愛を撮るのに、構図は要らない。【写真家・相澤 義和インタビュー 〜後編〜】

前回の (前編)に続き、写真家・相澤義和さんのインタビューをお送りします。(後編)では、相澤さんが使用しているカメラや設定などを伺いました。

シャッターを押す、という愛情表現。

ー相澤さんにとって、昔から恋人は写真を撮る対象だったのでしょうか。

 

相澤:そうですね。これまでずっと恋人の写真を撮っていました。が、当時はフィルムカメラを使っていたので、現在のように2,000〜3,000枚も撮っていたわけではありません。今はデジタル(カメラ)を使っているので、好きなだけ撮れますし、撮っているうちに「もっと撮りたい、もっと撮りたい」ってなっちゃうので、つい沢山撮っちゃいますよね。

 

ーとはいえ、会話しながら2,000〜3,000枚もの枚数を撮影するのは、なかなか至難の業だと思うのですが…常にカメラは手元にある状態で過ごしているんですか?

 

相澤:カメラは常に手に持ってます。ボーッとしながら、「あ、なんかいいな」って瞬間に撮るようにしています。さすがに食事中は手離してますけど、すぐ手に取れる場所に置いてますね。

 

ー写真を撮ることが、相澤さんにとって愛情表現の1つであるということでしょうか。

 

相澤:もちろん、それもあります。カメラを向けている時は、「今、僕は君を見てる」と相手にも分かるし、シャッターを押すだけで、「僕は君に関心がある」ということを伝えられると思うので。もちろん言葉で「好きだよ」と伝えることはあります。恋人に対してシャッターを押すことは、それに近い感覚ですね。

P(プログラム)モードで撮影する。

ー普段はどのようなカメラで恋人を撮られていらっしゃるんですか?

 

相澤:『愛の輪郭』に掲載されている写真でいえば、RICOH GRがメインですね。それに、FUJIFILMのX100Tと、仕事用で使っているCanon EOS 5D MarkⅣ。あと…iPhoneXRですね。

 

ーえっ、iPhoneで撮られた写真があるんですか?

 

相澤:あります、あります。iPhone、すごくいいですよ。一番最後に撮った、この写真もiPhoneですし。

 

ーこの写真がスマホで撮影されていたとは驚きです…。iPhoneで撮った写真は加工されてるんですか?

 

相澤:ちょっとだけコンストラストを上げてます。でも、それぐらいですね。

 

ーiPhoneもそうですが、使用されているカメラに、コンパクトデジタルカメラが多いこともビックリしました。

 

相澤:そうですね。設定とか、特に専門知識は要らないカメラを使っています。撮影する時もP(プログラム)モードですし。

 

ーそれもまた驚きました。【いい写真】を撮れる一瞬を逃したくないから、マニュアルではなくPモードにされているんですか?

 

相澤:そうです。それと、『愛の輪郭』を見てもらえると分かると思うんですが、恋人が撮った写真も結構載ってるんですよ。電源をONにするだけで、誰でも手にしてすぐ平均的な写真が撮れるのがPモードです。 僕の恋人は全くカメラの知識がないので、恋人が撮りたい時にすぐ写真が撮れるようにPモードを設定しています。

カメラメーカーがPモードをつくった理由は、『誰もが確実に、平均的な写真を撮れるようにするため』じゃないかと思うんですが、仕事でカメラを使っていると、つい固定概念が働いて「マニュアルモードで、自分で設定をコントロールしなくちゃいけない」と思ってしまいますよね。決してそれが間違っているとは思いませんが、そのこだわりは別に仕事以外では要らないな、って思ったんです。

基本的に『愛の輪郭』は、趣味にすらなっていない、趣味よりもフラットな写真なので。誰もが街中で、撮りたい時に何も考えずにスマホで写真を撮りますよね?それと何ら変わらないんですよ。その集大成がこの一冊なんです。

ー趣味よりもフラットな写真…。クライアントワークではないプライベートワークというか、ライフワークというか、ライフログというか…これまでの話を聞いていると「ワーク」という言葉が適切ではない気がします。

 

相澤:確かに、ワークではないですよね(笑)。写真って、突き詰めたくなるんですよ。でも、今や世界中のほとんどの人たちが、iPhoneやスマートフォンを持っている。つまり、カメラを持っているんです。写真は、誰のものでもあると思っています。カメラマンなど特定の人だけが突き詰めるものじゃなくて、皆のものだよねって感覚で撮っていた方が、人の心に刺さるんじゃないですかね。もちろん、刺そうと思って撮ってるわけじゃありませんが。

たとえば、プロのカメラマンが「写真っていうのは、こういうものだ…」と写真に興味がない方に熱弁しても、その人たちからは「へーすごいねー」と相槌が返ってくるだけで、結局のところ大して聞いてなかったりするんですよ(笑)。玄人の写真論なんて、ほとんどの人が興味ない。それよりも、「なんかよく分かんないけど、いいね」という感想が出る写真の方がいいかなと思うんです。

何年もキャリアを積んだ写真家が「いいね!」って思う写真と、街を歩いている高校生が「いいね!」って思う写真に、本質的な意味の違いはないんです。同じ価値があると思っています。だから、専門的なことが一切ない、皆の感情に届くような撮り方に辿り着いたんです。

構図なんて、どうでもいい。

ーこれは個人的なエピソードなんですけど。実は昔、相澤さんが撮った写真に憧れて、当時の恋人に同じシチュエーションの写真を撮らせてもらったことがあるんです。その写真は、そこまで構図も複雑ではないように見えましたし、これなら自分でも撮れるんじゃないかって。でも、何回撮っても相澤さんのような写真は撮れませんでした。

 

相澤:いいじゃないですか(笑)。それって、けっこう大事なことだと思いますよ。

その時、(筆者は)僕が撮った写真に近づけようとしましたよね。それってつまり、彼女自身から目を離しているんですよ。彼女が今どういう気持ちでいるか?より、「誰かの写真に近づけよう」という思考が勝っちゃったんだと思います。もし、その写真に魅力がなかったとしたら、それが原因なんじゃないですかね。

自分が大好きな恋人にカメラを向けて、「どういう気分でどういう顔をしているんだろう?」と興味を持って写真を撮ろうとしたら、構図なんてどうでもいいんじゃないか、と思っています。もっと言えばピントも、露出も、どうでもいい。カメラがiPhoneだっていい。彼女の内面を見ていたら、少し似た写真になっている写真になったんじゃないかな。表面的に似ているのではなく、本質的という意味で。

 

ーそれができていたら、僕が相澤さんの写真を見た時に感じた「何かいいね!」という感情が芽生えるような写真が撮れたかもしれない、と。

 

相澤:そうです。おそらく「彼女よりも自分の写真を優先してくれ」って撮ってしまったから、しっくりこない写真になってしまったんじゃないですかね。写真って、そういうものなんですよ。「あの人みたいな写真が撮りたい」「あの人の作品に寄せたい」って思うこと自体は良いことだと思います。でも、ただ構図やライティングを真似るんじゃなく、「撮った人がどういうメンタリティでシャッターを押したのか」「撮られている人はどんな気持ちだったのか」と考えることを追求した方が、きっと【いい写真】に近づけるんじゃないかと思います。

相澤 義和(あいざわ・よしかず)

1971年、東京都東久留米市生まれ。1996年、四谷スタジオ(現・スタジオD21)入社。2000年に相澤義和写真事務所を設立し、フリーランスとして独立。2019年に初写真集『愛情観察』を発行。2020年4月に、2作目となる写真集『愛の輪郭』が発表された。

■Twitter:@aizawa_yos

■Instagram:@aizawa_yosikazu @aizawa_7

 

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