はじめ、新潟旅行の目的は長岡花火を観に行くことだった。
でもせっかくなら前入りして、リゾートホテルにでも泊まろうか。友人との会話のなかで決まった滞在先は、いつものホテルとはちょっと違っていた。
ワインは好きでよく飲むけれど、国内ワイナリーには明るくない。
新潟に「カーブドッチ」というワイナリーがあること自体、今回、初めて知ったことだった。ワイナリーの敷地内に、立派なホテルが併設されているらしい。

ワイナリーツアー
カーブドッチは、新潟駅から車で40分ほどの場所にある。到着してすぐ、チェックインよりも前に、予約していたワイナリーツアーに参加した。

8月頭のうだるような暑さの中で、爛々とした太陽の光に照らされたぶどう畑を目の前に、スタッフから彼らの土地と栽培しているぶどうについての説明を受けた。
ここから海までは約1.5キロ。信濃川が海に流れ込んでいく場所で、海砂と川砂が堆積した砂地だという。水はけはとてもいいが、ヨーロッパと比べれば日差しが弱いので、向こうと同じような濃くて重たいワインは出来ない。例えば、タンニンのしっかりしたフルボディのワインとか。
カーブドッチの造り手たちは、向こうと同じものをと考えるのではなく、この新潟の土地の土壌と気候を活かしたワイン造りを目指していた。

365日、ぶどうの世話が何かしらあるものだと、スタッフの方が教えてくれた。我が子のように大事にされて育っているのだな、と思う。
30年ほど前に角田山の麓を切り拓いて作られたというぶどう畑は、もう立派な顔をして、輝いていた。

ぶどう畑に続いて、醸造場も見学させてもらえた。
見上げるほど大きなピカピカのタンクがそびえ立つ醸造場の中で、ワイン造りの工程について聴く。

さらに熟成庫へと入っていく。ここは見た目にも、香りにも気持ちが上がる場所だった。新樽の心地よい木の香りが充満して、ワインの入った樽たちが存在感を放っていた。

醸造場内をさらに歩くと、セラーに続いている。瓶詰めされたワインが図書室の本のごとく、美しく整頓されてびっしりと並べられている。

楽しいツアーはあっという間に終わって、最後は試飲タイム。飲んでみて、国内でこんなワインを造っている場所があるのかと、驚いた。香りが豊かで、味がふくよか、なんて言ってしまえば言葉には簡単だけれど、こんな国産ワインを私は他に知らない。
造られたワインはほとんど他に卸さず、基本的に直売を行っているとのことだった。どおりで、こんなにおいしいのに都内で見たことがなかったのか、と納得する。
ワイナリーステイ トラヴィーニュ

ワイナリーツアーを終えたところで、今回の宿泊先である「ワイナリーステイ トラヴィーニュ」に移動しよう……と、あれ。ここはどこだ?
敷地が広すぎて、迷ってしまったみたいだ。

ホテルの入り口を見つけた頃にはもう汗だくだった。それでもテンションが下がるまもなく、想像以上にリゾートホテルらしい外観に、気分が高まっていく。
チェックイン・ウェルカムドリンク

扉をくぐり、スタッフにチェックインをお願いすると、ラウンジの奥、ぶどう畑に面したテーブルとソファに案内された。ウェルカムドリンクです、とスパークリングワインが注がれる。このワイン、トラヴィーニュに宿泊した客しか飲めない特別なものだという。

暑さに打たれた身体に、冷えた、美味しいスパークリングワインが染みていく。なんて素敵なスタートだろう。
客室

担当のスタッフから、客室は「かわうそ」になります、と案内された瞬間、私は心の中で大きくガッツポーズをした。一番泊まりたかったお部屋に当たったのだ。

ここ、ワイナリーステイ トラヴィーニュの客室は全部で10室。それぞれにカーブドッチの造る「どうぶつシリーズ」から異なるどうぶつの名前がつけられていて、インテリアもすべて異なっている。なかでも私がぜひ泊まりたい! と考えていたのが、この「かわうそ」だった。

目を引くオレンジ色のソファは、スペインから直輸入したものだという。金属の質感を活かしたテーブル、大きな窓の先に広がるぶどう畑の緑と青空。その奥には角田山がそびえ立つ。

天井がかなり高く作られていて、これがまたリゾートホテルらしい開放感を演出している。1部屋1部屋のコーディネートが全く違っているというのは、シティホテルや都市型の高級ホテルではほとんどあり得ないことだ。ぶどう畑を目の前にしたロケーションといい、全てがこの場所を「特別」なものにしているのを感じた。

部屋のミラーが丸くて可愛くて、そこから気に入りのオレンジのソファを撮った。窓の外とベッドには柔らかなグリーンがあって、色合いのひとつひとつが調和している。
客室でのんびりと過ごし、旅の疲れを取っていたら、夕食の時間になっていた。
ディナー

夕食は、隣のレストランでいただくことになっている。時間になったらラウンジに来てください、と言われていたので、部屋を出て先ほどのラウンジに向かう。
目の前のぶどう畑ではすでに数組のゲストがもてなされていた。

畑の目の前に設置された小さなテーブルに、可愛いらしいサイズの鍋がふたつ。中にはアペリティフが入っている。なるほど、ここで食事の前座というわけか。洒落たことをしてくれるなぁ、とまたもや感心させられる。ロケーションだけでなく、こういった小さな演出の積み重ねが素晴らしい。

乾杯のスパークリングをいただく。うーーん、美味しい!
ぶどう畑を望みながら飲むワインは、一層美味しく感じる。でも、ちょっと西陽が暑すぎるかも……なんて感じていたら、ほどなくしてレストランに案内された。

レストランでは、カーブドッチのワインを使ったペアリング、ワイナリーならではの自社畑のワイン用ぶどうを使った料理や、ワインの葉を使った蒸し焼きなどが楽しめた。どれも美味しかったのだが、一つ一つ感想を述べると長くなってしまうので、ここは割愛させてもらおう。
私たちがホテルに泊まる理由

ラウンジに戻る頃には、外はすっかり暗くなっていた。照明も落とされて、昼間とは雰囲気がすっかり変わっている。

食後のお茶を飲みながら、いい一日だったなあ、としみじみ思う。
こんなふうにくつろげる時間があることが、どれほど日々を生きやすくしてくれるだろう。
きっとそれは、こんな贅沢でなくてもよくて、自分の気持ちが休まる場所で、自分が美味しいと思えるものを食べて、なににも追われずにいられる時間があればいいのだ。
そういう「休み方」のひとつに、ホテルステイがあるんだろうと思う。

美しいものを見るのもいい。トラヴィーニュの館内は、客室以外にも家具やデザインが素敵なところが多くて、過ごしていて楽しかった。
チェックアウトの日の夜、人生で初めての長岡花火を見て、心の底から震えた。たくさんの光が、闇を照らして、希望をうたっていく。花火を見て泣きそうになったのはその時が初めてだった。
トラヴィーニュで過ごしたような、心地のよいお休みの時間も、
長岡花火で得たような、震えるような感動も、人生に必要なものだと思った。
今回紹介したホテル
カーブドッチ ワイナリーステイ トラヴィーニュ
| URL | https://www.docci.com/ |
| 電話番号 | 0256-77-5460 |
| 住所 | 〒953-0011 新潟県新潟市西蒲区角田浜1661 |
| アクセス | 車:北陸自動車道・巻潟東インターから、越後七浦シーサイドライン方面に約15km 新幹線:上越新幹線新潟駅下車。新潟駅より無料送迎バスあり(約50分) または、JR越後線に乗り換え内野駅下車(約20分)そこからタクシー利用(約15分) 飛行機:新潟空港から空港リムジンバスで新潟駅下車(約25分)新潟駅より無料送迎バスあり(約50分) または、JR越後線で内野駅(約20分)そこからタクシー利用(約15分) |
| チェックイン | 15:00 |
| チェックアウト | 11:00 |
| 価格 | 38,500円 ~(ワイナリーステイ 1泊2食、2023年9月現在の最低料金) |




