ファインダーや液晶モニターを覗いて、被写体が写っていることを確認して、シャッターを押す。
現代社会に生きる私たちは、日頃から写真を撮る際などに、何気なく当たり前に【覗く】という行為を行なっています。
ところが、この【覗く】という行為は、300年以上も前から、光学を利用した視覚体験・あるいは娯楽として存在していました。
現在東京都写真美術館にて開催されている「TOPコレクション 何が見える?『覗き見る』まなざしの系譜」では、 【覗き見る】をテーマに、様々な時代で誕生した視覚装置の数々や、覗き見ることでイマジネーションを広げた現代作家の作品を展示しています。
「TOPコレクション 何が見える?『覗き見る』まなざしの系譜」とは?
2023年7月19日(水)~10月15日(日)の期間、東京都写真美術館にて開催されている「TOPコレクション 何が見える?『覗き見る』まなざしの系譜」。
【覗き見る】をテーマに、東京写真美術館に所蔵された、写真史・映像史にまつわるコレクション展です。
会期中は展示替えをしながら、歴史的収集品約270点を展覧予定。
覗き見ることを可能にした視覚装置の歴史をたどりながら、コレクションのレプリカを展示することにより、見るだけではなく実際に触れることのできる、体験型の展覧会です。
また、スタジオではアニメーションの原理を体験できるワークショップも開催予定。詳細は、記事最後の関連イベントをご覧ください。
本記事では、展示の様子を5つのエリアに沿ってレポートします。
1.覗き見る愉しみ

18~19世紀に流行した「ピープショー」は、最初期の覗き見る視覚装置。
一つの覗き穴から中の景色を覗き見て楽しむ、からくり装置のことをピープショーと呼びます。
ピープショーには様々な形態があり、カメラの前進ともいわれるカメラ・オブスクラを転用した例もありました。
本エリアでは、ピープショーをはじめ、江戸時代に日本でも楽しまれた覗き眼鏡、のぞきからくりなどが展示されています。
2.観察する眼

覗き見ることができる世界を格段に広げたのが、16世紀末から17世紀初頭に発明された顕微鏡と望遠鏡、そして19世紀半ばに登場する写真術です。
肉眼では見ることができないミクロの世界を写す顕微鏡、月や星など遠い場所にある光景を写す望遠鏡、一瞬の動きを捉えるカメラ。
本エリアでは、これらの装置によって見ることが叶ったイメージの数々が展示されています。

3.立体的に見る

1838年に初めて発表されたステレオスコープは、異なる角度から撮影した2枚の写真を、左右それぞれの目で同時に見ることで、立体的に見えるようになる装置のこと。
また、立体的に見える写真のことを、ステレオ写真と呼びます。
ロンドン万国博覧会の出展で話題になり、一躍人気が高まった、ステレオ写真。
肉眼でみた光景をそのまま写し出した写真に一工夫加えることで、立体的な世界を覗き見ることができる……。
現代でいうVRを体験したときの驚きや興奮と、重なる部分があったかもしれません。

本エリアでは、実際にステレオスコープを覗き見ることができます。
4.動き出すイメージ

19世紀には、錯覚を利用して静止画がまるで動く絵に見える、様々な装置が登場しました。
その1つが、キネトスコープです。
トーマス・エジソンが写真家と協力して開発したキネトスコープは、1894年に一般公開されました。
箱の中を覗き込んで映像を楽しむキネトスコープは1人ずつしか見られず、効率が悪かったため、広く普及しませんでしたが、本エリアではレプリカで当時と同じ体験ができます。
5.「覗き見る」まなざしの先に

本エリアに展示されているのは、覗き見ることからイマジネーションを広げた、4名の作家の作品。
医療行為として、身体の内部を覗き見る技術(X線レントゲン)を用いた作品は、写真家の奈良原一高さんが、生死に関わる病気を告げられ、入院中に受けたMRIやX線検査から着想を得て撮影したもの。

ほかにも、主婦の日常を第三者視点で記録した映像や、階段を落ち続ける乳母車を小型CCDカメラで撮影し続けるインスタレーションなど、日常にある「覗き見る」行為について考えるヒントとなるような作品が展示されています。
編集後記(スタッフ・橋本)
テレビやPCなどで、好きな映像を見る。
カメラやスマートフォンで、良いと感じた光景を写真に撮る。
『覗き見る』をテーマとした今回の展示によって、普段何気なく行なっていた、覗き見ることについて考えさせられました。
カメラを構えたとき「なぜ撮るのか、なぜ見たい・写したいと感じたのか」覗き見ようとすることの意味を考えながら、シャッターを切ろうと思います。
展示概要
主催:東京都、公益財団法人東京都歴史文化財団 東京都写真美術館
会期:2023年7月19日(水)~10月15日(日)
会場:東京都写真美術館 3F展示室
住所:〒153-0062 東京都目黒区三田 1-13-3恵比寿ガーデンプレイス内
電話:03-3280-0099
URL:www.topmuseum.jp
開館時間:10:00〜18:00(木・金曜は 20:00まで、ただし2023年8月31日までの木・金曜は21:00まで) 入館は閉館 30分前まで
休館日:毎週月曜日(月曜日が祝休日の場合は開館し、翌平日休館)
観覧料:一般 700(560)円/学生 560(440)円/中高生・65歳以上 350(280)円 ※( )は有料入場者20名以上の団体、当館の映画鑑賞券ご提示者、各種カード会員割引料金 / 小学生以下、都内在住・在学の中学生および障害者手帳をお持ちの方とその介護者(2名まで)年間パスポートご提示者は無料/第3水曜日は65歳以上無料/ 7月20日(木)- 8月31日(木)の木・金17:00-21:00はサマーナイトミュージアム割引(学生・中高生無料/一般・65歳以上は団体料金)※各種割引の併用はできません。
関連イベント
担当学芸員によるギャラリートーク(手話通訳付き)
2023年8月18日(金) 14:00~
2023年9月15日(金) 14:00~
2023年10月13日(金) 14:00~
担当学芸員によるギャラリートークを手話通訳付きで行います。どなたでもご参加いただけます。
会場|東京都写真美術館 3階展示室
参加費|無料(要チケット提示)
※当日有効の「TOPコレクション 何が見える?」展チケット(「年間パスポート2023」、「東京・ミュージアム ぐるっとパス」を含む)または展覧会無料対象の方は各種証明書等をご持参の上、3階展示室入口にお集まりください。
映画のはじまり体験ワークショップ【事前申込】
2023年8月19日(土) 11:00~12:30
2023年8月19日(土) 14:30~16:00
幻灯機やフィルム映写機など色々な映像装置を体験しながら、プラクシノスコープでアニメーション作りをおこないます。
講師:郷田真理子(フィルム技術者)
会場:東京都写真美術館1階スタジオ
参加費:無料
定員:各回とも20名 *事前申込制、先着順
体験時間:90分程度
対象:小学生以上(大人のみの参加も可能です) *小学2年生以下は必ず保護者とご参加下さい。小学3年生以上は子供のみの参加も可能です。保護者同伴で未就学児童の入場も可能です。
プログラムの詳細および申し込み方法はこちら
このほか、出品作家によるアーティストトーク(① 9月9日(土)講師:石川亮、南俊輔 ②10月15日(日)講師:伊藤隆介)、およびゲストによるレクチャー(9月24日(日)講師:草原真知子、細馬宏通)を予定しております。
詳細は決まり次第ホームページでお知らせいたします。



