレンズ借りまくって、「ヴェッショのファーストM型を選ぼう!」。そしてその過程を記事にするのだ。役得役得。で、今回は3本のレンズで近場を撮ってみた。自分にしっくりくる究極のレンズはなんなのか。まずはアポズミ70mm。いきなり至高オブ究極。沼の王が出てきた。エルデンリングとかで一番深いとこにいるやつだ。APOを前にすると、すべての被写体がひれ伏すという。さあ、その写りを見せてもらおうか!

(1)Leica(ライカ) APO-SUMMICRON-M 75 mm f/2 ASPH

はい、やばい。この微妙な色の空ばっかりをあえて選んだのは、レンズの色の再現性を見てみたかったのだけど、これ、僕がみた空そのまま。もちのろん、ボディの色再現性の高さと諧調の良さが際立っているということなんだろうけど、そういうことじゃねえんだよ。そうじゃなくってさ、空見て、ファインダー覗いてシャッター切るやん。今まで小さい黒いファインダー内に見えてた風景が、背面液晶にパッと出てきた時、まるでそこを「切り取った」みたいに絵になる快感が凄まじい。70mmって、レンジファインダーでも特に「切り取る感」が強くって、思ったように構図化するのも一苦労だけど、だからこそ「その場所をじっと見た」という感覚が強くなるらしい。70mm、すげえ!!やべえ、いきなりガンダーラかも。

まあいきなり決めるの良くない。とりあえず35も見とこ。35という数字は、ライカM型にとっては、神聖不可侵な数字の一つ。色々蘊蓄あるだろうけど、とりあえず撮ってみようや!な!

(2)Leica(ライカ) SUMMILUX-M 35mm F/1.4 ASPH


あかん、やばい。なんでも撮れる。M10RM11の作例が混在してるけど、一番違和感なく両ボディ共に完璧にフィットしたのは35mm。写りはバッチバチにいいけど、それ以上にいいのは、M型との一体感を楽しめる点。ファインダーを覗いた時の像の視野と35mmのブライトフレームで示される視野とが、自然と一体化するので、「覗く、構図決める、シャッター切る、背面液晶に出てくる、イヤッホゥ」という流れが極めて自然で、M型との相性バッチリに思えてしまう魔法が35mmにはある。ファインダー覗いてみ?飛ぶぞ。
それに加えて、まー写り良いわ。写り良いと「写り良いっすね」しか言えなくなるのなんでなん?

あー、なんかもうガンダーラ決まったかも、35mmかも。とはいえ、ガンダーラまでの旅路、もうちょっと歩いてみることにする。今回のラストは、もう一つの神聖不可侵、50mm。いこか。

(3)Leica(ライカ) SUMMICRON-M 50mm F/2

チョ、マテヨ!これエグくねえ!?やっばい、めちゃくちゃ写り良い。ライカのレンズってよく「何十年も基本的には光学設計同じ」とかなんかそんなことが言われがちな、とにかくまあ、何十年も愛され続けてるレンズが多いんだけど、その象徴がまさにズミクロン50mmらしい。ワイはその歴史を今んところ全く知らんけど、使ってびっくりした。なんね?この像の立ち方は!二次元なのに、三次元に見えちゃうような光の捉え方。50mmって視野に近い見え方で、ぶっちゃけ「平凡な画角」のはずなのに、めちゃくちゃ平面的に撮っても、近景から遠景に、なだらかに像が立っていく。これほどまでに美しく見える理由はなんなの?わかんない、ガンダーラが遠くなってしまった!

逆光にした時にハイライトが少し滲んで、まるで人間の記憶がその瞬間に褪せたことを記録しているかのような儚い捉え方しているところも、なんか「嗚呼、小さきもの、それは人間」とか意味わからんこと呟きたくなる美しさ。これ、やばいやん!!!

(4)まとめ
てことで、今回70、50、35と、足掛け1年使い倒したM型レンズを、いざまとめて見直してみたけど、まだ「最初の一本」が決められなさそう、、、って結論になっちゃった、てへ。てことで、企画継続。まだGOOPASSには、M型レンズが結構ラインナップに入ってるんすわ。これを使い切らないうちは、最初の一本なんて買えないでしょ?

っていうような使い方ってね、やっぱGOOPASSのすごいとこなんすよ。とりあえずパスさえ契約しちゃえば、レンズを何本でも交換しながら、じっくりと試してみることができる。特に一本何十万もするレンズは、そうそう簡単に買えるもんでもない。こういう時こそ、経費に落とせるサブスクでひたすら自分に合うレンズを追求できるのがGOOPASSの強み。まさに「沼人」のためのサービスだなあという気がする。

ちなみにMARSHは英語の沼。この会社、フォトグラファーを沼に突き落とすのが本当に大好きらしい。ガンダーラは果てしなく遠いというのは、やっぱりゴダイゴが言う通りだった。あばばば。

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この記事を書いた人

フォトグラファー、文学研究者、ライター。関西大学社会学部メディア専攻講師。毎日広告デザイン賞最高賞や、National Geographic社主催の世界最大級のフォトコンテストであるNature Photographer of the Year “Aerials” 2位など、国内外での表彰多数。写真と文学という2つの領域を横断しつつ、「その間」の表現を探究している。滋賀、京都を中心とした”Around The Lake”というテーマでの撮影がライフワーク。日経COMEMOで記事執筆中。フォトグラファーとしての知見を活かして、インバウンドや地方創生事業、SNS運用のコンサルタントなどにも関わる。

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