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東京都写真美術館にて「即興 ホンマタカシ」が開催中

ホンマタカシ展

東京都写真美術館(恵比寿ガーデンプレイス内、東京都目黒区三田)にて、2023年10月6日(金)より『即興 ホンマタカシ』が開催中です。

本展は、2011年から2012年にかけて国内3ヵ所の美術館を巡回した大規模個展『ニュー・ドキュメンタリー】以来となる、ホンマタカシにとって約10年ぶりの個展。

建築物の一室をピンホールカメラに仕立て世界各地の都市を撮影した〈THE NARCISSISTIC CITY〉や、富嶽三十六景にインスピレーションをうけ富士山を取り囲むように各所で撮影した〈Thirty – Six Views of MOUNT FUJI〉などを展示しています。

目次

ホンマタカシのプロフィール

1962年、東京都生まれ。1999年に写真集『東京郊外』(光琳社出版)で第24回木村伊兵衛写真賞を受賞しました。行政やデベロッパーによる画一的な開発が進む東京郊外の風景と人々を一定の距離感で撮影し、叙情性を排した視点が高い評価を受けています。

即興 ホンマタカシ とは?

2023年10月6日(金)~2024年1月21日(日)の期間、東京都写真美術館にて開催されている『即興 ホンマタカシ 』。

写真家・ホンマタカシによる、直近の約10年で制作された作品が中心の個展です。その中でも、『カメラ・オブスクラ』という現在の“カメラのもとになった装置”の原理で撮影した写真が注目を集めています。

「作品内に偶然性を取り込むことに関心がある」というホンマ自身が全面的に関わり、タイトルにもなった『即興』を一つのキーワードとしている本展。

薄暗い部屋で楽器を奏でる演者や、それをのぞくための穴、吊り下げられた鏡など、写真の枠にとどまらない表現を用いることで、現代の写真表現にラディカルな問いを投げかけます。

カメラ・オブスクラとは?

カメラ・オブスクラとは、ラテン語で「暗い部屋(camera=部屋、obscura=暗い)」を意味する、画像投影装置。

ピンホール(針穴)を通して光線を装置に内部に取り込むことにより、投射される倒立像が出現します。この像に紙を透かし、写し取ることで、絵画の下絵を作成していました。

今回の作品は、建物の一室を窓も含めて完全に遮光し、光の差し込む穴を一点だけ作ることでカメラ・オブスクラを疑似的に作り、投影される像で写真を感光させて撮影しています。

展示作品

THE NARCISSISTIC CITY

展示室に入ると一番最初に見えるのは、壁面に空いた、人の顔ほどの大きさの穴。そして、穴の奥で光に照らされている、モノクロームの写真。

穴を覗くという行為は、観賞者から作品への距離・動きを制限することにより、展示作品の興味をいっそう引き立てます。

最初の穴に並ぶ写真に写り込んでいるのは、黒い丸。

目を引く異物感は流れを作り出すとともに、写真の一部が隠されることで、そこに写っている被写体や順路の先で待ち構えているであろう他の作品に期待感を抱かせます。

反対側の壁に展示されている作品は、カメラ・オブスクラ(の原理)によって撮影されたものですが、倒立していない文字が写りこんでいます。

装置の内部に文字をかたどった物体を置くことで、写り込む正立した文字とその周りに倒立して写る像は、『正立と倒立』『内部と外部』のような、対の関係を表しているようです。

都市にある建築物の一室をカメラの原点ともいえるカメラ・オブスクラへと改造し撮影された、東京やアメリカなどの都市の風景。

原始的な方法を用いて制作された、鮮明さや忠実さといった写真の特徴を持たないイメージは、現実の都市と違う見た目になることで、“見え隠れするある種の自己愛”を持つ都市の姿を捉えています。

ベッヒャー夫妻※により撮影された給水塔の写真を思い起こす写真や、X線により意図せず感光した写真や図らずも紙の継ぎ目がズレた写真は、メディアとしての写真を横断し、“即興”で作り変えていくようです。

そこには、失敗を失敗として捉えるのではなく、その偶然性にある種の価値を見出し、構図などの主観から如何に逃げるかを考え、「現代美術としての写真はメディアに過ぎない」と語るホンマタカシの考えが表れているように感じました。

※ベッヒャー夫妻:1950年代よりドイツで写真の共同制作をおこなっていた夫妻。タイポロジーと呼ばれる考え方をもとに、大型カメラを用いて近代工業時代の建築物を一定の条件下で撮影した。彼らの影響を強く受けた写真家がベッヒャー・シューレと呼ばれるなど、のちの写真表現に大きな影響を与えている。

ここにも壁面にポッカリと空いた穴が。穴の奥に見える薄暗い部屋からは、楽器を演奏する生身の人間が音楽を奏でています。

狭く区切られた空間の両側に貼られた、東京とニューヨークの写真。そして、天井から吊るされた鏡。圧迫感のある両側の写真と鏡は、巨大な都市空間に在る存在感の小ささを感じさせ、来場者を疑似的な都市空間に入り込んだように錯覚させます。

abstract 1

古来より美術の世界で描かれてきた、裸婦を想起させる写真が展示されています。

撮影に成功した写真と失敗した写真を同時に展示することで、裸婦のイメージから切り離されて見える写真はまさに抽象芸術。

また、間にある暗い隅に寄せられた3枚のポラロイド写真は、被写体やそれを見に近寄る行為によって、より強く印象付けられています。

Thirty – Six Views of MOUNT FUJI

「富嶽三十六景にインスピレーションを受けて制作した」という本作は、富士山という日本を表す象徴の1つと、現在進行形で作り変えられ拡がっていく都市を、“過去と比べて変化した姿を持つ現代”に再解釈しているようです。

正立に直された写真と倒立のまま展示された写真を織り交ぜることで生まれるリズムは、撮影中の露光時間や撮影日時から今日までの、時間軸のズレを意味しているのかもしれません。

アシスタントが撮影した写真も含まれている本作。ホンマは遠隔地から、現地にいるアシスタントへ指示を出していたそうです。

「撮影からプリントまで自ら行なうのは、いままでの伝統的な写真。もっとコンセプチュアルに写真を使うために、指示による齟齬や生じるミスなどの偶然が折り重なって思い通りにならないことも含めて、写真の作り方の可能性を考えたい」と語っていました。

編集後記(感想、まとめ)

ホンマタカシの約10年ぶりに国内開催された本展には、「写真を芸術表現の一つとする考えや偶然のミスを肯定的に捉える」といったホンマタカシの姿勢が各所に現れており、それらを探り・発見する感覚は、自分自身が彼の主張の中に取り込まれていくようです。

写真それ自体や美術と写真との関係性、都市の姿や富士山を捉えなおすために使用されたカメラ・オブスクラなど、読み解く要素や伏線が多く散りばめられています。

東京という都市空間に住む私自身も、写真や都市といった身近なものを捉えなおすきっかけになるなど、展示空間の随所に工夫が散りばめてあったおかげで、飽きることなく楽しむことができました。

「即興 ホンマタカシ」展示概要

会期:2023年10月6日(金)~ 2024年1月21日(日)

会場:東京都写真美術館(東京都)

時間:10:00〜18:00(木金曜は20:00まで/入館は閉館の30分前まで)

休館日:月曜(月曜が祝休日の場合は開館、翌平日休館)、年末年始(12月29日~1月1日)

料金:【一般】700円【学生】560円【中高生・65歳以上】350円

URL:http://www.topmuseum.jp/contents/exhibition/index-4540.html

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この記事を書いた人

家にある曾祖父が撮った古写真や父が飾ったプラチナプリントの写真など、幼少期より写真に触れる機会が多かったことから写真に興味を持ち、現在まで写真を続けている。
現在は写真を専門的に学ぶため、芸術学部に在籍中。好きな写真家はルイス・ボルツと高梨豊。好きな写真史の人物はリチャード・リーチ・マドックス、好きな写真技法は湿板と鶏卵紙。

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