僕は親戚の集まりが苦手だ。
親戚が悪いわけではない。僕が悪い。気を遣いすぎて緊張がなくなる瞬間はなく、終わって自分の部屋へ戻ったとき、ようやくほっとする。
そんな僕が妻の祖母の家に足を運び、写真を撮っている。20代までの自分だったら考えられない行動だった。

聞こえは悪いかもしれないが写真は行動の理由になる。行動することが苦手な自分にとって、写真は背中を押してくれる存在だ。写真がなかったらいつも面倒くさいが勝っていた。
「お金がかかるからやめよう」
「天気が悪いからやめよう」
「身体が疲れているからやめよう」
いいわけばかりで、一歩が踏み出せないヤツだった。

結果としての写真。過程の写真。
僕は写真を仕事にしているから結果も大事だけれど、過程に随分と救われている。妻の祖母の家へ訪れ一泊し、朝、散歩をともにしご飯を食べる。撮った写真が良かったかどうかよりも大切な時間を過ごした。
話したこと。聞いたこと。ご飯を食べたこと。
「楽しかったね。また行きたいね」
帰りの車のなかで妻と一緒にセンチメンタルな気分になった。

昔の自分だったら一泊するなんて考えられなかった。そもそも法事などの理由がないと訪れることもない。避けれるのであれば避けたかった。自分だけの時間が楽だもの。仮に会ったとしてもなにを話せばいいのかわからないしなにを質問すればいいのかわからない。ただ、時間が過ぎることだけを願っていた。
写真は自分の背景を探ることが重要だと思っている。幼少期、なにを思い日々を過ごしてきたのかを知る必要がある。
しかし、自分の幼少期を思い出すのは簡単なことではない。とくに僕は過去のことを全然、覚えていない。

だから人の話を聞きたくなる。話を聞き、その人の背景を知ることで「自分にもそういう気持ちがあったのだろうか」と考える。
写真は行動の理由になる。もしかすると人によっては不純な動機かもしれない。それでも僕は過去の自分と比べると、良い方向に進んでいるという実感がある。

こんな日もあった。
その日は仕事のロケハンをするために神奈川県の南のほうにいた。ロケハンに来てもらった人数はなんと3人。僕も合わせて計4人のメンバー。ロケハンはこれまでもしたことがあるけれど、3人も呼ぶなんてことはなかった。理由は単純で、仕事で撮る子が3人だから。3人並んだときの構図のバランスを確認したかった。
僕は心配だった。募集して来てくれたメンバーとはいえ、それぞれの時間を奪っているわけだから。ロケハンは真面目にやるが、来てくれた人にとって楽しい時間であったり、何か得るものがあれば良いなと思っていた。

「いきなりロケハンスタートするのもアレなので、最初マックに寄って軽く話しましょう」
駅から徒歩6分。みんなで海沿いのマクドナルドへ。僕が最初に爽健美茶のMサイズを注文すると、みんな遠慮したのか同じ爽健美茶のMサイズを注文した。
ロケハンは順調。やっておいてよかったと思えたし、課題も見えた。もう1日ロケハンの日を確保していたので、この日は18:00頃に終了した。
元々、晩ごはんをご馳走する約束だった。せめてそれぐらいはしてあげたいと思っていた。

横浜まで戻り、キリンシティへ。ビールで乾杯。
実は今回のロケハン同行者の募集をかけたとき、ひとりの子が参加したいメッセージとともに最近、仕事に疲れてしまっているということも伝えてくれていた。
僕はその子とは初めましてではなかった。卒業時の袴姿を撮影させてもらったこともあるし、カメラメーカーの企画イベントにも参加してくれた子だった。人当たりがよく、いつもニコニコしていた。人付き合いが苦手な自分にとって彼女の明るさは羨ましかった。
ロケハンメンバーで晩ごはんを食べながら、その子の悩みを聞いた。みんなわかっていた。今日が初めましてだけれど、その子の人柄の良さを。だから、みんなでその子の魅力的な部分をたくさん伝えた。
「今日、有休を取って参加してよかったです」
帰りの電車のひとことが嬉しかった。
写真は行動の理由になる。
結果も大事だけれども、過程で得られるものがある。
過程のほうが大切になる瞬間がある。

今回使用したカメラ・レンズ
FUJIFILM X-Pro3

フジノンレンズ XF16-55mmF2.8 R LM WR

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