カメラを愛する皆さん、ごきげんいかがでしょうか。
ミラーレス全盛の今、あえて大きく重いレフ機を使うメリットは日に日に少なくなっているもののPENTAX K-1 Mark IIの頭頂部を絞った、いかにも一眼レフ!っていう佇まいは存在感のある道具を手にしたい向きには最高なんじゃないかなと思います。
今月はそんなK-1 Mark IIと湘南へ。腰越からのんびり稲村ヶ崎まで歩き撮りです。後半のポートレートはアイドルグループ・CALL MY NAMEの美郷まりあさんに写真モデルをお願いし、広尾へ出かけました。
今回選んだカメラ:PENTAX K-1 Mark II

ズッシリ。気軽に出かけるには小型軽量のミラーレスが向いているけれど、カメラの存在を意識して撮影と向き合いたい時にはこのズッシリがフィットします。レンズはHD PENTAX-FA 43mmF1.9 LimitedとHD PENTAX-FA 77mmF1.8 Limitedの2本。高品位な質感と描写性で定評ある単焦点FA Limitedレンズを選びました。
PENTAX K-1 Mark IIとは

私がカメラを始めた70年代中頃はPENTAXはまだ「アサヒペンタックス」で、アサペンなんて略して呼ばれることもありました。会社も旭光学工業でしたから。ニコン、キヤノン、そしてミノルタが今でいうフラッグシップ、「最高級機」をラインアップする中でペンタックスもK2(モータードライブに対応したK2DMDに発展)という高級機はあったものの、グレード的にはニコン、キヤノン、Xシリーズで猛追するミノルタのすぐ下あたりのラインに、OMシリーズを擁するオリンパスとともに位置するイメージがありました。ニコンF2やキヤノンF-1、ミノルタX-1がシャッター最高速1/2000秒で当時プロ機の条件ともいわれたファインダー交換機能を有していたのに対し、K2はシャッター最高速1/1000秒止まりで一般的なファインダー固定のカメラだったので、わかりやすい線引きとなっていたのです。

ただし、それは35ミリ判でのお話。ペンタックスにはプロ写真家やハイアマチュアに愛用されるアサヒペンタックス6×7(後のペンタックス67、通称バケペン)という中判の王様のようなカメラが圧倒的な存在感を放っていました。さて、35ミリ判では庶民派のイメージが色濃かったペンタックスが満を持して発表した最高級35ミリ一眼レフが1980年登場のLX。旭光学創立60周年を記念し、国産初の一眼レフ開発当時から蓄積したノウハウが結集した渾身の1台でした。ファインダー交換式としたことに加え、防塵防滴など随所に工夫が凝らされたLXは今日でもフィルムカメラ愛用者垂涎のフラッグシップとして中古市場で根強い人気を保っています。
デジタル時代のフルサイズ一眼レフのフラッグシップという意味で、私はそんな系譜の上にPENTAX K-1 Mark IIを捉えています。
リリースは2018年4月。その2年前に登場したフルサイズのフラッグシップK-1をブラッシュアップしたモデルです。当初はK-1を有償で最新のK-1 Mark II相当にするアップグレードサービス(現在は終了)も提供され、K-1ユーザーだった私はユーザーフレンドリーな対応にペンタックスらしさを感じ嬉しくなったものです。
PENTAX K-1 Mark IIの魅力
ペンタプリズムのおさまった秘密の三角頭
頭頂部のボリュームが三角形に絞られボディの肩が高いPENTAX K-1 Mark IIのフォルムは、LXではなく67を彷彿とさせます。35ミリ判一眼レフをそのまま大きくしたような67はバケペンと呼ばれるほどインパクトのあるデザインでしたが、それを今度は35ミリフルサイズに縮小したかのような面白さを感じます。

一眼レフであるPENTAX K-1 Mark IIの三角形のペンタ部には、5角柱形のペンタプリズムが内蔵されています。レンズを通った光はミラーで反射され、ペンタプリズムによってさらに何度か反射されて接眼レンズへと導かれます。それによって正立正像のファインダー像が得られるのです。

世界初のペンタプリズム搭載量産型一眼レフは1948年当時東ドイツにあったツァイス・イコン製造のコンタックスSですが、ペンタックスは1957年に発売したアサヒペンタックス(通称AP)で初めてクイックリターンミラーとペンタプリズムの両方を搭載し、一眼レフの実用性を飛躍的に高めました。
フラッグシップらしい精緻なメカニズム

前モデルK-1が登場した際、話題になった背面モニターのメカニズム。4本のステーによって光軸上でモニターの向きを自在に変えられます。この凝った意匠はそのままPENTAX K-1 Mark IIに継承されました。昭和生まれの私としては、国際救助隊の活躍を描く英国の往年の特撮SF人形劇『サンダーバード』に登場するサンダーバード2号の伸縮式着陸脚を連想しました。連想しない方、すみません。

上級機らしく安心感のあるデュアルスロットを搭載。記録方式として順次、複製、RAW/JPEG分離、画像コピーなどが選べます。使用できるメディアはSD、SDHC、SDXCメモリーカード(SDHC、SDXCメモリーカードはUHS-I規格に対応)。

これもまたK-1から継承された機能、スマートファンクション。ボディ上面右手側の2つのダイヤル操作で撮影に関する機能をスムーズに選択、設定できます。機動性を高めます。

今回選んだLimitedレンズには赤のアクセントカラーが入っていることから、ストラップには標準同梱品のモノトーンのO-ST162ではなく、KFやかつてK70にも同梱された赤いラインの入ったO-ST132を装着。バッグも中が赤色のもの、ブロアもノズル部分が赤のものを選びました。
PENTAX K-1 Mark IIの作例写真(ストリートスナップ)


江ノ電の腰越駅からほど近い路地裏にある古民家カフェ。コーヒーが美味しいお店なのですがカフェインをドクターストップされているため、りんごジュースを楽しみました。50mmよりちょっと広い43mmは周囲の雰囲気を写し込むのに使いやすい。
クラシカルな外観のレフ機はこのお店にもぴったり。撮影前のたゆたうような気持ちに寄り添ってくれました。

小動岬を七里ヶ浜に抜けると春先の青い空が待っていました。レフ機はバッテリー持ちが良く、長時間のお散歩撮影ものんびり楽しめますね。バッテリーの余裕は気持ちの余裕。

作例なので色やコントラストはいじっていませんが、車のナンバー部分だけモザイク加工しています。色ノリがいいイメージのあるペンタックスですが、 K-1 Mark IIに関してはむしろ忠実な色再現ではないかと感じました。


K-1から引き継いだ35mmフルサイズ有効3640万画素のCMOSセンサーと画像エンジン「PRIME IV」にプラスし、ノイズ低減と解像感向上、および高感度での色再現の向上を図る「アクセラレーターユニット」が新搭載。公式サイトでは「すべての感度領域で記憶色に近い、人に好ましい色と滑らかな階調を再現すること」と謳われていますね。

77mmはレンズフード内蔵です。従来機で感じたAF性能への不満はかなり解消されてきたものの、ミラーレスの吸い付くようなピントに慣れてしまった身には一眼レフという時点で迅速なピント合わせには難儀しがちです。もっとも、機材は適材適所。このボディにこのレンズの組み合わせなら、ゆったりしたリズムで撮影を楽しむのが良きでしょう。

色がモノトーンに抜けていく時間帯の七里ヶ浜が好きです。昭和の昔ダンサーになる前、帝産オートでバスガイドをしていた亡きオフクロが、七里のコースに入れてもらうのが好きだと言っていました。


134沿いのベンチに座って海を眺めながら休憩。腰越から稲村まで歩いたんですが、途中で疲れてしまって。たいした距離じゃないはずなのに……。実はこの9日後、夜中に救急車で搬送、緊急入院してしまった。

この辺で134を離れ、稲村ヶ崎駅へと続く坂をのぼります。腰越のカフェを出てから2時間、200枚ぐらい撮ったでしょうか。数カットはモニターを使って撮影したり、ところどころ撮影結果を確認したりしたのですが、バッテリー表示は1割も減っていませんでした。

作例写真というジャンルを見下すつもりではなく(むしろ難しい)、“作例”って語感から私はどことなく事務的というか冷たい響きを感じてしまうんです。言葉って恐ろしくて、作例って銘打つと見る人たちも「あ、作例なのね」ってところから入ってしまうでしょう。でも私的には、学生時代から撮り続けている湘南をいつものように撮っているつもりです。カメラの話を交えながら、ですが。解説っぽくなり過ぎると、連載のコンセプト「カメラを日常のシーンにデザインする」から離れて行くんじゃないかと心配なのです。このカメラ使ってみたいと思って借りる人も、作例を撮りたいわけではないでしょうから。

バッテリーとSDカードを含めればボディだけでも約1010gと重量級のPENTAX K-1 Mark IIですが、剛性感のある心強い印象です。個人差あるでしょうが、撮りながら歩いてもそれほど重いという感じはしませんでした。ズッシリ感のあるカメラもいいものですね。
PENTAX K-1 Mark IIの作例写真(ポートレート)

ハイライトからシャドーまでのグラデーションも滑らかで、ペンタックスのFA Limitedシリーズはマテリアルとしての質感も描写性も申し分ないレンズです。今回使った43mm、77mm以外に31mm F1.8 Limitedと、3本の単焦点がラインアップされていて、この3本があれば日常的な撮影はほとんどカバーできるでしょう。

一眼レフのシャッター音はガラス越しでも届くような気がして、人物撮影にはいいものですね。人物を撮るとき自分またはモデルさんに無関係な場所では撮りたくなくて。今回選んだ広尾界隈は90年代に11年間ほど住んだ場所です。この赤い電話ボックスは当時……あったかどうかよく覚えていないのですが。

写真モデルをお願いしたのはアイドルグループ・CALL MY NAMEの美郷まりあさん。@Misato_CMN
美郷さんの写真をご覧になりたい方は下記noteに続きがあります。
https://note.com/kojishiwa/n/nc2d1ef26fd8b
PENTAX K-1 Mark IIと過ごして
今月は途中で緊急入院するアクシデントがありましたが、原稿もほぼ出来上がっていたのが不幸中の幸い。人生いつ何が起きるかわかりません。
そんな中、こじつけがましいかもしれませんがリアルにいいなと思ったのが、PENTAX K-1 Mark IIのタフで頼もしい存在感です。このところ小型軽量のカメラを多用していたので、このズッシリしたモノとしての納得感はこれはこれでいいものだなあ、と思いました。ダイヤルやカードスロットの蓋を開閉する時の剛性感が、小型軽量機だと不安を感じる場合もあるのですが、PENTAX K-1 Mark IIにはそんな頼りなさは微塵もないのです。
「カメラなんて何でもいい」という言い方があります。現代のカメラは性能的にも十分ですし、確かに写真表現の本質にカメラの種類はさほど影響をおよぼさないでしょう。
しかしカメラを日常にデザインすること、それによって写真生活をより快適に送ること、そういった観点からすればむしろカメラにこだわりたいと思います。「服は着れれば何でもいい」。裸でなければたしかにいいかもしれません。でも服はなりたい自分にさせてくれるし、そのときの気分や目的によって変えることが大切だったり楽しかったりします。ある意味、カメラはファッションです。ファッションは生活を豊かに彩ります。私はとても大事なことだと感じているのです。
救急車で搬送され、病院に到着してからストレッチャーのまま外を移動しました。星空が見えました。そのとき、これで人生が終わったら最後に見ているこの景色こそが自分にとって「写真」ということなんだろうな、と感じました。フィルムでもなく、データでもなく。
これからも命ある限りカメラのある生活を大切にしていきたい、そう思います。
今回使用したカメラ・レンズ
PENTAX K-1 Mark II

HD PENTAX-FA 43mmF1.9 Limited

HD PENTAX-FA 77mmF1.8 Limited





