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センチメンタルなひとり旅 #2

2021年12月末、新しい年に向け目まぐるしく時間が過ぎていく。

私はまた写真家アラーキーとその奥様である荒木陽子さんの愛の軌跡を辿るため、陽子さんの著書「愛情生活」を片手に京都へと向かった。
(この連載の細かな企画内容については#1をご覧になっていただけますと幸いです。)

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前々から京都へ行こうと、なんとなくではあるが構想してスケジュールを空けていた旅ではあったけれど、実際本当に行くか直前まで決心していなかった。
交通手段はもちろん、泊まるところも決めていなかった。
旅行というとお金もかかるしどうしようか、このまま家で大人しくしていようか。
いやいや、悩むぐらいなら行ってみよう、迷う理由がお金だけならちっぽけだ。と、自分に言い聞かせた。

思い立った時の私は早い。
化粧もしないまま、とりあえず新幹線に乗れる駅へと向かう。駅に着いて一番早く出発する新幹線のチケットを買った。
今回は年末であったり急な思いつきだったのもあり、カメラは自前のPENTAX 67Ⅱを持っていくことにした。

その日、あいにく新幹線は大雪の影響で、京都まで2時間近く遅延していた。

こういったどうしようもない待ち時間は嫌いではない。むしろ好きだ。

病院や空港で、その場からあまり動く訳にもいかないけれどなにか工夫して時間を過ごすことが好きだ。どこか遠い目的地へ鈍行で向かうことも良い。
待ち合わせに相手が数十分、もしくは数時間遅れたとしても別に怒らない自信がある。
本を読んだりスマホで映画を観たり、その街を散歩していたらあっという間に時間が過ぎていく。

自然ばかりは仕方がないから、その新幹線に乗り西へと向かう。
その日はもう夕方になってしまい、大阪へ泊まって次の日の朝に京都へ向かうことにした。
新幹線が遅れてくれたおかげで、車内でゆっくりと目的地を決め、今夜泊まるホテルまで予約することができた。

朝、京都の四条河原町へ着く。地下鉄の出口をでて地上へあがるとすぐ鴨川が望める。
早速1枚撮ろうとファインダーを覗くと、真っ暗でなにも見えない。
「旅の始まりでさっそく壊れたか?」と焦っていると、長時間シャッター用のファインダーカバーが閉まっているだけだった。

まず初めの目的地、築地という喫茶店へと向かう。この連載、2話連続でコーヒーショップになってしまった。
京都の旅は1杯のコーヒーを飲むことから始まるとおっしゃっていた荒木ご夫妻、そしてここは陽子さんが好きだという喫茶店だ。

京都らしい、歴史を感じさせる趣のある外観。

早起きをしたので少しまだ眠く、アイスコーヒーを飲みたくなったけれどせっかくなので名物のウインナーコーヒーを注文。
まわりを見渡すとケーキを食べている人が多く、それが陶器のように美しかった。
食事の為にコーヒーだけを注文したけれど、今度来るときはお腹を空かせておいてムースケーキを絶対に注文したい。

普段はブラックコーヒーばかりを飲むけれど、添えられていた角砂糖があまりにも可愛らしくて、1つ溶かしてみた。
苦味も残りつつ、甘さがプラスされてとても美味しかった。そりゃそうか。

店内の音楽や照明、家具などどれもとても綺麗だった。
もし壊れてしまったら同じものはきっと手に入らないだろう。修理したりして、長く大切に扱っているのがわかる。
喫茶店やレトロブームの影響もあってか、思っていたよりも若い人が多く来店していた。
少し騒がしさもあるけれど、こうして若い世代へと良いお店が引き継がれていくことは素敵なことだと思う。

ふと、伝票に目を遣る。
店名がきちんと印刷されている伝票っていいよな、と思う。
文房具屋さんなどでどこのお店でも使えるような定型の伝票なんていくらでも売っているし、なんならただの白紙でも十分ではある。
それでも手間とお金をかけて店名を入れてデザインされた伝票を使うというこだわりがあるのはかっこいいなと思う。店名の入ったコップや紙ナプキンをみたときもそう思う。

昔、よく日本のレトロワンピースばかりを着ていたころ、行きつけであった古着屋さんの店員さんに「どうしてこの時代のワンピースは珍しいボタンが使われているか知ってる?」と聞かれたことがある。
当然知らなかったし、なんなら考えたことさえもなかった。
今は服のデザインに合わせて出来合いの既製品であるボタンの中からその服に合うものを探して選ぶけれど、昔は服のデザインに合わせてボタンもわざわざ作っていたからだそうだ。

店内は相変わらず混み合っている。

荒木ご夫妻はここでコーヒーを飲みながら、これからの旅のプランを話し合ったりしていたのだろうか。
長居してしまわぬようコーヒーを飲み干し、私も次の目的地へとその場をあとにした。

著者紹介:髙木 美佑(たかき・みゆ)

1991年生まれ、東京都在住。 日本大学芸術学部写真学科卒業。セルフポートレートや 自己の体験を中心に作品制作を行う。
2020年12月に初の作品集『きっと誰も好きじゃない。』を刊行。

■WEB:https://www.takakimiyu.com/

■Instagram:@miyu.takaki

■Twitter:@2h35m

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この記事を書いた人

1991年生まれ、東京都在住。 日本大学芸術学部写真学科卒業。セルフポートレートや 自己の体験を中心に作品制作を行う。

2020年12月に初の作品集『きっと誰も好きじゃない。』を刊行。