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『愛情観察NEO』発売記念・相澤義和インタビュー

2019年2月2日に発売された、相澤義和さん初となる作品集『愛情観察』。
自由かつ自然体で写る女性モデルの姿は、性別を問わず圧倒的な支持を集め、”良い写真”や”美しさ”の新しい概念を提示してくれました。

あれから3年。
2020年に流行した新型コロナウイルスの蔓延により、平和だったはずの世の中は姿を変え、私たちの生活様式も一変しました。

そんな中、2022年4月20日に発売された『愛情観察NEO』は、前作の続編にあたる作品集です。
新しい生活様式は、相澤さんの作品にどのような影響をもたらしたのでしょうか。
今回のインタビューでは、この3年の月日が生んだ変化を中心に伺いました。

(編集・構成:MARSH編集部)

画像に alt 属性が指定されていません。ファイル名: NAAF4712-1024x731.jpeg

『愛情観察NEO』、発売おめでとうございます。
前作から3年が経ちましたが、この3年の間に何か変わったことがあれば教えていただけないでしょうか。

相澤:ありがとうございます。そうですね、単純に歳を取りましたね。本当に「歳とったな」と思います。

 ー歳を重ねることで、作品に対する変化はありましたか?

相澤:歳を取ると、いろいろなものが剥がれてくるんですよ。
たとえば、虚栄心のようなものが徐々に少なくなっていったりですとか。
なんだかんだ言って、良い写真を撮ろうという気持ちがあったと思うんですけど、良い写真を撮る前に、目の前にいる被写体の”良い状態”が見たいと思えるようになりました。

 ーなるほど。良い写真を撮りたいから写真を撮る、ではなく、目の前にいる子や景色が良いから写真を撮る、という順番が変わったと。

相澤:そうです。写真を撮る上での優先順位が、やっと変わってきましたね。
もともと理想としてあったものに近づきつつある、本当にそうなりつつあると思っています。

 ー良い意味で、「良い写真を撮りたい」という欲がなくなってきたんですね。

相澤:はい。より自分を外に置いた状態で相手に対峙できるようになってきたという感覚があります。
信念というか、そうなれば良い写真になるはずだ、っていうのは前々からあったんですが。
撮影していると、「あ、撮れた」みたいに、それがちょいちょい現れる瞬間があるんです。
でも、「まだまだ俺は構図に頼っているな」とか「雑念が出ているからまだまだダメだな」って、ずっとその繰り返しなんですよ、この10年くらい。
それがやっと形になってきた気がします。まだ、もちろん徐々にですけど。

 ーそれは、実際に撮った写真を見返した時に、結果的に良い写真の撮れる確率が上がってきたな、と感じるのでしょうか。

相澤:うーん。確率なのかな。心持ちなのかもしれないですね。
シャッターを押した時に、「さっきは(無の状態に)入ってたな」と後でふと思うんですよ。
そういう時って、結果的に良い写真が撮れていることが多いんですよね。

もちろん、自分の意思が反映されている写真でも、良い写真はあります。

ただ、その写真をあんまり愛せないんですよ、自分の中で。
自分の意思だから、自分の意志で写した写真だから、そこじゃないところで写した写真に含まれた、良い・美しい要素を見つけたいんですよね。

画像に alt 属性が指定されていません。ファイル名: DSCF3322-1024x731.jpeg

 ー撮影スタイル以外で何か変わった点はありますか?

相澤:割と自分の中でいい意味で生への緊張感が出ました。

 ーそれは、やはりコロナの影響が大きいのでしょうか。

相澤:そうですね。コロナの影響は大きいと思いますよ。撮影に臨む際に、「もしかしてもう会えなくなったりしたら」って、より強く思うようになりました。
人間いろんな要因で縁がなくなったり、どうなるかわかりませんからね。
そういう私自身の気持ちの変化と、モデルになってくれた女性たちの【自分自身の姿を残しておく=写真に撮られる】という行為がリンクしてたんじゃないかなと思うんですよね。
そういった女性の自分自身の姿を残す意思のようなものは、コロナ前よりも切実に感じる部分はありました。

 ー確かに、3年前と比べて数年後の自分が想像しづらい世の中になりましたね。個人的には、今作の表紙に、マスクを付けたモデルさんの写真を採用されていたことが印象的でした。

相澤:散歩もちょっと様子見だったじゃないですか、コロナ禍のピークは。
今回の『愛情観察NEO』は、緊急事態宣言やまん防(まん延防止等重点措置)が解除されたタイミングで、モデルさんと人気の少ないところへ散歩に行って、周りは誰もいないのに2人でマスクして歩きながら撮影した写真も含まれています。
それが写真的に良いか?悪いか?は現時点で分かりませんが、マスクを付けているという事実が、後々意味のあるものになるはずだと思うんです。今は「マスク嫌だね〜」って言ってるけど、5年10年経ったら「ああ、あんな時もあったね」ってなるから、これはこれで有意義だなと思うので、そのへんの着脱は他人との距離をはかった上でのなりゆきですね。

相澤:この3年の変化でいうと、前に写真を撮って次会う時までに結婚してる子もいるんですよ。
「(これで)最後かな〜」と思いながら撮ってることが多かったですね、この2〜3年のうちは。

  ーなるほど。一期一会感と言いますか、その相澤さんの被写体に対する思いや被写体モデルさん自身の変化が、作風に現れた部分はありますか?

相澤:さっきも言った通り、より引いて見るようになったかもしれないですね。
以前は、自分の意思が作品に入り込んでいる感じがちょっとあったんですよ、今に比べて。
今は、それ(自分の意思)が以前より抜けていってる感じはあるんで、よりナチュラルになったというか。

 ー確かに、前回の『愛情観察』と比べて、被写体の表情・姿勢が自然体に感じました。モデルさんが自宅?でラーメンを食べているカットとか、ホテルのベッドの上で芋けんぴを食べているカットとか……。

相澤:良し悪しは置いておいて、目の前の出来事を俯瞰で見れるようにはなりましたかね。スナップも、モデルもそうですけど。

ーそこには相澤さんがいるはずなのに、いないものとして過ごしているというか、本当に相澤さんはそこにいたのか?と思わせるようなカットが印象的でした。

相澤:ね。それがね、できるようになってきたんですよ。
それは、モデルさんとの付き合いが長くなってきたというのもあるし……もちろん今でも(カメラを前にして)構える子はいるんですけど、以前と比べて構えない子の割合が増えてきたんじゃないかなと思います。
もちろん構えるからダメってことでは決してないんですが、いつか撮影者を”無”にはしたいですね、あり得ないんですけどね、ありえないからこそ、そこを理想として持っておきたいというか。

 ーなるほど。付き合いの長さだけでなく、相澤さんの撮影スキルやモデルさんへの接し方が変わったんですね。

相澤:ここ数年、本当に”撮るだけ”に徹してきたんですよ。構図も寄せずに。それがね、結構いい感じで出た気がします、自分の中で。
ただ、その分前作よりキャッチーな写真にはしていないので、初めて(私の作品を)観る人はちょっと物足りないかもしれないですね。

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 ー最後に、今作『愛情観察NEO』に込めた想いや、ファンの方に向けたメッセージがあればいただけないでしょうか。

相澤:前作・『愛情観察』の時は、思春期でこれから女の子と触れ合うことになる少年・青年に、女性という生き物の真ん中にあるものを写真から読み取ってもらえたら素晴らしいな、ということを編集者の方とも話していたんです。
あとは、だいぶ時勢が変わってしまったんですけど、前作の当時はもうちょっと女の子を自由にできたら良いな、っていう感覚が当時はあって。

 ー女の子を、自由にする。

相澤:はい。写真撮る時って、どうしても「ああして、こうして」って言いがちじゃないですか。
それって極端な言い方をすると、その女性の独自性を無視してしまっていると思う時があるんです。
撮影者の要求を通して、向こうのしたいことを消しているというか。
愛情観察を出す前は、そういう写真が多かった気がするんです。
そういう中で、女性の、何にもおもねらない、過度な気を使わない姿というものを見つけ出して、それを男としての立場で伝えてみたかったんですよね。
以前に比べて、それを何となく理解してくれる女性が増えた気がします。

 ー確かに。そう言われてみると、この3年で、SNSでも女の子の自由な姿・表情の写っている写真が増えた気がしますね。
被写体サイドの理解が進んだこともあると思いますが、「自由な姿・表情の写っている写真が良い!撮りたい!」というカメラマンの数自体も増えた気がします。

相澤:それに関しては、もしそうであれば良いことですね。
ただ、『被写体の自由な姿を撮影すること』は、良い写真を撮るための概念・方法のひとつにすぎないと思っているので。
今度はそこから、私が一回外れないといけない。また新しく探さないといけませんね。

 ー”自由な姿は美しい”に変わる新しい概念を生み出す、ということですね。

相澤:必ずしも新しくある必要はないと思うんですけど、”良い写真”の幅や選択肢が広がれば良いなと思っています。
たとえばある画家も、何か新しい画法を生み出して、世間から認められた途端にそれを捨てて新しい画法・可能性を模索したりするじゃないですか。
愛情観察で培った概念をベースに、今後は新しい”美しさ”や”良い写真”の概念を見つけていきたいですね。
せっかく歳を取ってるんですから(笑)。

 

相澤 義和(あいざわ・よしかず)

1971年、東京都東久留米市生まれ。1996年、四谷スタジオ(現・スタジオD21)入社。2000年に相澤義和写真事務所を設立し、フリーランスとして独立。2019年に初写真集『愛情観察』を発行。2020年4月に、2作目となる写真集『愛の輪郭』が発表された。Webメディア『MARSH(マーシュ』にて、フォトコラム『東京さんぽみち』を連載中。

■Twitter:@aizawa_yos

■Instagram:@aizawa_yosikazu @aizawa_7

相澤義和さん連載コラム『東京さんぽみち』

東京さんぽみち=お散歩×カメラ×女の子。『愛情観察』『愛の輪郭』で知られる写真家・相澤義和さんが、女の子と散歩しながら、東京の街でスナップ撮影した様子を徒然なるままに綴ったフォトコラムです。

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この記事を書いた人

「こころに残る"トキ"のサブスク・GOOPASS」を展開するGOOPASS株式会社の編集ライター。自社Webメディア『MARSH』の編集長として、企画・ディレクション・記事制作などを担当する一方で、フォトグラファーとしても活躍中。バスケットボール・ラッパー・プロバレーボール選手・フィットネストレーナーなど、スポーツ・ストリートシーンを中心に、スナップ・ポートレートなど幅広い撮影シーンを手がける。愛機はCanon EOS R6 MarkⅡと、FUJIFILM X100V。