さて、今日は花火を見てもらいましょう。ニコン公式のオープニング動画でも出てきましたよね、これ。
最高です。Z 8マジすごい。撮ってて感動するカメラ、ワクワクするカメラって久しぶりです。ただ、花火に関しては殆ど動画を撮ってたので、実は写真が少なかったりします。今すでに困ってるのもまさにそのことで、今年の夏は全国的に花火復活の夏になるはずなんですよね。僕の地元の琵琶湖花火も復活しますしね。それを全て写真と8K60Pで撮影していくつもりなんですけどね。ボディ2台いるんですよね…まあ、買うんですけどね。ええ…
てことで、Z 8で撮った花火の写真少ないんです。じゃあ話すことはないのか?そんなことありませんぜ。ちょっと今日の記事は変化球から行きましょう。こんな写真。
これとか、

これ見てください。

無作為に取り出したこの2つの写真、一体どんな関係があるかお分かりになりますでしょうか。わかるわけないですよねー、ごめんなさい。答えというかなんというか、この2つの写真、1枚目はNikon D800で撮った2013年の写真、2枚目はNikon D810で撮った2014年の写真。2つとも10年近く前に撮った写真なんです。
これらの写真を、僕は去年から今年にかけて自分のSNSで使ってます。そのことで、何を言いたいのか。それはですね、D800やD810の写真データがいまだに現役だってことなんです。しかしその「現役性」にはたったひとつ条件があります。RAWで撮っていること。
ほら、徐々に話がZ 8に近づいてきたと思いませんか。Z 9から導入され、Z 8にも引き継がれた機能があります。それは何か。8.3K内部RAW動画ですね。そう、今日はRAW動画のお話です。そしてそれが、「写真と動画の未来」に関わってきます。Z 8はそこを見据えたカメラなんだっていう話。
あ、本論に入る前に。ちょっとくらいはZ 8でも写真撮ってるんで、それは見てもらいましょうね。

えぐえぐの長岡花火の3尺玉。結構遠くから撮ってたのに見切らせてしまうっていう、そのくらいの規模感。下の街がほぼミニチュアみたいでしょ?今年は花火復活の年なんで、ほんとZ 8大活躍しそうなんですよねー、写真も動画も。ああ、やっぱり2台要りますね。
さて、話を戻しましょう。今日最初にD800やD810の写真をお見せしたのは、RAWで撮ることで、写真データは何年でも現役で使えるようになったことをお伝えしたかったんですが、RAW動画が本格的に導入されると、同じことが動画でも起こります。撮ったデータを10年でも20年でも「現役」として使いうるような未来が来るんです。その未来は、先日話題になったREDとの訴訟の終了により、一層明確になりました。今後おそらく動画の世界は、内部で8K圧縮RAW動画を撮れるかどうかが焦点になっていくだろうなと思います。
さて、そんな状況で、この前YouTubeでNikon Z 8の発表会を見ていると、結構多くの人が「動画いらない」とか「写真だけのカメラ欲しい」ってコメント書かれてたのを見たんですよね。気持ちはわかるんです、写真機としてのカメラってのは、やっぱり写真家にとって一番大事だから。その見方からすると、動画のアピールがすごく多かったように「見える」のも仕方のないことです、実際すごく動画アピール多かったから。でも僕はあれを見ながら思ったんですが、多分ニコンの人たちはもう「写真」と「動画」を区別してないんじゃないかということなんです。
もっと正確にいうと、もう少し先の未来においては「写真と動画」の区別は、少なくともカメラという機械の内部では「同じこと」になる、そんな未来をニコンは見据えているんじゃないかと。その「写真と動画が遂に巡り合う約束の地」から見たとき、今回のNikon Z 8は、「そこで戦えるボディ」として作り上げられたんじゃないかという気がするんです。
ただ、ニコンという会社はそういう未来が見えていても、それを「シュッ」とかっこよく提示しないんです。実直な職人気質の会社だからかもしれません。尊敬すべきクラフトマンシップです。だからこそ、誰かがその実直なクラフトマンシップの真髄を言葉にして落とし込まなきゃいけない。今回僕がZ 8のプロモーションを打診された時、運命だと思って引き受けたのにも、そういうところに1つの理由があります。
そう、ニコンが見据えている未来から逆算した時、RAWを内部で撮れるというのは、「写真家側から動画にアクセスするために必須の機能」なんです。今まだ、写真側のユーザーから見た時「動画は撮れないなあ」と思ってしまう理由は、それを「写真のように扱えないから」、その一点につきます。でもRAW動画が導入された時、触ってみれば一瞬でわかりますが、驚くほどに残されているデータは豊富で、まるで写真のRAW現像のようにして動画を仕上げることができる。
その時何が起こるのか。写真家が「写真のようなものとして動画を撮る未来」も同時に開くんです。僕ら写真家は生粋のビデオグラファーのようにはなれません。例えばある程度の長さの動画には言葉が必要だし、音楽も必要になってきます。でも、「RAW動画」がZ 9を経てZ 8で今後も搭載が確定した今、1つの未来が開けました。それを示すのがこの動画です。
たった15秒の花火の動画です。しかもこれ、真ん中のところで終わって同じ花火を2回あげてて、しかも後半はスローモーションを使ってるので、実質5秒の動画。でもこの短さこそ、写真家に開かれた、1つの「写真と動画の融合点」です。それを示すのは、この花火、今回は写真で表現するのが極めて難しいものでした。写真で撮ると、こういうふうになるからです。

非常に美しいのですが、上の動画の方を見て貰えばわかるように、この花火は実は2段階で花開くものでした。まず青色が開き、そしてそのあと、青以外の赤系統の色が開く。それは、花火師さんたちが「そのような花火」として構想したものです。でもその構想は、一枚絵の花火写真の中では表現しきれなかった。青が赤に上書きされて、冒頭の輝くような「青の光」の印象は、この写真では伝えきれないからです。でも動画、しかもたった5秒の動画だとその全行程が見える。
これは、写真という表現を否定したいわけじゃないんです。上の写真は一枚ものとしてはとても綺麗に撮れています。複雑な色がちゃんと分離して記録されている。Z 8は「写真機」としても素晴らしいことがわかります。ただ、この写真と、そしてZ 8の内部RAW動画を2つ並べてみると、もう1つの可能性があることを僕らに知らせてくれる。ほとんど写真のように編集でき、そして5秒という極めて短い「動画」を、あたかも一瞬見る写真のように展開できる、そんな「時間的に引き伸ばされた写真」の存在です。たった5秒の動画だけを撮っても、これまでのような「動画作品」にはならない。でも写真家が必要なのは一瞬です。時に1/100秒の止まっている写真もあれば、5秒間が重なり合って表現された写真もあれば、この動画のように「引き伸ばされた写真」として、動画を「写真のように捉える」ことも可能なんじゃないか。Z 8で撮ったRAW動画を見て、そう感じました。
実はこのような考え方をすでに実現しているのが、スマートフォンです。たとえばiPhoneには「Live Photo」という、写真と動画の中間点にあるようなメディアが撮れます。これはこれまでの動画と考えると、物語も音楽もないですし、写真とみなすには動きがある。でもここにこそ新しい領域が広がっているはずなんです。写真家が「動画」というメディアと、自分の表現領域として取り込むための、そういう領域が。
そのように考えた時、Nikon Z 8が提供するRAW動画という形は、動画クリエイターはもちろん、実は写真家にとってこそ必須の機能なんです。多くの写真家はLogを使うのも苦手ですし、カラーグレーディングもまだまだ上手くない。カットを切るのも動画専門の人たちからしたら未熟極まりない。でも、ワンカットだけでもいいなら、そしてそれを写真のように「現像」できるならば、それはもう、写真として考えてもいいんじゃないか。動く写真。そのような可能性をZ 8は準備している。
「いやでも、それはこれまでのミラーレスでもできたでしょ?」と言われるかもしれません。その通りです。でもニコンは動画であっても、光と色彩を可能な限り保持した、加工のない「生のデータ」を搭載しようとしたんです。なぜか。それは写真を撮るカメラを作ってきた会社だから、そして光学機器の会社だから。その目線があるからこそ、RAW画像のようなデータが動画にも必要だったと思うんです。REDに対して果敢に反訴したのにも、そこに未来があるとわかっていたからです。そこにニコンの矜持を見るんですね。僕があの発表会で見たのは、動いていようと止まっていようと、どこまでも美しく「光を残そう」とする会社の想いだったんです。それを2023年の今、最高の形で体現したカメラが、Nikon Z 8なんですね。
えらく長くなりました。この原稿はもうめっちゃ長いのでそろそろ終えようと思ってるんですが、実はこの「RAW動画」の存在は、「写真家から動画へのアクセス」という通路を開いてくれているんですが、もう1つの新機能が「ビデオグラファーから写真へのアクセス」という通路を開きます。それがまさに、HEIF形式の採用です。
それについては次回あたりに記事にしたいなと思ってますが、この2つの機能を搭載することによって、ニコンは「写真と動画の融合する未来」を見据えたカメラとして、Nikon Z 8を送り出した。そのことを僕は絶対に伝えておかなきゃいけないと思ったわけですね。
というわけで、今日はこの辺りで。次回はHEIFの話をしますね。お楽しみに。






▲別所隆弘さんによるMARSH連載コラム『シャッターを切る前の話』

▲別所隆弘さんによる打ち上げ花火の撮影テクニック解説記事

▲別所隆弘さんによるNikon Z 8レビュー記事



