その日のことを、人はどのように解釈するでしょう。
わたし、あるいはわたしの暮らすこの田舎町が主人公の、観覧車みたいにゆっくりと回りまわる、とある冬の日のお話。

屋根の雪が地面にどさっと落ちた拍子に、この町は目を覚まします。そしてわたしも。
ベッドから起き上がったころにはもう、時計の針はピースサインをしていました。
わたしにとっては全然ピースではありません。一日の半分を無駄にした気分です。
寝ぐせをかき分けて、1階のリビングへ。起きるのが遅いわたしに、お母さんはぐちぐち文句を言いつつも、トーストとコーヒーとヨーグルトを用意してくれました。母は偉大です。


「ありあ、財布とってくれ」
玄関から、お父さんの声がします。
ただでさえ寒いのに、玄関なんて行きたくないよ、という思いを「えー」という一言に込めて、仕方なく玄関へ向かいました。
どうやら、町内会の会合に出かけるらしいです。会合という名の、飲み会ですが。
「夜ご飯はいらないから。あ、でもみそ汁とかあると嬉しいなあ」
「なんじゃそりゃ」
家族ではお馴染みのくだらない会話をしながら、ヨレヨレの財布を渡しました。
今どき町内会の飲み会なんて、何が楽しいんだか。そんなのなくったって、生きていけるのに。
わたしの心のつぶやきは、どうやら表情に出ていたようです。
「ありあもこの町にいたら、いつかはそういうのに参加するんだからな」
そう言ってお父さんは、スキーをする時に使うようなゴツゴツの分厚い靴を履いて、集会所へ出かけていきました。
「ジーパンにその靴は少しダサいけど、まあ、酔っ払って転んで怪我されるよりは、マシかも」
ため息混じりにそう言って、わたしはお父さんを見送ります。

「コーヒー冷めちゃったし、温めなおそうかな」
誰もいなくなった家で、ぽつりぽつり、そんなひとりごとを。
田舎町、特に北国にある田舎町のコーヒーは、冷めるのが早いです。
でも、もう一度温めようと電子レンジでピッとボタンを押して、ぐるぐる電子レンジの中で回っているカップを眺める時間は、とても好きだったり。

ブランチを終えたわたしは、行きつけの喫茶店で読書をすることにしました。
老夫婦がふたりで営む、小さな、秘密基地みたいな喫茶店です。
わたしのお父さんとお母さんが高校生だった頃、ここでデートしたのだとかなんとか。

「マスターこんにちは、今日も寒いですね」
北国の田舎町の挨拶は、だいたい天気の話です。
ハムトーストとブレンドコーヒーを注文して、奥の席に腰掛けます。
わたしのお気に入りの席は、今日は先客がいました。
晴れている時には陽がポカポカ差し込んで天然の暖房となってくれる席なのですが、残念、でも仕方がありません。





