フランスのパリとスペインのバルセロナに拠点を置く独立系出版社・OBENTŌ PRESSより、新作写真集『La route du paradis』とZINE『Le temps du paradis』を2冊同時に発売される相澤義和さん。
そこで今回は、写真集の発売を記念して、MARSH編集部が相澤義和さんにインタビュー取材を実施。
海外の出版社で発売することになった経緯、作品集2冊の棲み分け、今作に込めたメッセージなどを伺いました。

キッカケは、Instagramに届いた1通のDM。

ー本日はよろしくお願いいたします。 今回この写真集を発売するに至った経緯を教えていただけないでしょうか。
相澤:Michaëlisという、OBENTŌ PRESSのスタッフから、InstagramのDMでオファーをいただいたのが始まりです。
ーInstagramで!国内・国外に関係なく、「写真集を出さないか」というDMは多いのでしょうか?
相澤:ちょいちょいあるんですけど、「ちゃんと考えてくれてるな」と感じる文章は、そんなにないですね。
ーなるほど。その上で、OBENTŌ PRESSのDMを、写真集出版のオファーを承諾した理由を教えてください。
相澤:実は5〜6年前に一度、MichaëlisとZINEを出したことがあるんですよ。だから、そんなにおかしなことはしないだろうと思って。
ー5〜6年前というと、既にSNSで相澤さんがある程度認知されていらっしゃる時代でしょうか。
相澤:まだ(SNSを)頑張っていた時ですね。その辺りで一度ZINEを出しました。
ーその時はどんな経緯で、ZINEを出版されたんですか。Michaëlisは5〜6年前も、相澤さんのInstagramからDMを送っていたんでしょうか?
相澤:そうですね。その当時もInstagramのDMでちょいちょいやり取りしてて、「お前は素晴らしいね」みたいなことを言ってくれたので、気持ち良かったです(笑)
それで話が進んで、Michaëlisがフランスのクラウドファンディングでお金を集めて、ZINEを出版しました。日本でも発売しましたよ。
ーどんなタイトルのZINEだったんですか?
相澤:えーっと、『PLOOF OF LIFE』です。
ー初めて聞くタイトルです。今どこかで手に入れることはできますか?
相澤:多分できないんじゃないですかね。どこにもないと思います。
ー『PLOOF OF LIFE』は、どんな作風の作品だったんですか?
相澤:その時付き合ってた恋人を撮っているんです。『愛の輪郭』の前の、今から7〜8年前ですね。
ーその当時から相澤さんの作品は、海外で高い評価を受けていたんでしょうか?
相澤:もう担当者とは疎遠になっちゃったんですけど、規模はわかりませんが、美術館で展示だとかっていう話はあるにはあったのですが、アカウントなくなったりとかで全部白紙になりました。いろいろあったのですが、ちょっともう英語わかんねえや、ってやり取りを止めちゃったんですよ。疲れちゃって。もう連絡取れなくなっちゃったんですけど、そういうのもあったりとか。色々ありましたね。
ー相澤さんのフォロワーさんは、海外(在住の方)の割合が多いんでしょうか?
相澤:今は多分日本の方が多いですね。昔は海外の人が多かったです。ヨーロッパは2割ぐらいですかね。そんなにないと思います。
ーなるほど。話を戻します。5〜6年ぶりにZINEを出版して以来、久しぶりにMichaëlisからDMが届いて、もう1回写真集を出すことになったと。
相澤:そうそう。Michaëlisが新しく、「OBENTŌ PRESSという出版社を立ち上げるから、最初の1冊目をお前で出したい」というDMが届いたんです。
世界中にいるアーティストを、ヨーロッパとかアメリカに広める役割を果たしたいということを言っていて、それだったら良いかもしれない、と思って。そういう感じだったらぜひ、と承諾して出版する流れになりました。
ー今回2冊出されたのには何か理由があるのでしょうか。
相澤:最初は1冊の予定だったんですけど、1冊用に、写真を500枚ぐらい送ったんですよ。花も女性もスナップも、全部一括りで1冊にしたかった。でも、Michaëlisが「【花と女性】【女性とスナップ」】で分けたい」と言ってきたので、なるほどそれでいいかと納得して、2冊作ることになりました。
写真集【route】と、ZINE【temps】。

ー『La route du paradis』と『Le temps du paradis』という、作品集の読み方なんですけど、それぞれ【ルート=route】と【テンプ=temps】で合っていますか?
相澤:そうですね。【route】が「道」で、【temps】が「時間」だったと思います。「楽園への道」と「楽園の時間」という意味だそうです。
ー今回は2冊同時発売ですが、【route】は写真集で、【temps】はZINEです。写真集とZINEはどう棲み分けされたんですか?
相澤:あー、どうなんだろう。多分、写真集は(ZINEに比べて)格調高いものを作りたかったんだと思いますよ。
ーたしかに、【route】には“SPECIAL EDITION”がありましたね。
相澤:そうそう。逆に【temps】、ZINEはあえてもうちょっと雑多なイメージで作ったんじゃないかなっていう気はしてるんですけど。
ーあ、では基本的に構成やセレクトはMichaëlisに任せているのでしょうか。
相澤:そうですね。「これとこれは使わないで」とか「やっぱりこれをやめよう」くらいは言いましたけど。「どういう風に受け止めてるのかな?」と思う場面はちょいちょいありましたけど、別に正解はないし。自分とちょっとズレてる部分があったとしても、それはそれで、そのズレが面白いだろうし。
ー今回の作品集に掲載されている写真は、いつ頃撮られたものなんですか。
相澤:バラバラです。でもまあ、割とここ最近が多いかな。それに、ネットには出さないけど、こういう機会だったら出していいよ、と言われていた、長期間撮りためていた女性の写真を追加した感じですかね。
ー今回のために撮り下ろした写真はあるのでしょうか?
相澤:それはないです。ただ、今回のためというわけではありませんが、過去に発表していない写真はあります。
ー普段使われているGRⅡやX100V以外のカメラで撮られた写真はありますか?
相澤:MARSHの連載で使用したカメラを使ったものもありますよ。SIGMA dp1 Quattroやサイバーショット DSC-RX100M5Aで撮影した写真が、ちょいちょい含まれているはずです。
ー大変光栄です。相澤さんから見て、【route】に掲載されている女性の写真と、【temps】に掲載されている女性の写真の違いは何かありますか?
相澤:どうだったかな。ないと思いますね。OBENTŌ PRESSが8月に日本で2日間展示をするらしいので、Michaëlisに聞いてみたらどうですか。私も在廊する予定ですし。
ー是非聞いてみたいです!モデルさんの中には、【route】と【temps】のどちらにも出演されている方がいらっしゃいますね。
相澤:そうですね。なんとなく感覚で当てはめているんじゃないかなという気はしますけどね。どちらかというと【temps】の方が生活に寄っていますよね。
ーたしかに、プライベートショット感が強い印象はありますよね。OBENTŌ PRESSの紹介文にも”プライベート瞬間”が詰まっている、と記載がありました。【temps】に登場する女性は、生活の一部としての女性であって、女性が主題ではないというか。プライベートの中に女性がいる印象です。逆に【route】は、女性と植物が作品内で主題になっている印象を受けました。
相澤:どちらかと言うと、基本的に羨望の目で見てるのは【route】ですね。憧れているというか……すごく植物好きなんですよ、実は。皆あまり認めてくれないんですけど、女性を撮っているときより、植物を撮っているときの方が好きなんですよ。
ー【route】のSPECIAL EDITIONに付属する3枚の写真はどんな写真なんですか?
相澤:はっきりと覚えてないんですけど、ランダムではなくて、特定の3枚に決まっているはずです。
ー届いてからのお楽しみ感があっていいですね(笑)
作品は、鑑賞者に委ねるもの。

ー今回の2冊の写真集を通じて、伝えたいこと、表現したいことがあれば教えてください。
相澤:『諸行無常』ですかね。それは常に頭に置きながら撮っています。常に入れ替わって、移り変わっているというか……。時間が流れていく中で、写真を見る人それぞれにも物語があるじゃないですか。それを自分は撮っていて、見て読んでもらう人にも、時代や時間の移り変わりを感じるものになってもらえればいいかな、と常に思っています。作品集にする場合の話ですけど。
私は、基本的には媒介する役割になれればと思っています。プロセス・途中のものだと思っているので、採取してきたモノを、何のフィルターもなく見てほしい、という気持ちは常にあるんですよ。今回出版する2つの作品集も、そうなっていればいいなと。今回に限らず常に、どの作品でもそうなんですけど、根本的にあるモノです。
ー作品の評価や物の見方を、見た人に委ねる、ということですか?
相澤:もちろん、もちろん。だって自分が「エロじゃない」と言っても、人によって見方は変わるじゃないですか。たとえば、亀の首とか。あの写真は亀が首を伸ばしてる場面に「おぉ!」と思わず撮ったんですよ。
モノを見て判断するのはその人じゃないですか。委ねるしかないと思うんです。それを自分が「こうですよ」って言ったところで、そんなに面白いもんじゃないだろうから。あ、でも「この女性はこういう見られ方をする可能性があるから、この写真は掲載を止めよう」という風に削除することはあります。
色々細かいことはあるんですけど、「こう見られたらいいかな?」と言い出すと説明的になってしまうので、あんまり言わないようにしています。
もちろん、特定の写真をセレクトした理由や想いは1枚1枚あります。でも、そこは写真を目にする人にお任せしたいという思いがありますね。
ーたしかに、1から10まで作品の意図を説明するのは、何だか野暮ったいですよね。
相澤:写真を見て感じてもらって、感じてくれた人が「あ、そういう見方なんだな」と思ってコミュニケーションを取っていくことが、写真におけるコミュニケーションの本質だと思うんです。人は見たものを自分の想像できる範囲内でしか解釈しませんから。
私が日頃の写真に込めているものは、たとえばInstagramのフォロワーさんとか、コアなファンの人は知ってくれているわけですよ。相澤はきっとこういう意図でこの写真を載せたんだろう、と考えてくれる人がいるわけですよ。だからそれが私の解釈とか提示と違っていたとしても、それで十分だと思っています。

相澤 義和(あいざわ・よしかず)

1971年、東京都東久留米市生まれ。1996年、四谷スタジオ(現・スタジオD21)入社。2000年に相澤義和写真事務所を設立し、フリーランスとして独立。2019年に初写真集『愛情観察』を発行。2020年4月に、2作目となる写真集『愛の輪郭』が発表された。Webメディア『MARSH(マーシュ』にて、フォトコラム『東京さんぽみち』を連載中。
■Twitter:@aizawa_yos
■Instagram:@aizawa_yosikazu @aizawa_7
作品集を購入する
今回のインタビュー記事内で紹介した2冊の作品集・『La route du paradis(写真集)』と『Le temps du paradis(ZINE)』は、OBENTŌ PRESSの公式Webサイトより予約購入可能です。
【予約する】ボタンより、販売ページ(外部サイト)へお進みください。
写真集『La route du paradis』

La route du paradisは、自然と女性の要素をテーマにした写真集です。
相澤さんと企画の話をしたときに、相澤さんの作品の中でも特にエロティックな作品を集めた写真集を作ろうということになり、女性と花や木などの自然の要素を中心に、女性の体の最も貴重で秘密の部分を思わせるエロティックな形をした写真集になりました。
SPECIAL EDITIONと通常版の違いは、相澤さんと一緒に選んだ3枚のプリント写真が付いていることです。富士クリスタルアーカイブスプリームという紙に印刷された写真なので、コレクションするにも芸術的で、画像収集が好きな人には特別な付加価値となりますね。(text:OBENTŌ PRESS)
発売日:2023年7月中(未定)
価格:38ユーロ(日本円で約5,896円)
ページ数:116ページ
サイズ:17×24×1.2cm
※本作品は海外の出版社による受注販売です。注文〜(印刷〜発送〜)到着まで、1ヶ月ほどの時間を要します。
※OBENTŌ PRESSが8月に東京に滞在するため、7月末以降に注文した場合、到着が9月以降になる可能性があります。
ZINE『Le temps du paradis』

Le temps du paradisは、東京の女性と美しい風景の間にある、相澤さんのライフスタイルとストリートフォトを追ったZINEです。生々しく、写真家のもうひとつの個人的な側面を見ることができます。
東京の街角で無造作に生活する人々の写真や、東京のナイトライフの写真、ラブホテルで撮影された様々な女性のエロティックな写真も掲載されています。
このZINEには、フォトグラファーのプライベートな瞬間が詰まっているのです。(text:OBENTŌ PRESS)
発売日:2023年7月中(未定)
価格:26ユーロ(日本円で約4,344円)
ページ数:156ページ
サイズ:14.8×21×3cm
※本作品は海外の出版社による受注販売です。注文〜(印刷〜発送〜)到着まで、1ヶ月ほどの時間を要します。
※OBENTŌ PRESSが8月に東京に滞在するため、7月末以降に注文した場合、到着が9月以降になる可能性があります。
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