ペット写真家・中村陽子先生が愛犬撮影のレンズ選びのお悩みを解決!50/85/135/70-200mmの違いと選び方、使い方

(編集:GOOPASS ANIMAL MAGAZINE編集部)
愛犬を撮影している方の中には、「どの焦点距離のレンズを選んだらよいか分からない」「ペットのポートレート撮影におすすめのレンズが知りたい」という方も多いのでは?
そこで、ペット写真の第一人者として活躍している写真家・中村陽子先生に、愛犬撮影に最適なレンズの選び方とその使い方についてうかがいました。
同じ場所でレンズを変えて撮影したり、シーンによってレンズを使い分けたりするなど、愛犬のポートレート撮影におすすめのレンズ「50mm/85mm/135mm/70-200mm」を比較。
それぞれのレンズの違いや使いこなし方、自分の愛犬を撮る際の選び方などについても詳しく解説いただいています。
「70-200mmは持っているけれど、次にどの単焦点レンズを選ぶか迷っている」「ポートレートを可愛く撮りたいけれど、自分にはどのレンズが合っているか知りたい」という方はぜひチェックしてみてください。
今回のモデル


目次
焦点距離やF値によって写真の印象は変わる
50mmは広い世界観で撮れる

50mmの良さは広い世界観で撮れること。
場所の雰囲気が分かるうえ、開放F値が低いので、ふわっとした感じで撮れるのが特徴です。
RFマウントには50mmが、50mmRF50mm F1.2L USMとRF50mm F1.8 STMの2本ありますが、違いはAFの速さと正確さ。
Lレンズ(Canonのなかでも最高峰の高性能レンズのこと)であるF1.2の方はAFがピピっと素早く合いますが、F1.8の方は悩んでいる場面も…。特に犬に近づいて撮影すると、それが顕著に出てきます。
人や風景などコントロールができる被写体と異なり、犬にはAFスピードが重要です。
また、RFレンズとEFレンズでもAFの速さや正確さは異なります。使い分けてよく感じますが、犬を撮るならRFレンズがやっぱり大きなアドバンテージです。
中村陽子先生写りも大切ですが、ポートレートでも思ったように素早くピントを合わせられるかは重要!
135mmF1.8と70-200mmF2.8では玉ボケに違いが出る
135mmF1.8

70-200mmF2.8

望遠系のレンズの大きな違いは玉ボケ。どちらも同じくらいの焦点距離で撮影していますが、比較すると背景のボケ方が異なります。
背景を溶かすように撮るなら、開放F値が小さい135mmF1.8。玉ボケが溶けていますね。
反対に、70-200mmF2.8は玉ボケがキラキラしています。ボケ過ぎると玉ボケが消えてしまうんです。
ただし、なんでも溶けすぎていいかというと、そういう訳ではありません。
つまり、どうぼかしたいかでレンズを変えるということ。背景のボケ方や犬との距離を見ながら、レンズを選びましょう。
F値を大きくすると、玉ボケは小さくなりクッキリ写る
70-200mmF4.5

開放F値が大きいレンズで撮ると玉ボケが小さくなる=ボケが弱くなります。
その一方で、玉ボケがクッキリするため、効果が良いときもあります。
写真は、全て開放で撮る必要はありません。好みによって、F値やレンズを変え、背景のボケ加減を調整することが大切です。


85mmF1.2

85mmは、135mm・70-200mmより白の範囲が多くなったので、玉ボケがごちゃごちゃして写っていますね。
アングルによってもボケ感や印象は変わる
ハイアングル

同じ135mmF1.8を使っても、アングルによって写真全体のボケ感や印象は変わります。
このように、上からハイアングル(高い位置から犬を見下ろすように撮ること)で撮影すると、地面が背景なので、ボケが中途半端になりがちです。
ローアングル

ところが、ローアングル(低い位置から犬を見上げるように撮る)で撮ると、なんてことない後ろの木が玉ボケっぽく写り、華やかになります。
単にレンズが悪いのではなく、アングルが良くない場合もあるかもしれません。そのため、レンズの特性を考慮しつつ、自分がどう撮りたいかでアングルも変えていきましょう。
なんてことない場所も絵になるのが135mm

上の写真は前景と背景に地面がありますが、前ボケを大きく入れたことで、地面も玉ボケっぽく写りました。
また、直射日光が当たっている葉っぱや花越しに撮ることでボケと華やかさをプラスしました。
この撮り方ができるのが、135mmの良さ。
ボケなかったら、写真が汚く見えてしまったかもしれません。
植え込みのなんてことない場所が、光とレンズの良さで絵になるのが135mmの魅力です。
犬との距離や犬の大きさによって変えるレンズと撮り方
50mm/85mm/135mm/70-200mm、それぞれのレンズを使って同じ場所で撮影してみました。
このレンズだと、これくらいのバランス(背景や犬の大きさなど)が良い、という写真を紹介しています。
このレンズを使って撮ると、こんな写真が撮れるのが分かるかと思います。
中村陽子先生紹介する写真はレンズによって色ノリが異なりますが、その写真で一番いいなと思う色を出して仕上げています
前提として、レンズのmm数が小さくなると背景が広く写り、大きくなると背景が狭くなります。
そして、寄ることによってボケが大きくなり、離れるとF値の小さいレンズの方がボケが出てきます。
50mmは環境のかっこよさや美しさを入れられる

50mmの魅力は、周りの環境のかっこよさや美しさを入れられる点です。
桜などと犬を撮る場合、ぼかしすぎると、かえって何と撮っているか分からなくなってしまいます。
そういった意味で、50mmは外で撮る時に良いですね。特に、綺麗な場所へ積極的に行く方におすすめです。
中村陽子先生50mmはボケ過ぎず、個人的に好きな感じで写りました!
また、室内撮影で活躍するのも50mmです。部屋の中は外のように無限に広いわけではありません。
ハウススタジオなどで撮影するなら50mmは必須です。
85mmはオールマイティ

85mmはオールマイティといえます。
選択肢がたくさんあるのが85mmの良いところです。
自分のライフスタイルに合わせた重さや大きさ、価格のレンズを選べるのが85mm。滑らかなボケが魅力のDSや軽量・コンパクトなRF85mm F2 MACRO IS STM、EFマウントもたくさんあります。
ちなみに「RF85mm F2 MACRO IS STM」の良い所は、ハーフマクロ撮影ができる点。スナップ撮影などにも使えます。
AFスピードやボケのなめらかさ、高精細な絵はRFマウントのF1.2が◎。ただし、RF85mmF1.2のレンズは重いうえ、本体が太いので悩みどころではありますね。
>>RF85mm F1.2 L USM DSとの比較について詳しくはこちら
135mmは王道ポートレートに仕上がる

50mmと異なり、135mmはその場の雰囲気は弱まりますが、ポートレートの王道のようなふんわりとした写真が撮れます。
ごちゃごちゃした枝を整える、目立たなくさせるのは135mmが得意です。
そして、犬が小さい人は135mmの方がよいかもしれません。
85mmで、犬が小さいからといって犬に近づいて撮影すると、犬の鼻までぼけてしまうから。さらに、寄りすぎると、ピントの甘さが目立つうえ、顔の長い犬は鼻がぼけすぎて不自然です。
このような場合、遠くから135mmで撮影する方が良い気がしますね。
中村陽子先生コッカーくらいの大きさなら犬が大きいので、85mmの方がバランスが良いかも
70-200mmF2.8はよく考えて撮影しよう

背景をぼかしたいときには70-200の200mm側を使いますが、犬が大きくなりすぎることも…。使いこなすにはよく考えて撮影することが大切です。
実は、70-200mmはどこでも適当に犬をおいて撮ってはいけないレンズ。
ズームで、くいくいっと画角を調整して撮影できるのは良い点と言えますが、適当に撮るとこのレンズの良さは出ません。
70-200mmF2.8は開放F2.8のため、単焦点と比べるとF値が大きいレンズです。
「どうぼかしたいか、どう見せたいか、だから●●mmを使う」という風に考えて撮るととても便利で良いレンズですが、何も考えずに撮ると勿体ないレンズです。
中村陽子先生70-200mmは使う人によって絵に差が出るレンズ
70-200mmを使う際は、この距離から撮ったらどうなる、離れたらどうなる、寄ったらどうなる、といったことをよく考えて撮影しましょう。


上の2枚は、同じ焦点距離135mmで撮影した写真です。犬の大きさはどちらもさほど変わりませんが、背景のボケ加減が変わっていますね。
F値によって、同じ135mm付近で撮っても見え方が変わります。
それぞれのレンズ違いまとめ

ぼけるという点では、135mmはふわっとぼかせるのがポイント。さらにほどよく背景が狭くなるので、なんてことない場所がステキなところに早変わりします。
ただし、圧縮効果(遠くの被写体が手前に引き寄せられたような遠近感の圧縮)は200mmほどありません。
遠くに犬がいて走っているのを撮りたいという人には不向き。それにはやっぱり、70-200mmや100-400mmが必要です。
一方、50mmは周りの環境の力が大切。ぼけたとしても全部写ってしまうので、ロケーションの悪いところではちょっとしんどいレンズです。
中村陽子先生どの単焦点レンズも、どこでもオールラウンドに使えるわけではありません
そのへんを臨機応変に撮れるのは、70-200mmF2.8といえます。
よく考えて撮影する必要はありますが、200mmの大きなボケが得られるうえ、犬との距離が多少変わってもある程度ズームでカバーできるからです。
70-200mmは、一本ベースとして持つレンズとしては最高です。あとは、どの単焦点を追加するか検討しましょう。
また、犬を撮る次の一本で、どれがいいと決めつけるのではなく、犬の大きさや被写体との距離でも選ぶべきレンズは変わってきます。
多頭撮影でも望遠系は役に立つ

多頭で撮る場合は、望遠系のレンズを使って離れた位置から撮影するのがおすすめです。
この写真は、135mm・F1.8で撮っています。それにもかかわらず、3頭みんなにピントが合っているように見えませんか?
スタンダードプードルの前にトイプードルがいるので、本当はお顔の位置がぴったり合っているわけではありません。
ところが、3頭にきちんとピントが合っているように見えると思います。
これを85mmで撮ろうとすると、こうはいきません。
犬に近づいてしまうと、開放F値よりも、近づいたことによる前後ボケが大きくなります。つまり、誰か一人がぼけてしまうということ。
85mmを使って犬たちをこの写真と同じサイズで撮ろうとすると、必然的に近づくので、絶対誰かぼけてしまう残念な写真になってしまいます。
中村陽子先生この写真は、みんな違う方向を向いているけれど、犬同士がまとまっている感じがしてお気に入り!
また、135mmではなく、70-200mmF2.8を使って離れた位置から撮ることもできます。ただし、開放F2.8のため、背景は135mmよりくっきり写ります。
犬はどうしても動いてしまうもの。そうすると、一人だけぼけてしまうといったことが起きてしまいます。そういうときに望遠系の135mmや70-200mmは85mmより便利です。
多頭飼いしている人で、全頭にピントが合った状態で、ほどよくぼけている写真が撮りたいなら135mmがおすすめ。
犬と距離がとれるなら、F値が小さいレンズがやっぱりいいですね。
135mmは、「多頭で85mmだといつも2頭のどちらかがぼけちゃう…」といった悩みを抱えている人にはおすすめです。
同じ位置から撮った場合の違い
犬を撮る時は全体のバランスが重要です。
距離感だったり、表情だったり、犬とのコミュニケーションが撮れる距離であるかも大切。
あまり離れられない子もいるので、その点も考慮してレンズを選んでいくことが重要です。
50mm

85mm

135mm

200mm

自分に合ったレンズ選びのポイント
- 一番よく使っている焦点距離の良いレンズを追加する
- 持って行けるキャパと用途によってレンズの組み合わせを考える
- 手に入れるレンズの優先順位をつける
①一番よく使っている焦点距離の良いレンズを追加する

持っているレンズの中で、一番使う焦点距離の良いレンズを追加するのが一つの方法です。
単に持っていないからといって購入すると、使わないことも…。それよりも、よく使うレンズのF値やよく使う焦点距離のレンズを買う方が幸せになれます。
70-200mmF2.8を持っている人なら、次に検討するのは85mmや135mmになるでしょうし、70mmではどうしてもいつも不満に思っているなら50mmを選ぶのが良いでしょう。
70-200mmを持っていて、どのレンズにしようか悩んでいる人は、一度Exif情報(カメラの設定などの撮影データ)を見て普段何mmで撮影しているか確認してみましょう。
例えば、普段から135mm前後を使っているならF値が小さいレンズが便利。普段135mm付近をよく使っていて、もう少しぼかしたいなという悩みを解消してくれるのが135mmF1.8です。
また、撮影に出掛ける前には、似たようなところに何mmのレンズを持って行っていたかチェックしてみてください。
中村陽子先生撮影場所に着いてから「●●mmを持ってきておけば良かった…」といったことを防ごう!
普段から自分が撮ったデータを詳しく見ておくと、購入の際や当日の撮影に役立ちますよ。
自分の好みやクセをいかに理解するかで、レンズの購入や当日の撮影が上手くいくか決まってきます。
②持って行けるキャパと用途によってレンズの組み合わせを考える

犬を連れて、さらに荷物がいっぱいの状態でのレンズ交換は大変です。
レンズをたくさん持って行っても、結局使わなかった経験はありませんか?
ペット撮影はフットワークを軽くすることが大切です。自分が持って行ける荷物のキャパと用途によってレンズの組み合わせを考えましょう。
例えば、85mmをあまり使わない撮影なら、70-200F2.8はベースとして持って行くとして、85mmは軽くてコンパクトなRF85mm F2 MACRO IS STMを持って行く。
50mmはF1.2とF1.8の両方を持っていますが、荷物とのバランスと用途によって持って行く方を決めています。
Canonの非Lレンズ・RF50mm F1.8 STMの良さは、使わないかもしれないけれど、カバンに入れておくには最適な点です。
コンパクトかつ軽量なので、カバンに入れても持ち運びが苦ではないはず。
中村陽子先生非Lレンズを選択肢に入れるのもアリ!
そのため、非Lレンズを選択肢に入れるのもアリだと思います。自分がどれだけ持って行けるか考えてレンズを選びましょう。
③手に入れるレンズの優先順位をつける

全部良いレンズを持っていたいところですが、なかなかそうはいかないかと思います。
「こういう写真が撮りたいから、まずはこれを買ってみよう」といったようにレンズに優先順位をつけるのはアリですね。
例えば風景もよく写し込みたいなら、まずは50mmを選ぶべき。ただし、犬がチワワなどの超小型犬だとしんどいかもしれません。風景に対して、犬が小さすぎてしまうからです。
そして、犬を大きく写そうと犬に寄っていくと、後ろが変にぼけることも…。意図しないボケ感になるので、その点には注意が必要です。
中村陽子先生用途や撮りたい絵に合わせて、どのレンズを手に入れるべきか優先順位をつけてみて!
悩むなら一度使ってみるのが正解

例えば、小さい犬を飼っていて85mmと135mmで悩むなら、一度両方使ってみて悩んで決めることをおすすめします。
犬のサイズや撮りたい背景との距離感、ボケの強弱は試さないと分かりません。店頭で試し撮りしただけでは失敗します。
なぜなら、自分が好きな背景との距離感や背景の見せ方(玉ボケなど)で選ぶべきレンズは変わってくるからです。
また、犬とのコミュニケーションができる距離感や、自分が持って行ける荷物のキャパを実際に把握することも大切です。
自分の好みが分からないという人は実際に使って試してみてください。やっぱり、実際に自分の犬を撮ってみないと分かりません。
自分がどう見せたいか、本当にその用途に合うレンズなのか、一度試してみると、決まってくると思います。

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