写真家・田中雅美さん解説!野鳥の撮り方Vol.2「極寒地・寒冷地で撮影するには~カナダ~編」

(編集:GOOPASS ANIMAL MAGAZINE編集部)
「思うように野鳥写真が撮れない」「これから野鳥撮影にも挑戦してみたいけれど、どんな機材を選んだら良いの?」という方も多いのでは?
そこで、FUJIFILMのX-ProphotographerやNHKのネイチャーカメラマンなども務める写真家・田中雅美さんに野鳥の撮影方法やコツをうかがいました。
今回は、カナダでの撮影した写真を中心に、【寒冷地・極寒地での撮影のポイント】について、解説いただいています。また、田中さんの記事では、毎回テーマに沿った撮影のコツや愛用機材を解説いただきます。
カナダに暮らす生き物たち
まずは、カナダに暮らす生き物たちを紹介します。日本では見られないカラフトフクロウやハイイロカケス、バッファローなど、魅力的な生き物たちがたくさん暮らしています。
カラフトフクロウ

北極圏側に行くと、王様と言われているのがこの『カラフトフクロウ』。成鳥になると、止まっている時の体高が80センチ以上のものもいるほど、大きな鳥です。
さらに、翼を広げれば2メートル級。主に、ユーラシア北部や北アメリカに生息しています。
カラフトフクロウの魅力は、なんといってもその迫力。こっちを見てくると、撮る側は圧倒されます。まさに、王様級ですね。

シャッターを押すのを一瞬、ひるみました…
北極圏には他にもフクロウはいますが、やっぱりどうしても目指すのは、カラフトフクロウです。
ハクトウワシ

続いては、アメリカの国鳥『ハクトウワシ』。ハクトウワシは、冬の間はみんな南下(カナダの南側へ移動)しています。
この写真はカナダの北側で撮っていますが、北側にいるのは夏や秋。夏や秋以外の季節は、南側に行ったほうが撮りやすいです。
成鳥

幼鳥

ハクトウワシは、成長より幼鳥の方がサイズが大きのが特徴です。親になるとどんどん、どんどん締まってきます。飛んでいる姿が優雅でとても魅力的な鳥です。
オナガフクロウ

日本では『オナガフクロウ』、現地ではノーザンホークオウル(Northern Hawk Owl)と呼ばれる、結構メジャーなフクロウです。
この子が止まっているのは、森林火災で全滅してしまったカナダの森。ニュースなどで見たことがある人も多いかと思いますが、カナダでは、とにかく凄まじい規模の森林火災が起こるんです。
そして、このオナガフクロウは、火が消えた山の中で、枯れた枝に止まって、地面にいる獲物を狙っていました。地面では、木々が新しく芽吹いていて、そういうものにやって来る小動物を狙って、次の年からずっと、こうやって待っているんです。
森林火災が起こると、日本の半分ぐらいの面積が跡形もなく消えていきます。本当に大変なんですが、このオナガフクロウを見ると生き物って、たくましいなと感じますね。
この子は、この厳しい森林火災の中でも生きている強いフクロウなので、結構好きな子です。この写真は、そういう環境下で暮らしているのが分かるように撮った1枚です。
ワタリガラス

続いては、『ワタリガラス』という大型のカラスです。日本にいる大きなカラスに比べて、1.5倍ほどの大きさがあります。毎年日本へは北海道に迷鳥としてやってきます。
ただ、日本には基本的にいないカラスです。
この時は、夫婦で仲良くずっと戯れていたので撮りました。止まっているのは、実は教会なんですよ。

なんともドラマチック!?
ハイイロチュウヒ

こちらはメスの『ハイイロチュウヒ』です。ハイイロチュウヒは日本でも撮れる場所があり、一生懸命狙っている方も多いかと思います。
この子たちは動きがとても速いので、追いながら高速シャッターで連写するのが鉄則です。
上の写真はバンクーバーですが、下の写真はカナダのバウンダリーベイ(Boundary Bay)で撮影しました。

野鳥撮影では有名で、世界中から好きな人が来るようなおすすめスポットです。
後ろに写っているのがアメリカの山で、マウントベーカー(Mount Baker)。アメリカが見える、カナダとアメリカの国境に近い場所です。

ここはハイイロチュウヒだとか猛禽類、コミミズクなどが、ずっといるスポット。当たり年は、ここにシロフクロウが20羽ぐらいいることもあります。

毎年撮る撮影ポイント!
シロフクロウがたくさんいる時に行った方はぜひ教えてください(笑)。
シロフクロウはタイミングがありますが、ここに行くと必ず、ハイイロチュウヒのオスメス、それからコミミズク、それからハクトウワシのコロニーなどに出会えます。
バウンダリーベイは遊歩道が続いており、それを歩きながら、のんびり撮れる場所です。大変素敵な場所なので、機会があればぜひ行ってみてください。
ハイイロカケス

『ハイイロカケス』もカナダではポピュラーな鳥。グレイジェイ(Gray jay)、通称グレイと呼ばれています。アメリカのアラスカ地方だと、グレイがいなくてブルー。通称ブルージェイ(Blue jay)と呼ばれています。
ブルージェイ(アラスカ/アメリカ)

日本の本州にいるのはカケスですね。ちょっとブルーが入っていて、綺麗です。北米では、ジェイと呼び、名前に色はつきません。
カケス(日本)

そして、奄美大島に生息しているのが『ルリカケス』。実はルリカケスは英語でアマミジェイ(Amami jay)って言うんです。素敵ですよね。
ルリカケスは世界で奄美大島にしかいないんです。亜種すらいません。
ルリカケスは本当に存在感が全然違いましたね。第3回連載でガッツリお見せする予定なので、写真はそれまでお楽しみに…。
ハゴロモカラス

私が大好きな鳥の1つ『ハゴロモガラス』。カラスと名がつくので人気があまりないのですが、飛んだ姿はとても綺麗です。これほど綺麗な鳥はいないんじゃないと思うほど。本当に羽衣のようです。
天使の羽衣のような赤とオレンジ色をしているんです。
ただ、翼を広げた姿をまだ撮れたことがないんです。とにかく動きが速い。ある程度チャンスさえもらえればいいんですけど、チャンスをなかなかもらえなくて…。
広げた画はインターネット上にあるので、それを見てください。また、この子が1番素敵なのは色や柄ではなく、実は鳴き声。

「うわあ、すごーい」って言うと思う
YouTubeなどに投稿されているので、ぜひ鳴き声も1度、聞いてみてください。忘れられないっていうのが、このハゴロモガラスという子です。
ハクトウワシ

この写真は、『ハクトウワシのコロニー』。多いと20~30羽ほどで1つの木を使ったりもします。
この木では1つの大きな巣を1つがい、この中の誰かが使っているようでした。直径1m50cmはある大きな巣でした。バンクーバーでは、このようなコロニーは民家の横などに、普通にあるんです。
ハクトウワシが越冬して繁殖するのはカナダの南側で、この写真はバンクーバーで撮影しています。
撮影をしているすぐ横で、バンクーバー空港に飛行機が降りてくるのが見えます。空港からおまけでこんな写真が撮れてしまうのがバンクーバーの魅力ですね。

リンクス

せっかくなので、動物もご紹介します。
ずっと追い求めていますが、そう簡単に追わせてくれないのがリンクス。カナダの北極圏側には結構生息しています。
リンクスの大好物がウサギです。ウサギがたくさん繁殖している場所を見つけて、夜、偵察に行くと、この子たちが出てきたりします。うさぎがいない場所には絶対にいないです。
北極圏側も今は、ウサギがどんどん減っており、それにしたがってリンクスの数も減っています。
本当にこの子は大きいうえ、足も太く、存在感がすごくありました。これがネコって思うぐらい立派です。
メキシコマシコ

バンクーバーに行くと、こういう小鳥が野鳥の森などでたくさん撮れます。日本だとこういう緑の綺麗な環境下で、ベニマシコなどはおそらく撮れません。これはちょうど4月、春先の撮影です。
ターミガン

現地では『ターミガン』と呼ばれているライチョウです。一方で、色が白くならないライチョウもいて、それのことを現地では『グラウス』と呼んでいます。
今年3月に撮影してきたばかりの写真です。SONY α1で撮影しました。
ホシワキアカトウヒチョウ

『ホシワキアカトウヒチョウ』も北側にはおらず、南側カナダでも、バンクーバーやシアトルなどに生息しています。
南側は、小鳥が多いんです。絶対とは言い切れませんが、南側に行けば行くほど、生態って小さくなります。北極側に行けば行くほど大きいサイズになるというイメージです。

人間も北欧の人の方が身長が高いイメージ
カナダリス

『カナダリス』は気性の荒い性質です。日本のリスたちより更に気性が荒くて、結構挑んできます。
カナダリスは北側にはおらず、ちょうどカナダでいえば真ん中あたりから、南側に生息しています。バンクーバー周辺には、すごく多いリスです。
バッファロー

現地の友だちでガイドの子に「田中さん絶対ヤバイ!もう、相手怒ってる」と言われながら撮ったバッファロー(バイソン)です。これで15メートルぐらいまで近づいています。
これ実はもう結構怒ってるんです。体重は約1トン。これが車に突進してくると、車をそのまま跳ね上げるほどのパワーがあります。
固まってファミリーでいる時もあるのですが、1頭でこうやって単独でいる時は怖いです。ハイウェイから降りて撮影したのですが、他の現地の人たちやトラッカーの人たちにも「駄目だから戻れ、戻れ。危ねえぞ。」って言われました。
でも、これまではなかなかチャンスがなかったので、こういう感じで撮りましたね。

実はバッファローハンバーガーが美味しい…
カナダカササギ

日本にもいたり、アジアにも多いカササギです。カナダのカササギはやっぱり大きかったですね。
ヒメレンジャク

こちらは『ヒメレンジャク』と言って、日本では見られないレンジャクです。日本で見れるのはキレンジャクとヒレンジャク。カナダはヒメレンジャクしかいません。
ハシボソキツツキ

日本にはいない珍しい鳥『ハシボソキツツキ』。別の港の風景を動画で撮っている時に突然横に現われてしまって、どうにもできず、急遽撮影した写真です。
カルガモ

カルガモたちもカナダの北にはいません。これは南側で撮影した写真です。親はおらず、子どもたちだけでずっといました。
防塵防滴・耐寒性は重要

野鳥だけでなく、オーロラも撮ってるので、カナダの場合、北極圏側行くこともあります。
そういう極寒での撮影の場合、メーカーやモデルによっては本当に撮影が厳しい場合も…。極寒地で撮影すると、カメラやレンズが凍りだしたりすることもあるからです。
寒冷地で撮影する際は、しっかりとした防塵防滴がされているカメラを選びましょう。
また、耐寒性もポイントです。
先日最新モデルが発表されましたが、FUJIFILMのGFX100・GFX100Ⅱは、低温に強いカメラと言えます。-55℃の環境でも動作したので、やっぱり飛び抜けて耐寒性が強い印象です。
また、PanasonicのDC-GH5SやDC-G9は写真というより、動画用のカメラですが、バッテリーが寒さに強いのが魅力です。
各メーカーのフラッグシップ機(いわゆるプロ機)はみんなある程度、耐寒性はあると思います。
仕様上のスペックはありますが、各メーカーある程度安全圏を確保したうえで表示していると思いますね。
結露には十分注意して!

夜間の動物撮影、寒冷地で撮影した場合、撮影したらSDカードは抜いて、ジップロックにカードだけ入れて、部屋に持ち帰るのが◎。
バックに入れた機材は絶対に朝まで開けないこと。一度開けたことがあるのですが、次の日の朝、バッグの中で金魚が泳げるくらいポチャポチャになっていました…。サンニッパ(300mmF2.8の高価なレンズ)が壊れましたね…。
みなさん、撮ったら部屋でデータチェックしたいと思います。寒冷地や極寒地、特に夜に撮影した場合は、必ずSDカードだけ抜くことです。
カメラやレンズは、そのままバッグに入れて、蓋さえ開けなければ次の日、問題になった事は1度もありません。
カードを取り忘れた場合は、外やベランダにバックを一度戻して1時間くらい置いてから、外でカードだけ抜き取ると良いと思います。
極寒地・寒冷地での撮影は車の中から

例えば今回の作例の場合、ほぼ全て車の中から撮影しています。日本の場合、車の中ではなく、テントを張ったり、ブラインドを設置したりした方が良いと言う方もいるかと思います。
しかしながら、環境によっては、それがすごく生き物から嫌がられるんです。あと、危険になったりもしますよね。テント張ってバッファローを待っていたら、確実にやられます。
それに、南側にはグリズリーもいますからね。
カナダの北側で撮影するなら、やっぱり‟車の中から撮る”のが基本です。
じゃあ、なぜ車がいいかって言うと、今の生き物たちは車とも共存しているからです。車の事は普段からよく見て慣れています。
例えば、鳥が飛ぶ時に1番嫌がらない方法が車からの撮影でした。車って見慣れてるんだなとすごく感じます。
撮影の際は、車から撮影しているのが目立たないように、車の窓にブラインドを張ってレンズだけ出して撮影しています。よくやるサバンナの特集番組などでやっているような撮影の方法です。
車からだと、相手が警戒してないからこそやってくれる行動や動きをしてくれるので、おすすめです。別に楽をしているわけじゃないですよ。『車で撮れるんなら、車の中から一生懸命撮りなさい』というのがポイントです。

前述した、バウンダリーベイは遊歩道を歩きながら撮影しているので、当たり前ですが、姿を現わしています。ただし、広大な場所なので、相手が全く、警戒しないでいられるっていう所がいいですよね。
離れたければ、鳥たちが自分で10kmだって離れられるわけなので。そのような場所でない場合は、車の中から撮ることがほとんどです。
また、このような極寒地の場合、ブラインドに入っての撮影なんて、1時間で凍死してしまいます。
車が入れない場所の場合は、小屋などがない限りは無理です。ただ、そうするとかなり大がかりになってきます。
また、極寒地では車のエンジンをかけっぱなしにするのも必須です。もしエンジンを切ったとしたら、車のバッテリーが上がってしまい、エンジンがかからないことも…。2時間後に待っているのは死です。
また、エンジンをかけっぱなしにしておくと、車の熱が伝わってか、生き物たちが自然と集まってきます。獲物のネズミも集まってくるので、そうすると、カラフトフクロウ含め鳥たちが分かってて近くに寄ってくるんです。
連載3回目に掲載予定の写真は、実は一切、車から撮れなくて、外に出て撮っています。そういう撮り方しかできない所もあるので、場所や環境によっては撮り方は臨機応変に変えていく必要があります。

絞り優先モードで開放撮影がほとんど
基本、昼間は絞り優先モードで撮影しています。どうしても飛翔狙いの時だけは、シャッター優先モードにしてシャッタースピードを1/1000秒に固定する時もあります。
開放だと背景が抜けて、印象的な写真に仕上がりますね。開放でも意外とピントは合いますよ!
シャッタースピードが1/1000秒以上であれば止まって写る

これは代表作のカラフトフクロウです。ネズミを狙って、この時一気に木からバッと飛んできました。
これネズミ睨んでるんですけどね。

ちなみに、狩りは失敗でした…
この写真をよく見ると、羽の先まで止まっていないのが分かると思います。鳥というのはほぼ全て、シャッタースピードが1/1000秒以上であれば止まって写ります。
普段はめったに使わないんですけど、飛翔だけを撮る時はシャッター優先モードを使うこともあります。ISO感度を想定して調整し、もう、あとは開放で撮るのみです。
露出がアンダーでもそのまま撮り切っています。飛翔撮影中に、カメラの設定を合わせている暇は絶対にないので。
ある程度、最初に想定しておいた感度より、オーバーめに設定しておくのも良いかもしれません。
鳥が飛んで行くコースが日陰に入っていく場合、「これくらいならいいや」という考えをシミュレーションしておいて、シャッタースピードを1/1000秒、開放で一気にシャッターを切っていきます。
緊急時に露出が足りなくても、そのままマイナスで切り続ける。カメラを操作していて撮れないよりは、アンダーで撮って、後で調整したほうがいいっていう考えです。
『絶対にワンチャンスを逃さない』、そういう撮り方をしています。
次回のテーマは『奄美大島』
10月31(火)公開予定

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