愛を撮るのに、構図は要らない。【写真家・相澤 義和インタビュー 〜前編〜】

今回のGooPass Magazineでは、写真家・相澤義和さんのインタビューをお届けします。被写体の魅力を最大限に引き出す、体温まで感じるような写真で、InstagramやTwitterなどSNSを中心に、男女問わず圧倒的な支持を集める相澤さん。

4月2日には、3年にわたる恋人との日常を撮りためた写真集『愛の輪郭』を発表されました。写真集には、リビングやキッチン、ベッドルームやベランダで、同じ時間を過ごす恋人との日常を切り取った、かけがえのない写真が惜しみなく散りばめられています。今回のインタビューでは、大切な人を撮影する際のポイントなどを伺いました。

新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、外出自粛が続く今日。当記事が、今あなたの隣にいる家族や恋人を撮影する、大切な人と過ごすかけがえのない時間を写真に残す、ヒントになれば幸いです。

※本インタビューは、2020年4月12日に、ビデオ通話ツール『Zoom』によって行われたものです。

一回あたりの撮影枚数は、2,000〜3,000。

 

『愛の輪郭』、発売おめでとうございます。今回の写真集では、恋人との3年間を記録した作品だと伺いました。相澤さんは、普段から恋人の写真を撮影されているんでしょうか?

 

相澤:そうですね、(写真を撮るのは)呼吸に近い感じですね。1回会う度に、大体2,000〜3,000枚は撮影してます。常にカメラを持って、四六時中撮っていますね。

一緒にいて撮られることが当たり前になっているので、カメラを向けても今さら身構えないというか。日常生活を過ごす上で、カメラを向けることを受け入れてくれていますね。

ただし、今回の写真集に掲載されている写真は、最初から一冊の本にしようと思って撮っていた写真ではありません。ただ同じ時間を過ごす中で撮影した写真の1枚1枚が形になっただけなんです。たとえば、ベランダでシーツを干している1枚の写真もこれといって特別な時間というわけではありませんし、その前後には写真集に載っていない、約2000枚の写真と、さらに2人で過ごした時間があるんですよ。

 

ー2,000枚!それではこの1枚1枚の写真が、2,000枚の中から選ばれた、一番【いい写真】なんですね。

 

相澤:厳密に言えば、一番【いい写真】ではありません。1冊の写真集全体の中で、バランスの取れた写真を選んでいます。

自分が思う【いい写真】を1枚1枚並べても、”いい写真集”にはならないと思っているので。一番ではないけど、日常の中のちょっと可愛い一枚だとか。中には、本当に何も引っ掛かりのない写真も入っていますよ。

2人の関係性が、写真にうつる。

ー相澤さんの恋人は、元々カメラ慣れしているモデル・被写体経験がある方だったんですか?

 

相澤:いえ、一般人ですよ。被写体活動をした経験もない普通の社会人です。ただ、不思議と出会った当初から、『撮らないでよ』と言われたことは一度もないですね。

最初から写真慣れしていたわけではないんですけど、撮られるのが当たり前っていう感覚を持っているんですかね。一度も拒否されたことはないです。

 

ー3年間同じ時間を過ごす中で、お互いの関係性が深まっていき、それによって作風が変化することはありましたか?

 

相澤:作風が変わるということはありません。それは私のスタイルによるところが大きいかもしれないです。

一般的に写真を撮る時は、「こういう写真が撮りたい!」と、カメラマンが写真をイメージしてから撮影に臨みますよね。たとえば、飛行機を撮りたければ、望遠レンズを用意して、飛行機を大きく写す構図を頭の中で練ってから撮影されると思うんですけど。

でも、僕の場合は「どういう写真を撮ろうか」っていうのは、基本的に考えていないんです。恋人をなんとなく「いいな」って思った瞬間にシャッターを押す。ただ、その行為を続けているだけなんです。「こういう写真になるんだろうな」と頭で考えずに撮影することを心がけています。

僕が思うに、作風というものは0(ゼロ)に近ければ近いほどいい。作風がなければないほど、写真にうつる人の魅力がダイレクトに伝わると思っています。なので、作風が変わる、ということは基本的にありません。そもそも作風をなくすことを目標にしていますし、僕は、ただ写真を撮っているだけなので。

ーなるほど。それでは、関係性が深まることで、写真のアウトプットが変化することはありますか?

 

相澤:それはあると思います。関係性はもちろん、撮られる側、撮る側双方の環境や体調、精神状態によって、うつる写真は日々変容していくものだと思います。そういうのを敏感に感じ取ることは大事かもしれませんね。

 

『愛の輪郭』に掲載されている写真は、3年間を時系列で並べたものなんでしょうか?それとも、どこか一定の期間を切り取ったものなんでしょうか?

 

相澤:ほぼ時系列通りですね。もちろん、載せられなかった期間も多くあります。

写真集を発刊するにあたって、まず最初に出版社へ大体2,000枚ほどの写真を送ったんです。その2,000枚には、恋人と会った日に撮影した写真が全て含まれていました。とはいえ、当たり前ですけど2,000枚全てを写真集に載せることはできないので(笑)、削ってはいますが。

『愛の輪郭』を発表するにあたって、時系列で3年間を追うことが大事だと考えていました。

 

ー今回の写真集、どの写真も本当に素敵でした。ただ個人的には、特に感情を揺さぶられた写真が、写真集の後半に集中していたんです。3年間を一緒に過ごす中で、お互いの関係性が深まっていって、写真にうつる表情が変わっていったのかもしれないな、と感じました。恋人と過ごす時間が増えるほど、写真の魅力が増していく、というか。とっても素敵なことだと思います。

 

相澤:やっぱり、出会って最初の頃は、少なからず表面的な部分で恋人を見ていた部分はあると思います。きっと、写真集を見ていただいた方には伝わっていると思うんですけど。

一緒に過ごす時間の経過と共に、段々だんだんと関係が濃密になっていく。精神が交わっていく、親交が深まっていく。

3年間一緒に恋愛していると、やっぱりその関係性が写真に出てくるんですよね。『愛の輪郭』では、その変化ができるだけ伝わるように、編集の方と物語の進行を相談しながら一緒に並べたつもりです。

ただ、シャッターを押すだけ。

ー恋人の写真を撮影する際に、心がけていることがあれば教えてください。

 

相澤:さっきの話と被るかもしれませんが、「こういう写真にしよう」と思わないことですね。ただ、撮るだけ。シャッターを押す、という作業に徹することを、一番に心がけています。

 

ーただ、撮るだけ。

 

相澤:そうです。「こういう写真にしよう」と決めずに撮る意図としては、被写体の自由な姿を写したいからです。

「ああして、こうして」と撮る側が要求してしまうと、自由な動きが止まってしまうんですよ。たとえば、子供が公園で遊んでいて、はしゃいでる魅力的な姿を撮りたいとします。それで、「こういう写真が撮りたいから、ここに並んでくれる?」ってお願いしたら、子どもたちは急にかしこまってしまいますよね。そんな状況では、はしゃいでいた、本当に自分が魅力的だと感じた、子供の姿を撮り逃してしまいます。

「こういう写真にしよう」と決めないということは、「ここの光が綺麗だからここで撮ろう」とか、「背景に邪魔な障害物がうつるからあっちに移動して撮ろう」とか、そういうこだわりなどは捨てる、ということです。普段の仕事で求められるような写真を技術的に撮影する、いわゆるクライアントワークとはだいぶ違った撮り方になりますね。

 

ーなるほど。被写体が自由な状態で撮る写真が、相澤さん考える【いい写真】の1つなのでしょうか。

 

相澤:そうですね。少なくとも私的な写真行為の上で僕が「こういう写真が撮りたい」「こんな光の下で撮りたい」と指示して撮影する写真は、もう魅力を感じなくなってしまったんです。

 

もちろん仕事で依頼されれば撮りますけど、自分の私的な記録として残る写真を撮るときに、今さら「この光がいい」「この構図がいい」「このポーズがいい」とは、特に思わなくなっちゃったんですよね。

もちろん、やり尽くしたわけとは思っていませんし、他の写真家さんの写真であれば話は別なんですけど。自分から指示をして撮影する写真に、魅力や面白さを感じなくなってきてしまったんです。それで、「もっと自由な姿を写すにはどうすれば良いんだろう…」と考えた時に、「一切自分を出さずに、シャッターを押すことだけにこだわろう」と思ったんです。

 

ー自然な表情を写すために、「シャッターを押すことだけを意識する」以外で心がけていることはありますか?たとえば、撮影中にコミュニケーションは発生するのでしょうか。

 

相澤:そうですね。コミュニケーションは発生しますし、重要だと思っています。優先順位としては、まず1にコミュニケーションを取ること。2に写真を撮ることです。喋ることがメインですね。写真を撮る作業は、シャッターを押すだけなので。コミュニケーションに重点を置いています。

 

ーそれは、恋人を撮影する際も同じでしょうか。

 

相澤:恋人を撮る際もコミュニケーションは発生しますし、重要だと思っていますよ。恋人とは3年の付き合いなので、多少”なあなあ”になっている部分もありますが。

ニュアンスを伝えるのが難しいんですけど、写真を撮影する上で重要なのは、「写真を撮ることを目的にしないこと」だと思っています。会話などのコミュニケーションを

撮影行為よりも重要視することによって、被写体の表情が変化する。動きや表情に新しい発見があるんです。

 

ーたとえば、撮影中はどんな会話をされているんですか?「いいね〜」と被写体を褒めながら撮ることもあるのでしょうか。

 

相澤:何気ない日常会話が多いですね。「いいね〜」と言わないことの方が多いかもしれません(笑)。

(後編に続く)

相澤 義和(あいざわ・よしかず)

1971年、東京都東久留米市生まれ。1996年、四谷スタジオ(現・スタジオD21)入社。2000年に相澤義和写真事務所を設立し、フリーランスとして独立。2019年に初写真集『愛情観察』を発行。2020年4月に、2作目となる写真集『愛の輪郭』が発表された。

■Twitter:@aizawa_yos

■Instagram:@aizawa_yosikazu @aizawa_7

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